【総務省推薦】自治体でのDX参考事例20選|取組内容~成果まで
総務省は自治体によるDXの取り組みの中でも参考になる事例を一般に公開しています。いずれの取り組みも、デジタル技術を活用することで、業務効率化や住民の生活の利便性向上など、一定の成果を上げています。
本記事では、総務省が紹介する自治体の取り組みの中でも、特に参考になる事例を全部で20個、DXの進め方とともにわかりやすく解説していきます。
またDX総研では、DXを検討・推進する上で必ず押さえておきたい、DX成功事例50選の取り組みや成果をまとめたレポートを無料で配布しています。ご興味のある方は、以下リンクからダウンロードしてご活用ください。
目次
- 自治体におけるDXとは?
- 【全20選】自治体におけるDX取組事例集
- <体制整備>
- <人材確保・育成>
- <内部DX>
- ⑬【岡山県鏡野町】マイナンバーカードを利用した鏡野町電子申請・届出システム
- ⑭【兵庫県姫路市】電子マネーにより市税や保険料等が24時間納付可能に
- ⑮【鹿児島県奄美市】電子契約システムの導入による印紙代、郵送費、人件費の削減
- ⑯【東京都豊島区】オンライン相談ツールの活用による「行かなくて済む区役所」の取組
- ⑰【北海道北見市】「書かない窓口」の導入で行政手続きの時短に成功
- ⑱【熊本県熊本市】 専用タブレットと届出ナビシステムによる住民異動手続の効率化
- ⑲【東京都三鷹市】「キャッシュレス決済」と「セミセルフレジ」を導入し、証明書発行業務を効率化
- ⑳【熊本県阿蘇市】教育課の全16施設でスマートロックを導入し鍵管理の負担軽減・利便性向上
- 自治体におけるDXを推進する6つのステップ
- 自治体におけるDX推進を成功させる5つのポイント
自治体におけるDXとは?
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用し、業務やサービス、ビジネスモデルを変革し、企業や組織の競争優位性を高める取り組みのことです。
自治体におけるDXとは、自治体がデジタル技術を活用することで、業務プロセスの効率化や改革を実現し、住民の利便性向上や行政サービスの質の向上を目指す取り組みのことを指します。
総務省は、自治体におけるDXの目的・意義として、「自らが担う行政サービスについて、デジタル技術やデータを活用して、住民の利便性を向上させる」ことと、「デジタル技術やAI等の活用により業務効率化を図り、人的資源を行政サービスの更なる向上に繋げていく」ことを挙げています。
このように、自治体という文脈の中で語られるDXは、単なる一組織の業務改革にとどまらず、デジタル社会の実現に向けた全国的な取り組みとして位置付けられています。
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【全20選】自治体におけるDX取組事例集
総務省が参考事例として紹介している自治体におけるDXの取り組み事例として、以下の20事例が挙げられます。
<体制整備>
- ①【山口県】 「山口県デジタル・ガバメント構築連携会議」を設置し、デジタル化を推進
- ②【福島県】市町村にICT専門家を派遣し、DXに関するアドバイスを提供
- ③【福井県あわら市】「本人手上げ式」でDX推進員を広く募集・任命
- ④【宮城県都城市】 市長をCDO、外部デジタル人材をDXアドバイザー等としたDX推進体制を構築
- ⑤【兵庫県神戸市】部局横断メンバーによる「働き方改革推進チーム」を構築
- ⑥【大分県】知事のもとデザイン思考に基づくDXを全庁横断的に推進
<人材確保・育成>
- ⑦【広島県】DXを推進する県・市町が参画する「DXShipひろしま」を構築
- ⑧【大阪府】DX推進アドバイザー制度に加えデジタル人材シェアリング事業を実施
- ⑨【東京都中野区】民間人材サービス事業者を活用したデジタル人材の公募・採用
- ⑩【栃木県真岡市】DX推進員等に加え変革プロジェクトやDX人材認定制度の創設
- ⑪【滋賀県】デジタル技術を主体的に活用できるDX推進チャレンジャーを育成
- ⑫【愛知県】デジタル人材像を5つに整理、市町村職員と受講するDX特別研修等を実施
<内部DX>
- ⑬【岡山県鏡野町】マイナンバーカードを利用した鏡野町電子申請・届出システム
- ⑭【兵庫県姫路市】電子マネーにより市税や保険料等が24時間納付可能に
- ⑮【鹿児島県奄美市】電子契約システムの導入による印紙代、郵送費、人件費の削減
- ⑯【東京都豊島区】オンライン相談ツールの活用による「行かなくて済む区役所」の取組
- ⑰【北海道北見市】「書かない窓口」の導入で行政手続きの時短に成功
- ⑱【熊本県熊本市】 専用タブレットと届出ナビシステムによる住民異動手続の効率化
- ⑲【東京都三鷹市】「キャッシュレス決済」と「セミセルフレジ」を導入し、証明書発行業務を効率化
- ⑳【熊本県阿蘇市】教育課の全16施設でスマートロックを導入し鍵管理の負担軽減・利便性向上
それぞれの取り組みについて、わかりやすく解説していきます。
※自治体の取り組みを含む国内のDX成功事例50選の取り組みや成果をまとめた資料をダウンロード頂けます。
<体制整備>
①【山口県】 「山口県デジタル・ガバメント構築連携会議」を設置し、デジタル化を推進

山口県は、県と市町の情報共有や連携を一層強化するための協議体として「山口県デジタル・ガバメント構築連携会議」を立ち上げました。各市町における、情報システムの標準化や、行政手続のオンライン化等の進捗を支援する取り組みの1つとして機能しています。
既に設置されている全庁的なDX推進体制である「山口県デジタル推進本部」と連携調整を行い、県全体でのデジタル・ガバメントの構築を進めています。
また、人材面等で課題を抱えている小規模市町も多く、きめ細かな市町支援が必要であるとの認識から、2022年度から専門的な人材を確保して支援体制を強化しています。
また、令和5年度からは市町専用の相談窓口を設置するとともに、伴走型による実装支援を強化しています。
②【福島県】市町村にICT専門家を派遣し、DXに関するアドバイスを提供

福島県は、ICTアドバイザー市町村派遣事業を行っています。市町村にICT専門家を派遣し、デジタルを活用した助言等を行うことでDXを推進します。
当時同県では、DX計画策定、オンライン化など、市町村にDXで解決すべき課題が山積していました。そこで、市町村へICTアドバイザーを派遣し、デジタルを活用した助言等を行うことでDXを実現しています。
DX推進により効率的な行政運営、住民サービスの向上が実現したり、行政手続のオンライン利用率が向上したりするなど一定の効果が現れています。
また、ICTアドバイザーは協議会に所属する地元ベンターより派遣されるため、市町村との接点にもなっています。
③【福井県あわら市】「本人手上げ式」でDX推進員を広く募集・任命

福井県あらわ市は、DXに関する施策の総合的な推進及び調整を担う「あわら市DX推進本部」を設置し、DX推進員の募集は「職員の挙手制」を採用しています。
DX推進員は、DX推進事業を部局横断的に実施すること、またDXを進める核としての役割を担い、人材育成事業の実施、担当事業内容の検討・協議を行います。
2023年は4月と9月にDX推進員の募集を行い、継続・新規で手を挙げた合計21名の
職員をDX推進員として任命しました。
今後は、DX推進員がデジタルに関連する勉強会の講師となる機会を増やすことで、DX推進員が「変化の起点となる職員」として、市役所全体で「学び続ける組織作り」を目指す予定です。
④【宮城県都城市】 市長をCDO、外部デジタル人材をDXアドバイザー等としたDX推進体制を構築

宮城県都城市は、デジタル総括本部の設置や外部専門人材をDXアドバイザーとして登用し強力なDX推進体制を構築しています。
市長をCDO、部局長級を本部員とするデジタル統括本部、現場課長を委員とするデジタル統括委員会を組織しているほか、総務省地域情報化アドバイザー(総務省が認定したIT専門家)などの外部人材をDXアドバイザー等として有効活用しています。
また、デジタル統括課に土木技師を配置してDXが進みにくい土木・産業分野での取組も促進するなど、全庁体制でDX推進に取り組んでおり、関連予算も大幅に拡充しました。
その結果、2020年から2023年までの4年間で130以上の新規のデジタル関連事業企画立案を実現しています。
⑤【兵庫県神戸市】部局横断メンバーによる「働き方改革推進チーム」を構築

兵庫県神戸市は、人間中心の「ヒューマンで優しいスマートシティ神戸」をビジョンとして掲げ、DXを積極的に取り入れることで、市民サービスと職員の働き方における新しい行政のスタイルと価値の創出を目指しています。
ビジョンの実現に向け、「全庁的な働き方改革の推進」と「ロードマップの目標達成」をミッションとする「働き方改革推進チーム」を部局横断メンバーにより組織。
半期および通期における主要施策の進捗状況を数値で把握し、データに基づく効果測定と課題分析による対応策を講じることで、更なる価値創出を実現します。
⑥【大分県】知事のもとデザイン思考に基づくDXを全庁横断的に推進

大分県は、全庁組織「大分県DX推進本部」を設置し「大分県DX推進戦略」を策定することでDXを推進しています。
大分県DX推進戦略では、①県民をユーザとする「暮らしのDX」、②県内事業者をユーザーとする「産業のDX」、③自治体自身を変革する「行政のDX」、④人材育成やデータ整備等 「DXの推進基盤」の4つを柱としてユーザー目線に立った県民中心のDXを目指しています。
大分県DX推進本部会議でDX推進戦略の決定・全庁へのDX推進の指揮、フォローアップが各部門に向けて実施されることで、各所属がDX推進課や外部アドバイザーのサポートを受けながら、各分野の施策を立案・実施します。
<人材確保・育成>
⑦【広島県】DXを推進する県・市町が参画する「DXShipひろしま」を構築

広島県は、県全体のDXを効果的に進めるため、県・市町で協働してDXを推進し、デジタル⼈材を採⽤・育成・活⽤する枠組みとして、「DXShip(デジシップ)ひろしま」を構築しました。
『DXShipひろしま』では、⼀部市町においては単独でデジタル⼈材を確保・育成することが困難であることから、2021年4⽉に「県・市町情報⼈材研究会」を設置し、市町と共にデジタル⼈材の確保・育成⼿法等の議論を進めてきました。
デジタル人材確保の取り組みとして、2021年度から専⾨職種として情報職を設けるとともに、県・市町で勤務することのやりがいやキャリアパスを明確にするため、2023年2⽉に広島県情報システム⼈材育成プランを策定しました。
また、給与⾯での処遇改善を図るため、2023年度から⼀定の有資格者に対する初任給調整⼿当を設定しています。
⑧【大阪府】DX推進アドバイザー制度に加えデジタル人材シェアリング事業を実施

大阪府は、市町村のDX推進を⽀援するため、府が確保したアドバイザーの市町村への派遣に加えて「⼤阪版デジタル⼈材シェアリング事業」を実施しています。
現⾏の市町村DX推進アドバイザー制度では、⾸⻑レクへの同席、原課調整への同席、ベンダー協議への同席、1団体に対する研修などの各⾃治体に⼊り込んだ⽀援は不⼗分でした。
これを受け、希望のあった13団体と様々な専門分野の外部デジタル人材を、市町村が共同で確保する「⼤阪版デジタル⼈材シェアリング事業」を開始しています。
⑨【東京都中野区】民間人材サービス事業者を活用したデジタル人材の公募・採用

東京都中野区は、新庁舎整備やシステムの標準化・共通化の⼤規模プロジェクトに対応できる⺠間⼈材サービス事業者を採用しています。
⼈事部⾨と調整し、⺠間⼈材サービス事業者への委託費等を予算化した上で、きめ細やかな対応が可能な⺠間⼈材サービス事業者を選定し、DX推進マネージャー(係⻑級)・DX推進担当(主任)、IT専⾨⽀援員を計5名採⽤しています。
一つの会社から150名も応募してくるケースもあるなど、専⾨的な知識と⾏政の考え⽅にとらわれない柔軟な発想を持つ人材の確保に成功しています。
⑩【栃木県真岡市】DX推進員等に加え変革プロジェクトやDX人材認定制度の創設

栃木県真岡市は、庁内全課で係⻑級から専任した「DX推進員」等により全庁的な意識改⾰を実施しています。
また、DX推進員と並行して希望者による「⾃主的な業務改善組織への変⾰プロジェクト」の実施を行っています。
希望者によるBPR⼿法(業務改革)の勉強会や、実際の業務改⾰案を企画するワークショップを実施。プロジェクトに参加してBPRに取り組んだ職員を、DX⼈材に認定しています。
ワークショップでは、以下3チームに分かれ、それぞれの改⾰案を市⻑以下全職員にプレゼンします。
- 内部事務変⾰チーム:決算資料作成の業務フローの描き直しとマクロを活⽤した監査資料作成の効率化 等
- 外部連携チーム :⼯事事業者とのやり取りに情報共有システムを導⼊した書類の処理状況の可視化 等
- 窓⼝改善チーム :書かない窓⼝やRPAに固執せず、結果通知の早期化など業務フローの描きなおし 等
今後は、プロジェクトメンバー数を増やすとともに、UXデザイン等を取り⼊れ、市⺠ニーズに沿ったサービスが提案できることを⽬指しています。
⑪【滋賀県】デジタル技術を主体的に活用できるDX推進チャレンジャーを育成

滋賀県は、担当職員が業務効率化や⾏政サービス向上の取組を⾃律的に推進できる体制づくりに向けて、デジタル技術を主体的に活⽤できる職員「DX推進チャレンジャー」を育成しています。
令和4〜6年度までの3年間で、⼀般⾏政部⾨等の職員の10%〜15%にあたる450⼈のDX推進チャレンジャーをExcelVBA、RPA、ローコードツール 等の研修を通して育成します。
人材育成を通じて、庁内のDXを強⼒に推進し、今後は研修計画の検討や、デジタルツールが活⽤できる環境整備を進めて⾏く予定です。
⑫【愛知県】デジタル人材像を5つに整理、市町村職員と受講するDX特別研修等を実施

愛媛県は、各所属においてDXを推進できる体制を整備するため5つのデジタル⼈材を設定し、各⼈材に求められるスキルをスキルマップで整理して各スキル習得に向けた研修を実施しています。
5つのデジタル人材は以下の通りです。
- DX推進マネジャー:DX推進の責任者としてリーダーシップを発揮し、人材を指名及び育成
- DX推進リーダー:プロジェクトをマネジメントし、内製化を含めたICTの効果的な活用を図る
- DX推進デザイナー:ICTを活⽤した業務・サービスの企画⽴案及びサービスの向上のための改善策の⽴案を⾏う
- デジタル導入担当者:企画の具現化に向けてICTの導⼊など実装を⾏う
- デジタルアドバイザー: ICTの庁内のアドバイザーとして各所属のICTの導⼊をサポートする
研修では、⾃席または在宅勤務時の⾃宅等で受講可能な動画研修を中⼼に、2022年度は30プログラムの研修を⽤意するなど研修内容の充実や、より受講しやすい環境の整備を⾏っています。
<内部DX>
⑬【岡山県鏡野町】マイナンバーカードを利用した鏡野町電子申請・届出システム

岡山県鏡野町は、スマートフォンを利⽤し、各種証明書の郵送請求、ごみやリサイクルに関する申請、補助⾦等の交付申請が可能な「鏡野町電⼦申請・届出システム」を導入しています。
利用者はスマートフォンとマイナンバーカードのみで交付申請がオンラインで可能です。証明書等の郵送請求にかかる手数料の支払いはクレジット決済に対応しています。
導入後、システム等の利⽤は徐々に増え、窓⼝利⽤は減っており、成果が徐々に上がっています。
今後は、鏡野町電⼦申請・届出システムの「補助⾦申請」で受取⼝座を毎回登録する必要があるため、国の公⾦受取⼝座登録制度で登録した⼝座を利⽤できるように検討しています。
また、マイナンバーカードの保有者に対し、マイナンバーカードと同等の署名⽤及び利⽤者証明⽤の電⼦証明書を持った、スマホアプリのダウンロードサービスが開始されるため、このシステムでも利⽤できるように検討を進めています。
⑭【兵庫県姫路市】電子マネーにより市税や保険料等が24時間納付可能に

兵庫県姫路市は、市税や保険料等の納付にキャッシュレス決済を導⼊することで、24時間納付できる体制を実現しました。
クレジットカード、電子コード、QRコードなど25種類の幅広い決済方法に対応しています。
また、取消しや払戻しができないキャッシュレスサービスは、取扱いできないようにするなど、不測の事態が起きないように独⾃の⽅法で運⽤しています。
⑮【鹿児島県奄美市】電子契約システムの導入による印紙代、郵送費、人件費の削減

鹿児島奄美市では、地⽅⾃治法施⾏規則の改正で「⽴会⼈型の電⼦契約サービス」が利⽤可能となったことを契機に電子契約システムを導⼊しました。
電⼦契約システムの導⼊後、全体の約50%が電⼦契約に置き換わり、受発注者合計で約250万円の印紙代・郵送費の削減を実現するなど大きな効果が出ています。
さらに、印刷・製本・印紙貼付・押印・郵送・回収・ファイリング等の受・発注者双⽅の⼈件費の削減にも寄与しています。
スムーズな導入に向けて、担当職員向けの『電⼦契約版契約事務のながれ』を作成し、これに伴う説明会を実施しました。「電⼦契約システムへ⽂書アップ→電⼦署名(奄美市側)→相⼿⽅への電⼦署名⽅法のレクチャー」までを⼀括して契約・検査指導課で実施し、各課の契約担当職員の事務負担を最⼩限に抑えています。
⑯【東京都豊島区】オンライン相談ツールの活用による「行かなくて済む区役所」の取組

東京都豊島区は、コロナ禍で、対⾯の区⺠相談を休⽌したことを機に、⾮来庁・⾮対⾯で簡単にオンライン相談ができる「ビデオ通話システム」を導⼊し区⺠相談を開始しました。
ひきこもり⽀援等では、いままで相談窓⼝に来られなかった⽅への⽀援へつなげられるよう、気軽にオンライン相談できる環境を引き続き提供しています。
今後は、オンライン相談できる事業をさらに拡大する予定です。
⑰【北海道北見市】「書かない窓口」の導入で行政手続きの時短に成功

北海道北見市は、デジタルツールを活用した「書かない窓口」の導入で、行政手続きの時短に成功しています。
同市は、北見市が独自に開発した「窓口支援システム」で各種手続きの情報を整理し、1つの窓口で手続きを完結できる書かないワンストップ窓口を実現しています。入力したデータの処理には、定型的な作業を自動処理するRPA が活用され、入力と同時に自動で即時処理が可能です。
この取り組みにより、2021年度での庁内全体の業務削減時間は、年間約 3,375 分短縮と、手続きの大幅な時間短縮に成功しています。
⑱【熊本県熊本市】 専用タブレットと届出ナビシステムによる住民異動手続の効率化

熊本県熊本市は、引っ越しに伴う住⺠異動⼿続きの負担軽減と、待ち時間短縮を⽬的として、専⽤タブレットで届出書を作成する「届出ナビシステム」を、5区役所区⺠課に設置しています。
届出ナビシステムにマイナンバーカードを読み込ませることで、⽒名等の情報の⼊⼒を⼀部省略が可能です。
今後、多言語対応や引越しソフトウェアと届出ナビシステムの連携の検討などを進めていく予定です。
⑲【東京都三鷹市】「キャッシュレス決済」と「セミセルフレジ」を導入し、証明書発行業務を効率化

東京都三鷹市は、窓⼝混雑情報のWeb公開や窓⼝の増設、マイナンバーカード交付予約システムを導⼊しています。また、最後の⼿数料などの現⾦授受の課題を解決するためキャッシュレス決済とセミセルフレジを導⼊しています。
完全にキャッシュレスにする訳ではなく、現金利用可能なセミセルフレジの利用も可能にすることで、幅広い利用者に合わせた選択肢を確保しています。
キャッシュレス決済については、約20%前後の使⽤率となっており、今後は40%まで引き上げることを目標としています。
⑳【熊本県阿蘇市】教育課の全16施設でスマートロックを導入し鍵管理の負担軽減・利便性向上

阿蘇市は、スマートロックを導入することで、鍵管理を受託している近隣住⺠が鍵の受渡しのために在宅する必要を解消し、利⽤者の利便性も向上させています。
これまでは、管理⼈を配置していない施設は、近隣住⺠に鍵の管理を委託しており、鍵の受け渡しに家族の誰かが在宅する必要がありました。
スマートロックでは、曽役所で予約申請と支払いを済ませた後、予約者にメールで暗証番号を送付します。その後利用時に暗証番号で解錠するだけで施設の利用ができるため、管理者・利用者双方の負担軽減・利便性向上を実現しています。
自治体におけるDXを推進する6つのステップ

自治体におけるDXの進め方は大きく6つのステップに分けられます。
それぞれのステップについてわかりやすく解説していきます。
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ステップ1:DXの目的・ビジョンを明確化する

DX推進の最初のステップとして、DXの目的・ビジョンを明確化しましょう。
「DX推進後の理想の自治体の姿」を明確に設定することで、その後の取り組み内容や優先度、進め方などを決定する軸とすることができ、ブレることなくプロジェクトを推進できます。
本ステップの検討には経済産業省の「DXレポート2.1」のフレームワークが役に立ちます。
自治体の業務、住民へのサービス、業務プロセスのそれぞれが、どの程度までデジタル化された状態を理想とするかを、他の自治体の状況等も踏まえ、検討しましょう。
例えば、業務のデジタル化すら進んでいない自治体であれば、3年後までにまずは業務のデジタライゼーションを目指す。一方で、業務のデジタル化が進んでいる自治体であれば、3年後までにサービスのデジタルトランスフォーメーションを目指す。といったビジョンの設定が考えられます。
ステップ2:組織の現状と課題を把握する

続いて、現状どの程度DXを推進できているのか、ビジョンの実現に向け何が課題なのかを把握しましょう。
本ステップの検討には、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「DX推進指標」を活用することで、組織文化、推進体制、人材育成など、多角的な観点から評価を行うことができます。
それぞれの観点における自治体の成熟度のレベルを把握することで、特にDX推進が遅れているポイントを明確にすることができ、その後の戦略や計画の策定に活かすことが可能です。
ステップ3:DXに関する戦略と計画を策定する

前ステップで策定したビジョンと自治体の現状・課題に基づき、DXに関する戦略・計画を策定しましょう。
検討すべき項目は上記画像のように多岐に渡りますが、特に重要なのは、「戦略=デジタル化の優先度付け」です。
デジタル化の対象や取り組み内容の候補は極めて幅広いため、バラバラと取り組みを進めてしまうことでリソースが分散し、思うような成果が上がらないというケースは少なくありません。
そのため、取り組みの候補を幅出し・整理した上で、DXを推進しやすくインパクトも期待できる取り組みから着手し、その後難易度が高くよりインパクトの期待できる取り組みにシフトしていくといった進め方が有効となります。
例えば、補助金申請のやりとりに関する膨大な作業の効率化を重点課題とした自治体であれば、まずは資料のペーパーレス化や判子の電子印化を進めた上で、その後一連の申請プロセス全体をデジタル活用により自動化するといった進め方が考えられます。
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ステップ4:DX推進チームを構築する

DXを推進するには、ビジョンや戦略を職員に周知し、現場からの課題を吸い上げながら、各部門と連携・調整し、実行支援も行う、DX推進専門のチームが必要になります。
そのため、DX推進チームのメンバーには特に、デジタルへの知見、コミュニケーション能力、業務の知見などのスキルが求められます。
また、DX人材の具体的な職種の例は以下の通りです。
- プロジェクトマネージャー:DXやデジタルビジネス構築を主導するリーダー
- テックリード:システム設計や要件定義を担当し、開発を主導
- UI/UXデザイナー:DXやデジタルビジネスのユーザー向けのデザインを担当
- エンジニア:デジタルシステムの実装・インフラ構築を担当
- データサイエンティスト:事業・業務に精通しデータの収集・分析を担当
これらのDX人材の確保には、外部ベンダー等の人材を活用する方法と、職員に対するDX人材育成を実施する方法があります。
DX推進のスケジュールや、職員のDXスキルの有無、既存業務を含めたリソースの有無などを考慮し、自社に最適な方法を選択しましょう。
ステップ5:デジタル化により業務効率を向上させる
これまでに策定したビジョン・戦略・計画に基づき、実際に業務効率化に向けたデジタル化を推進していきましょう。
ここで、いきなり全組織単位や部門横断の大規模なDXに着手してしまうと、デジタル化の難易度が高く、成果が出るまで長期間を要し、コストも膨大になってしまいます。
そこで、デジタイゼーション(書類で管理していたデータをクラウド上で一元管理する等)やデジタライゼーション(RPAの導入によりデスクワークの一部を自動化する等)など着実に成果の上がる取り組みを、特定の課や部門単位から進めるのがおすすめです。
前のステップまでは比較的トップダウン的な取り組みですが、本ステップからはいかに現場の各職員と深く対話し、小さな成功を積み重ねるというボトムアップ的な取り組みが重要です。
これにより、多くの人材から共感と信頼を勝ち取り、DX推進に巻き込んでいくことで、より大規模なDXの推進が可能になります。
ステップ6:PDCAを回し、新たな価値の創出まで繋げる

業務のデジタル化を進めることで、自治体は今まで見えていなかった業務や顧客に関する様々なデータを収集・蓄積・可視化できるようになります。
これらのデータを分析し、新たな業務の課題や大幅な効率化等の余地を発見し、取り組みを改善するというPDCAサイクルを、数ヶ月単位で何度も回すことで、大きな成果を上げることが可能です。
さらに、PDCAサイクルを回し続けることで、独自の詳細な住民データやより効率的なオペレーション、先端技術活用のノウハウなどの強みが蓄積されていきます。この強み蓄積こそが、斬新な住民サービス創出の源泉となります。
自治体におけるDX推進を成功させる5つのポイント

自治体におけるDXを成功させるためのポイントとして、以下の5つが挙げられます。
- ①リーダーのコミットメントにより組織全体を巻き込む
- ②自治体ならではのDX戦略を策定する
- ③十分なDX人材を確保する
- ④スモールスタートクイックウィンを実現する
- ⑤ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する
それぞれのポイントについて分かりやすく紹介していきます。
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①リーダーのコミットメントにより組織全体を巻き込む
DXは、個別業務のデジタル化だけでなく、全組織規模の業務やサービス、組織文化の変革など、自治体のコアとなる部分を大きく変えていく取り組みです。
そのため、トップ層や各部署のリーダーが起点となり、DXのビジョン・方針を明確に示し、組織全体を強力に動かしていく必要があります。
具体的には、「どのような中長期的なDXのビジョンを描くのか」、「業務や住民体験、自治体サービスをどのように変えていくのか」、そのために「どの程度人材や予算を割り当てていくのか」などに対して、大きな権限を持って意思決定をしていくことが求められます。
一方で、リーダー陣がDXに対する危機意識が低い場合などは、DX推進部門や経営企画部門などが主導し、リーダー陣を含め、DXに関する職員向けの勉強会/ワークショップを実施することも有効です。
②自治体ならではのDX戦略を策定する

あらゆる人・モノ・コトがインターネットと繋がる現代で、人々の生活や業務、ビジネスの主戦場は、リアルの世界からデジタルの世界に加速度的にシフトし続けています。
その変化を踏まえ、いかにデジタルを活用し競争優位性を築いていくかは、全ての組織のイ運営戦略を考える上で必須のテーマとなっており、DX戦略を考えること=組織全体の運営戦略を考えること、と言っても過言ではありません。
そのため、DX戦略を策定する際は、特定の事業部/部門×個別の業務×デジタル化という範囲で考えたり、他の自治体が進めている取り組みをベースにして考えるといった、個別具体的なアプローチではなく、より中長期や全体のアプローチから、組織全体のビジョンや運営戦略、テクノロジートレンドや業界への影響などと連動させて考える必要があります。
③十分なDX人材を確保する
DXの成功に向けては、テクノロジーと戦略に対して深い知見を持つプロジェクトマネージャーや、専門的なスキルを有するエンジニア、デザイナーなどのDX人材を十分に確保することが必須となります。
本来であれば、既にDX人材が組織内にいればよいのですが、ほとんどの自治体で人材が不足しているという現状があります。
また、市場全体として人手不足で、DX人材の争奪戦となっており、採用も思うようには進められないというケースも多く見られます。
そのため、足元のDX推進にむけては、運営課題とデジタルの両方に精通した外部のエキスパートを活用しながら、中長期目線では実践や研修を通じた人材育成をしていくといったアプローチが有効です。
※DX総研では経験豊富なコンサルタントによる、DXに関する個別無料相談会を実施しております。DX人材の確保や自社に合った推進方法などでお困りの方は、お気軽にご相談ください。
④スモールスタートクイックウィンを実現する

DXがなかなか進まない理由として、業務や組織を大胆に変えていくことが必要な一方で、全社規模の大きな成果が上がるまでには5年程度を有するという点があります。
そのため、取り組みの方向性が正しくても、短期間では成果が見えにくいことから、部門間の軋轢や現場からの反発が生まれ、変革のスピードが落ちてしまうケースが少なくありません。
そこで、組織単位でのインパクトは小さくとも、比較的短期で成果が出る取り組みを進め、その成果を組織内外に発信し巻き込んでいくことは非常に有効です。
取り組みの例としては、アナログデータのデジタル化や各種データの一元管理化、業務自動化ツールの導入などが挙げられます。
これらの取り組みにより小さな成功を積み重ね、他部門のリーダー陣や現場の職員のマインドが徐々に変わっていくことで、連鎖的に大規模なDXを推進しやすい状況を実現できます。
⑤ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する

業務の現状や課題を踏まえて設定したゴールに向けて、最適かつ低コストなアプローチ設計をすることは、DXの投資対効果を飛躍的に高めます。
そもそものDXの目的は、業務を効率化することや住民により良いサービスを届けることです。
一方で、「DXプロジェクトをやるぞ!」となると、本来目的であるはずのデジタル化自体が目的になってしまい、他の自治体が取り組んでいるからといった理由で、自分たちにマッチしない大掛かりなデジタル化をすすめてしまうケースが少なくありません。
もし大規模なシステム開発をせずに効率化を実現できるのならそれがベストであり、そもそも業務は必要か、効率化のインパクトは大きいか、SaaSの導入で解決できないか、アジャイルな進め方で小規模なPoCで仮説を検証する余地はないか、などより幅広い視点で検討をするようにしましょう。
DXの実行フェーズになっても、デジタルへの知見はもちろんですが、全組織単位での運営の視点や戦略思考が必要になります。
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