DXで生産性を向上させる5つの方法|成功事例7選や注意点も紹介
DXは、企業が生産性を向上させ、競争力を高めるための強力な手段となります。
ITツールやロボットによる業務の自動化、データ活用による意思決定の迅速化、パーソナライズされた提案によるサービスの質向上など、DXで生産性を向上させる方法には様々なものがあります。
本記事では、DXで生産性を向上させる5つの方法、生産性向上に成功した企業の事例、DXの具体的な進め方などを分かりやすく解説していきます。
またDX総研では、DXを検討・推進する上で必ず押さえておきたい、DX成功事例50選の取り組みや成果をまとめたレポートを無料で配布しています。ご興味のある方は、以下リンクからダウンロードしてご活用ください。
目次
そもそもDXとは?

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して、業務やサービス、ビジネスモデルを変革し、企業の競争優位性を高める取り組みのことです。
単なるデジタル化・IT化ではなく、デジタル活用により、業務やサービス、ビジネスモデルを大きく変革していく取り組みであるという点が大きなポイントです。
経済産業省は、2018年に発表した「DX推進ガイドライン」において、DXを以下のように定義しています。
“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること”
ー出典:経済産業省 デジタルガバナンス・コード2.0
例えば、動画配信大手のNetflixが、宅配型のDVDレンタル事業からサブスクリプション型のオンライン動画配信サービスへとビジネスモデルを変革したのは、DXの代表的な事例といえるでしょう。
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DXと生産性向上との関係

そもそも生産性とは、限られた資源(時間や労力、材料など)を使って、どれだけ多くの成果(製品やサービス、価値)を生み出せるかを示す指標のことです。
生産性が高いほど、少ない資源でより多くの成果を得ることができることを意味します。そのため、生産性を高めるためには、コストを最小限に抑えつつ、成果を最大化することが重要となります。
DXと生産性向上の関係をひとことで言うと、DXは生産性向上のための有効な手段と位置付けられます。業務効率化ツールを導入して業務を自動化し、コストを最小限に抑えたり、デジタル技術により既存の製品に付加価値を与え、顧客の満足度を高めるなどの取り組みが考えられます。
例えば、AIチャットボットにより顧客からの問い合わせ対応を自動化して人件費を削減したり、オンライン販売サイトを立ち上げて売上げを高めたりすることが考えられます。
DXによる生産性向上が注目されている3つの理由

DXによる生産性向上が注目されている理由として、以下の3つが挙げられます。
- ①企業間の競争激化への対応
- ②資源・コストの節約の必要性
- ③労働人口減少への対応
それぞれについてわかりやすく解説していきます。
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①企業間の競争激化への対応
2010年以降、誰もがスマートフォンやPCを通じてインターネットと繋がる時代となり、ビジネスの主戦場はリアルの世界からデジタルの世界にシフトしてきました。
そこで、各業界において、他社に先んじて、デジタルを活用した業務効率化や生産性の向上などを進めてきた企業が、市場シェアを拡大しています。
また、デジタルを活用し急成長を遂げるGAFAのようなテクノロジー企業は、国境や業界を問わず、それまでの勢力図を一変させるような動き(ディスラプション)を見せています。
そのため、ITやサービス業などはもちろん、小売や金融、製造業など比較的、リアルアセットの重要性や人手による仕事の割合が高かった業界でも、他業界や海外の新興企業から一気にシェアを奪われかねないという状況に置かれています。
このような状況に対応していくためには、これまで培った強みを活かしながら、DXを強力に推進し、競争優位性を高めていくことが求められます。
②資源・コストの節約の必要性

近年、新型コロナウィルスやロシアとウクライナの戦争等の影響により、様々な原材料の価格高騰が問題となっています。
例えば、経済産業省が公開した2024年版ものづくり白書によると、事業に影響を及ぼす社会情勢の変化として、原材料価格の高騰やエネルギー価格の高騰を挙げる製造事業者が最も多いという状況です。
そのため、高騰した原材料価格を補うために、デジタル技術を活用して製造工程の効率化や自動化、生産性向上を図り、少しでもコストを減らす必要性が高くなっています。
③労働人口減少への対応

日本は今後少子高齢化が加速していき、それに伴う経済成長の低迷が危惧されています。日本の生産活動を担う労働人口は、2008年をピークに減少に転じており、企業の人手不足は深刻化しています。
また、諸国と比べた現状の労働者一人当たりの生産性も、20位以下で低迷している傾向にあります。
そんななか、経済成長を実現していくためには生産性向上が必要不可欠となり、その実現のためには、デジタルを活用した高付加価値のビジネスの創出や業務効率化などのDX推進が重要となります。
DXで生産性を向上させる5つの方法

DXで生産性を向上させる方法として、以下の5つが挙げられます。
- ①ITツール/ロボットによる業務の自動化・効率化
- ②データ活用による迅速・最適な意思決定の実現
- ③パーソナライズされた提案によるサービスの質向上
- ④リモートワークの導入による柔軟な働き方の促進
- ⑤研修・教育による社員一人一人のITリテラシーの向上
それぞれの方法について分かりやすく解説していきます。
※DX総研では経験豊富なコンサルタントによる、DXに関する個別無料相談会を実施しております。自社に合った推進方法や検討の進め方などでお困りの方は、お気軽にご相談ください。
①ITツール/ロボットによる業務の自動化・効率化

様々なITツールやロボットを導入することで、業務の全部または一部を自動化・効率化し、生産性を高めることができます。
例えば、RPA(Robotic Process Automation)という、ソフトウェアロボットを使用して定型的な業務プロセスを自動化する技術を導入すれば、データ入力や計算などオンラインでの定型的な作業を自動化することができます。
また、ロボットについては、従来は工場で利用されることが多かったですが、現在はあらゆる業界で導入されています。例えば、飲食チェーンのガストは、ロボットに食事の配膳を行わせています。また、アメリカのインテュイティヴ・サージカル社が開発した医療ロボット「ダビンチ」は、内視鏡の手術という複雑な作業を手掛けることができます。
②データ活用による迅速・最適な意思決定の実現
AIやビッグデータなどの最新技術の登場により、いまだかつてないほどの大量のデータを処理・分析し、人間では見つけ出せないようなパターンやトレンドを見つけ出せるようになりました。データを上手に活用することで、生産性を飛躍的に向上させることができます。
例えば、過去の販売数の推移や気象条件などの種々のデータを統合・分析することで各商品の将来の売上げを正確に予測し、在庫量を最適化するなどの取り組みが行われています。
イトーヨーカドーでは、AIが価格・天候情報・過去の客足数などを分析し、最適な販売数を予測することで、発注作業にかかる時間の3割短縮と在庫数の最適化を実現しました。
また、あらゆるモノをインターネットにつなぐIoT(Internet of Things)技術を活用することで、様々なモノからデータを取得できるようになります。例えば、工場の機械設備をインターネットでつなぐことで、稼働状況を遠隔で把握し、故障の予兆を早期に発見したり、より効率的な生産工程に組み替えたりするなどの効果をもたらすことができます。
このように、デジタル技術を用いて大量のデータを収集・分析することで、根拠に基づく最適な意思決定を迅速に行えるようになり、生産性向上に繋がります。
③パーソナライズされた提案によるサービスの質向上

DXにおける重要な取り組みの一つに、AIを導入したデータ活用が挙げられます。これにより、各顧客の過去の購買履歴やサイトの閲覧履歴などのデータを収集・分析することで、顧客ごとにパーソナライズされた最適な商品/コンテンツやサービスの提案・宣伝を行うことができるようになります。
例えば、Netflixなどの動画配信サービスにおいて、ユーザーの過去の視聴履歴に基づき各ユーザーの好みに応じた最適なコンテンツをレコメンドしたり、顧客の身体的特徴に関するデータに基づいて最もよく似合う服を提案したりする取り組みが考えられます。
メガネ販売で有名なJINSは、顧客の顔の形や髪型をもとに、その人に似合うメガネをレコメンドするアプリをリリースしています。
AIによるデータ分析を活用したパーソナライズされた提案は、顧客の満足度を高め、販売数・売上げの増加に繋がり、生産性向上に貢献します。
④リモートワークの導入による柔軟な働き方の促進
ZoomやTeamsなどのWeb会議ツールの導入やインターネット環境の整備により、リモートワークを促進することで、生産性を向上させることができます。
総務省が行った調査によると、リモートワークを導入している企業の方は、そうでない企業に比べて、直近3年間の業績が増加傾向にある割合が高く、特にコストを差し引いた経常利益に大きな差があったことがわかりました。
現に、リモートワークを導入した企業のうち、生産性向上を目的としていた企業は全体の6割、そのうちおよそ8割以上が生産性向上の効果を実際に得られたと回答しています。
例えば、リモートワークにより働きながらの子育てがしやすくなることで、離職率の低下につながります。これにより、離職に伴う新規採用のコストを抑えることができます。
また、会社によっては、完全リモートワーク体制に切り替え、オフィスを縮小したところもあります。これによりオフィスの賃料や光熱費を削減することができ、大幅なコストカットを実現しています。
例えば、住宅設備メーカー大手のLIXILは、テレワークの導入をきっかけに本社オフィスを移転しましたが、新オフィスの床面積は旧オフィスのたった1割と、大幅な削減を断行しました。
※参考:総務省資料
⑤研修・教育による社員一人一人のITリテラシーの向上
DXの取り組みの一環として、ITツールを導入したとしても、現場の社員が使いこなせなければ意味はありません。よくあるDXの失敗例として、ITツールを導入したものの、社員に活用スキルがなく、結局使われないまま終わってしまうという事態があります。
これを防ぐためには、社員向けにデジタル研修や教育、勉強会を実施し、社員一人一人のITリテラシーを向上させることが重要です。
これにより、社員がITツールを使いこなせるようになり、生産性向上の効果を実現することができます。
なお、研修・教育を行えるような人材が社内にいない場合には、外部の専門家を講師に招いたり、DX支援を行う会社が提供する研修/勉強会サービスを利用する方法も有効です。
DX総研では、企業様のご要望に応じて、オーダーメイドのDX研修/勉強会サービスを提供しております。社員向けのDX研修・教育について相談されたい方は、お気軽にお問い合わせください。
DXによる生産性向上の成功事例7選
DXによる生産性向上の成功事例として、以下の7事例が挙げられます。
- ①【三菱UFJ銀行】ChatGPT利用で月22万時間の労働時間削減へ
- ②【LIXIL】接客等のDXを進め業務効率化と顧客体験向上を同時に実現
- ③【日本通運】AI-OCR(光学文字認識)や自動フォークリフトで業務効率化を実現
- ④【旭鉄工】ChatGPTで知見をスムーズに共有し、生産性を向上
- ⑤【SGホールディングス】AI搭載の荷積みロボットやAI-OCRでトラックドライバーの労働負担を軽減
- ⑥【東北大学病院】日本語大規模言語モデルで医療文書の作成時間を47%削減
- ⑦【第一三共】AIやビッグデータを活用して創薬プロセスを刷新
それぞれの事例について分かりやすく解説していきます。
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①【三菱UFJ銀行】ChatGPT利用で月22万時間の労働時間削減へ

三菱UFJ銀行は、AIを活用した様々な取り組みを実施し、DXを推進しています。近年では、対話型生成AI「ChatGPT」を自社専用にカスタマイズして導入し、稟議書などの文書作成業務の自動化・効率化を目指す取り組みが注目されています。
【課題・背景】
- 銀行業務では、稟議書や融資申込書など様々な文書の作成業務が発生し、多くの工数がかかっており、行員の負担となっていた
【具体的な取り組み】
- 4万人の行員を対象にChatGPTの利用を開放。自社独自にカスタマイズし、セキュリティ対策を施した安全な利用環境を構築
- AIを搭載したチャットボットを導入し、顧客からの問い合わせに対応
【得られた成果】
- ChatGPTを稟議書作成や社内文書ドラフトに活用することで、月22万時間以上の労働時間削減効果を試算
- チャットボットにより24時間365日の顧客対応が可能となり、行員の業務負担の軽減と顧客満足度の向上を実現
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②【LIXIL】接客等のDXを進め業務効率化と顧客体験向上を同時に実現

LIXILは、建築材料や住宅設備機器などを製造・販売する日本を代表するメーカーの一つです。同社は、製品設計から接客まであらゆる販売プロセスにAIやIoTなどのデジタル技術を取り入れて、業務効率化と顧客体験(CX)の向上を同時に実現しました。
【課題・背景】
- コロナをきっかけとするECの普及に伴い、オンラインでの顧客接点・販売チャネルの確保の必要性に迫られていた
【具体的な取り組み】
- LIXILの製品を購入したい企業に対して、自宅から接客を受けられるサービス「LIXILオンラインショールーム」の提供
- AIが顧客の希望に寄り添った見積りプランを提示する「かんたんプラン選び」の提供
【得られた成果】
- 忙しい人でも気軽に製品購入に関する相談や見積りの取得が可能となり、累計相談数15万組突破、顧客満足度93%を達成
- 時間を選ばず利用できるサービスとして「日本子育て支援大賞2023」を受賞
③【日本通運】AI-OCR(光学文字認識)や自動フォークリフトで業務効率化を実現

物流業界最大手の日本通運は、AIが手書きの文字などを読み取ってデータ化することができるAI-OCR(光学文字認識)や自動フォークリフトで業務時間や担当者の負担軽減を実現しています。
【課題・背景】
- 慢性的な人手不足や長時間労働が問題となっている物流業界において、従業員の労働時間を削減する施策の遂行が課題となっていた
【具体的な取り組み】
- AIを用いた光学文字認識技術であるAI-OCRを導入し、ドライバーの運転日報やアルバイト勤務日報の入力業務を自動化
- 物流倉庫に自動フォークリフトを導入し、出荷準備作業や荷受け作業を自動化
【解決した課題・成果】
- 毎月平均450件の帳票を手入力で行っていたが、AI-OCRで入力を自動化したことで、年間6万時間弱の事務作業を削減
- 深夜の搬送作業自動化により、1人当たりの残業時間を約1~2時間/日削減。入出庫作業の自動化による安全性の向上
④【旭鉄工】ChatGPTで知見をスムーズに共有し、生産性を向上

旭鉄工は、トヨタなどの主要自動車メーカーと取引を行う、日本の自動車部品メーカーです。「人には付加価値の高い仕事を」をスローガンに、IoTを起点としたDXを行っています。
またノウハウを他社展開するため、2016年9月にi Smart Technologies株式会社を設立し、IoTモニタリングやコンサルティングサービスも提供しています。
【課題・背景】
- IoT活用により改善活動のサイクルが早まったが、改善方法(ノウハウ)そのものは個人が紙やファイルで属人的に保存している状況であった
- そこで、それらをまとめた「横展アイテムリスト(ノウハウ集)」を作成。しかし、事例数が膨大で探し出すのが困難であり、かつ書き方に個人差があるため活用しづらいという新たな課題が生まれた
【具体的な取り組み】
- ChatGPTに「横展アイテムリスト」の内容を読み込ませ、ChatGPTに日本語で質問するだけで、最適な改善事例を回答できるように
- 例えば「マシニングのサイクルタイムの事例は?」と質問すると、「設備」「狙い」「内容」「注意点」などを箇条書きで整理して回答してくれる
【得られた成果・今後の展望】
- このシステムを本格導入することにより、社内の知見が現場の隅々にまで共有され、より生産性高くカイゼン活動を行うことが可能に
- 今後は同システムを、カイゼンGAIとして外部に提供するソリューションにも組み込んでいく方針
⑤【SGホールディングス】AI搭載の荷積みロボットやAI-OCRでトラックドライバーの労働負担を軽減

佐川急便を中核とした総合物流企業グループであるSGホールディングスは、AI搭載の荷積みロボットやAI-OCRを活用し、業務効率化を実現しています。
【課題・背景】
- 物流業界では労働人口減少による労働力不足や、2030 年の輸送力不足を背景に、トラックドライバーの労働負担の軽減など労働環境の改善が求められていた
【具体的な取り組み】
- トラックの庫内に最適な荷積み作業ができる「AI搭載の荷積みロボット」を開発
- AI-OCRの機能を発展させ、給与支払報告書、コロナワクチン予診票、レセプト帳票などといった独自の帳票の読み取りも可能なソリューションを活用
【解決した課題・成果】
- トラックドライバーや積み込み作業者の業務負担軽減や荷役作業の省人化を実現
- 紙帳票のデータ化業務における人手不足やコスト増加に課題を抱える顧客に貢献できるサービスを提供
⑥【東北大学病院】日本語大規模言語モデルで医療文書の作成時間を47%削減

東北大学病院は、生成AIにおける日本語大規模言語モデル(Large Language Model、LLM)を活用し、電子カルテなどの情報をもとに医療文書を自動作成する実証実験を行いました。
【課題・背景】
- 生成AIを医療文書作成に活用して業務を効率化することで、医師の働き方改革を推進することを目指していた
【具体的な取り組み】
- NECが開発した医療テキスト分析用のAIモデルで、電子カルテに記録された患者の症状、検査結果、経過、処方などの情報を時系列に整理
- NECのLLMを用いて治療経過の要約文を自動生成
【得られた成果】
- 医療文書の作成時間を平均47%削減
- 医師の記録・報告書作成にかかる業務負担を減らし、時間外労働を軽減
- 文章の表現や正確性において医師から高い評価を受ける
⑦【第一三共】AIやビッグデータを活用して創薬プロセスを刷新

第一三共は、ビッグデータやAIなどの技術を組み合わせて活用することで創薬を革新させています。同社は多様なデータや先進技術を活用し一人ひとりに寄り添った最適な健康・医療サービスを提供する ”HaaS(Healthcare as aService)”の実現を目指してDXに取り組んでいます。
【課題・背景】
- 2万分の1以下の成功確率といわれる新薬開発において、良質な薬をいち早く患者に届けるために、AIやビッグデータを活用して創薬に革新をもたらす必要性に迫られていた
【具体的な取り組み】
- 約60億種類もの化合物群の中から、病気に効果のある最適な化合物を見つけるためのAIスクリーニングを実施
- バイオ医薬品の生産工程にAIや機械学習技術を応用
【得られた成果】
- AIとビッグデータにより、約2か月という短期間で大量の良質な新薬候補化合物の創出に成功
- AIや機械学習技術の応用により、バイオ医薬品の生産工程の効率と安定性の向上を実現
DXによる生産性向上を妨げる5つの課題

DXによる生産性向上に取り組む企業が直面し得る課題として、以下の5つが挙げられます。
- ①初期投資やランニングコストがかかる
- ②デジタル人材の確保が難しい
- ③すぐには成果が出ない場合もある
- ④社内の関係部署と協力・連携しなければならない
- ⑤既存システムからの移行が難しい
それぞれについて分かりやすく解説していきます。
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①初期投資やランニングコストがかかる

DXの推進にはツールの導入や新たなシステム開発などが必要となり、数百万円〜数千万円の費用が必要になることも少なくありません。
また、DXは、従来の個別改善型のデジタル化と比べ、業務プロセスやビジネス全体の大規模な変革に取り組むことになるため、比較的高額な初期費用が必要になります。
一方で、数年スパンで見ると大きな成果が期待できるため、中長期でのコスト削減や売上向上の効果を試算した上で、適切な範囲内で予算を確保し投資を行うことが重要です。
②すぐには成果が出ない場合もある
業務プロセスの根本的な変革/効率化や新規事業の創出など、DXで大きな成果を上げるには、3〜5年ほどの期間が必要となるのが一般的です。
一方で、DX推進を始めてもすぐには期待する成果が上がらず、プロジェクトを打ち切りにしてしまうという企業も少なくありません。
そのため、「DXで大きな成果を上げるには中長期で取り組む必要がある」という認識を社内ですりあわせることや、最終ゴールに向けたマイルストーンを引き、初期フェーズでも進捗の評価を正しく行えるようにすること、比較的早期に成果の出やすい小規模なプロジェクトを走らせることなどが有効です。
③DX人材の確保が難しい

全社的なDXを推進する場合、最新のテクノロジーを使いこなせるエンジニアはもちろん、ビジネス戦略とデジタル活用の両方に知見をもつリーダーが各部門に必要となります。
経済産業省の調査によると、国内のIT人材の需要は拡大し続けるのに対し、供給は2019年をピークに減少しており、2030年にかけて40〜80万人規模で不足すると予想されています。このように、DX人材は新卒・中途問わず争奪戦が続いており、希望通りに採用が進むことは稀という状況です。
そのため、短期的には、外部ベンダーの起用などで体制を強化しつつも、中長期的には人材育成や採用の仕組みを強化していく必要があります。
④社内の関係部署の協力・連携が必要になる
DXの推進には、部門を横断する業務プロセスやシステムの見直し、加えて組織やビジネスモデルの再構築などが必要となります。
それらの取り組みを進める際には、社内の幅広い関係部署間の協力・連携が必要不可欠です。一方で、各部署や現場のメンバーは、目の前の通常業務を抱えているため、プロジェクトが円滑に進まないというケースが多く存在します。
そのため、全社としてのDXの必要性やビジョンを周知し、現場の声も吸い上げた上で、協力を得ながらDXを推進することが求められます。
⑤既存システムからの移行が難しい
既存システムから新たなシステムへの移行は、システムの移行そのものに加え、データのフォーマット変換や新たな業務プロセスの設計、利用する社員への研修など、様々な取り組みが必要となります。
特に、複雑化・ブラックボックス化が進みレガシー化してしまったシステムからの移行に取り組む場合、その技術的・工数的なハードルはかなり高く、現場が難色を示すということは少なくありません。
一方で、移行の難易度が高くなっていることは、そのシステムを利用し続けるための運用コストやリスクが大きくなっていることを意味する場合が多いため、移行に取り組む意義はより大きいと言えます。
DXによる生産性向上を成功させる5つのポイント

DXによる生産性向上を成功させるためのポイントとして、以下の5つが挙げられます。
- ①リーダーのコミットメントにより社内を巻き込む
- ②自社ならではのDX戦略を策定する
- ③十分なDX人材を確保する
- ④スモールスタートクイックウィンを実現する
- ⑤ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する
それぞれのポイントについて分かりやすく紹介していきます。
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①リーダーのコミットメントにより社内を巻き込む
DXは、個別業務のデジタル化だけでなく、全社規模の業務やビジネスモデル、組織文化の変革など、会社のコアとなる部分を大きく変えていく取り組みです。
そのため、経営陣や事業部のリーダーが起点となり、DXのビジョン・方針を明確に示し、社内全体を強力に動かしていく必要があります。
具体的には、「どのような中長期的なDXのビジョンを描くのか」、「業務や顧客体験、ビジネスモデルをどのように変えていくのか」、そのために「どの程度人材や予算を割り当てていくのか」などに対して、大きな権限を持って意思決定をしていくことが求められます。
一方で、経営陣やリーダー陣がDXに対する危機意識が低い場合などは、DX推進部門や経営企画部門などが主導し、リーダー陣を含め、DXに関する社内向けの勉強会/ワークショップを実施することも有効です。
②自社ならではのDX戦略を策定する

あらゆる人・モノ・コトがインターネットと繋がる現代で、人々の生活や業務、ビジネスの主戦場は、リアルの世界からデジタルの世界に加速度的にシフトし続けています。
その変化を踏まえ、いかにデジタルを活用し競争優位性を築いていくかは、全ての企業の経営戦略を考える上で必須のテーマとなっており、DX戦略を考えること=経営戦略を考えること、と言っても過言ではありません。
そのため、DX戦略を策定する際は、特定の事業部/部門×個別の業務×デジタル化という範囲で考えたり、同業他社が進めている取り組みをベースにして考えるといった、個別具体的なアプローチではなく、より中長期や全体のアプローチから、全社のビジョンや経営戦略、テクノロジートレンドや業界への影響などと連動させて考える必要があります。
③十分なDX人材を確保する
DXの成功に向けては、テクノロジーと経営戦略に対して深い知見を持つプロジェクトマネージャーや、専門的なスキルを有するエンジニア、デザイナーなどのDX人材を十分に確保することが必須となります。
本来であれば、既にDX人材が社内にいればよいのですが、ほとんどの日本企業で人材が不足しているという現状があります。
また、市場全体として人手不足で、DX人材の争奪戦となっており、採用も思うようには進められないというケースも多く見られます。
そのため、足元のDX推進にむけては、経営課題とデジタルの両方に精通した外部のエキスパートを活用しながら、中長期目線では実践や研修を通じた人材育成をしていくといったアプローチが有効です。
④スモールスタートクイックウィンを実現する

DXがなかなか進まない理由として、業務や組織を大胆に変えていくことが必要な一方で、全社規模の大きな成果が上がるまでには5年程度を有するという点があります。
そのため、取り組みの方向性が正しくても、短期間では成果が見えにくいことから、部門間の軋轢や現場からの反発が生まれ、変革のスピードが落ちてしまうケースが少なくありません。
そこで、全社単位でのインパクトは小さくとも、比較的短期で成果が出る取り組みを進め、その成果を社内外に発信し巻き込んでいくことは非常に有効です。
取り組みの例としては、アナログデータのデジタル化や各種データの一元管理化、業務自動化ツールの導入などが挙げられます。
これらの取り組みにより小さな成功を積み重ね、他部門のリーダー陣や現場の社員のマインドが徐々に変わっていくことで、連鎖的に大規模なDXを推進しやすい状況を実現できます。
⑤ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する

業務の現状や課題を踏まえて設定したゴールに向けて、最適かつ低コストなアプローチ設計をすることは、DXの投資対効果を飛躍的に高めます。
そもそものDXの目的は、業務を効率化することや顧客により良い製品/サービスを届けることです。
一方で、「DXプロジェクトをやるぞ!」となると、本来目的であるはずのデジタル化自体が目的になってしまい、競合が取り組んでいるからといった理由で、自社にマッチしない大掛かりなデジタル化をすすめてしまうケースが少なくありません。
もし大規模なシステム開発をせずに効率化を実現できるのならそれがベストであり、そもそも業務は必要か、効率化のインパクトは大きいか、SaaSの導入で解決できないか、アジャイルな進め方で小規模なPoCで仮説を検証する余地はないか、などより幅広い視点で検討をするようにしましょう。
DXの実行フェーズになっても、デジタルへの知見はもちろんですが、全社単位での経営の視点や戦略思考が必要になります。
DXの進め方|具体的な6つのステップ

DXの進め方は大きく6つのステップに分けられます。
それぞれのステップについてわかりやすく解説していきます。
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ステップ1:DXの目的・ビジョンを明確化する

DX推進の最初のステップとして、DXの目的・ビジョンを明確化しましょう。
「DX推進後の理想の自社の姿」を明確に設定することで、その後の取り組み内容や優先度、進め方などを決定する軸とすることができ、ブレることなくプロジェクトを推進できます。
本ステップの検討には経済産業省の「DXレポート2.1」のフレームワークが役に立ちます。
自社の業務、製品/サービス、ビジネスモデルのそれぞれが、どの程度までデジタル化された状態を理想とするかを、市場環境や自社の特性を踏まえ、検討しましょう。
例えば、業務のデジタル化すら進んでいない企業であれば、3年後までにまずは業務のデジタライゼーションを目指す。一方で、業務のデジタル化が進んでいる企業であれば、3年後までに製品/サービスやビジネスモデルのデジタルトランスフォーメーションを目指す。といったビジョンの設定が考えられます。
ステップ2:自社の現状と課題を把握する

続いて、自社が現状どの程度DXを推進できているのか、ビジョンの実現に向け何が課題なのかを把握しましょう。
本ステップの検討には、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「DX推進指標」を活用することで、企業文化、推進体制、人材育成など、多角的な観点から評価を行うことができます。
それぞれの観点における自社の成熟度のレベルを把握することで、特にDX推進が遅れているポイントを明確にすることができ、その後の戦略や計画の策定に活かすことが可能です。
ステップ3:DXに関する戦略と計画を策定する

前ステップで策定したビジョンと自社の現状・課題に基づき、DXに関する戦略・計画を策定しましょう。
検討すべき項目は上記画像のように多岐に渡りますが、特に重要なのは、「戦略=デジタル化の優先度付け」です。
デジタル化の対象や取り組み内容の候補は極めて幅広いため、バラバラと取り組みを進めてしまうことでリソースが分散し、思うような成果が上がらないというケースは少なくありません。
そのため、取り組みの候補を幅出し・整理した上で、DXを推進しやすくインパクトも期待できる取り組みから着手し、その後難易度が高くよりインパクトの期待できる取り組みにシフトしていくといった進め方が有効となります。
例えば、受発注のやりとりに関する膨大な作業の効率化を重点課題とした企業であれば、まずは資料のペーパーレス化や判子の電子印化を進めた上で、その後一連の受発注プロセスをデジタル活用により自動化するといった進め方が考えられます。
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ステップ4:DX推進チームを構築する

DXを推進するには、ビジョンや戦略を社員に周知し、現場からの課題を吸い上げながら、各部門と連携・調整し、実行支援も行う、DX推進専門のチームが必要になります。
そのため、DX推進チームのメンバーには特に、デジタルへの知見、コミュニケーション能力、業務の知見などのスキルが求められます。
また、DX人材の具体的な職種の例は以下の通りです。
- プロジェクトマネージャー:DXやデジタルビジネス構築を主導するリーダー
- テックリード:システム設計や要件定義を担当し、開発を主導
- UI/UXデザイナー:DXやデジタルビジネスのユーザー向けのデザインを担当
- エンジニア:デジタルシステムの実装・インフラ構築を担当
- データサイエンティスト:事業・業務に精通しデータの収集・分析を担当
これらのDX人材の確保には、外部ベンダー等の人材を活用する方法と、社員に対するDX人材育成を実施する方法があります。
DX推進のスケジュールや、社員のDXスキルの有無、既存業務を含めたリソースの有無などを考慮し、自社に最適な方法を選択しましょう。
ステップ5:デジタル化により業務効率を向上させる
これまでに策定したビジョン・戦略・計画に基づき、実際に業務効率化に向けたデジタル化を推進していきましょう。
ここで、いきなり全社単位や部門横断の大規模なDXに着手してしまうと、デジタル化の難易度が高く、成果が出るまで長期間を要し、コストも膨大になってしまいます。
そこで、デジタイゼーション(書類で管理していたデータをクラウド上で一元管理する等)やデジタライゼーション(RPAの導入によりデスクワークの一部を自動化する等)など着実に成果の上がる取り組みを、特定の事業部や部門単位から進めるのがおすすめです。
前のステップまでは比較的トップダウン的な取り組みですが、本ステップからはいかに現場の各社員と深く対話し、小さな成功を積み重ねるというボトムアップ的な取り組みが重要です。
これにより、多くの人材から共感と信頼を勝ち取り、DX推進に巻き込んでいくことで、より大規模なDXの推進が可能になります。
ステップ6:PDCAを回し、ビジネスモデル変革まで繋げる

業務のデジタル化を進めることで、企業は今まで見えていなかった業務や顧客に関する様々なデータを収集・蓄積・可視化できるようになります。
これらのデータを分析し、新たな業務の課題やビジネスチャンスを発見し、取り組みを改善するというPDCAサイクルを、数ヶ月単位で何度も回すことで、大きな成果を上げることが可能です。
さらに、PDCAサイクルを回し続けることで、自社独自の詳細な顧客データやより効率的なオペレーション、先端技術活用のノウハウなどの強みが蓄積されていきます。この強み蓄積こそが、他社には真似できない、ユニークな新サービスやビジネスモデルの創出の源泉となります。
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