教育DXとは?3大メリット・デメリットや成功事例7選、注意点も紹介
教育におけるDXとは、デジタル技術を活用して従来の教育方法を大きく変革したり、教育の質を向上させる取り組みのことをいいます。
教育DXのメリットとして、デジタル技術による教育の質の向上、校務の自動化による教師の負担軽減、ペーパーレス化による教育コストの削減などが挙げられます。文部科学省もDX推進プランを公開し、学校でのDX推進を後押ししています。
本記事では、DX推進を検討している学校・教育機関の方に向けて、教育DXのメリット・デメリット、学校におけるDXの成功事例、教育DXの具体的な進め方まで分かりやすく解説していきます。
またDX総研では、DXを検討・推進する上で必ず押さえておきたい、DX成功事例50選の取り組みや成果をまとめたレポートを無料で配布しています。ご興味のある方は、以下リンクからダウンロードしてご活用ください。
目次
教育におけるDXとは?
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用し、業務やサービス、ビジネスモデルを変革し、企業の競争優位性を高める取り組みのことです。
学校や学習塾などの教育現場でもDXの取り組みは進んでいます。教育におけるDXとは、デジタル技術を活用して従来の教育方法を大きく変革したり、教育の質を向上させる取り組みのことをいいます。
教育におけるDXのわかりやすい取り組み事例としては、コロナウィルスの流行をきっかけに浸透したオンライン授業や、授業へのタブレット端末の導入などが挙げられます。
また、近年では、生成AIによる生徒一人一人への学習アドバイスの提供、VR技術を活用した仮想空間上での体験型授業など、最新の技術を活用して質の高い教育を行う取り組みも進められています。
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教育DXが重要である3つの理由

教育においてDXが重要である理由として、以下の3つが挙げられます。
- ①デジタル時代に対応した教育の必要性
- ②コロナをきっかけとするオンラインシフトの加速
- ③教員不足による教育の効率化の必要性
それぞれについてわかりやすく解説していきます。
①デジタル時代に対応した教育の必要性

コロナウィルスの流行をきっかけに全国的にオンライン授業が普及するなど、教育においてもデジタル化の動きが加速しています。
近年では、授業にタブレット端末を導入するなど積極的にIT化を進める学校も増えています。文部科学省の「端末利活用状況等の実態調査」によると、令和3年7月時点で、全国の公立小中学校の96%以上が、全学年または一部の学年でタブレット端末の利用を開始しているとのことです。
また、ChatGPTをはじめとする生成AIの普及を受け、学校の授業でも積極的にChatGPTを導入する動きも現れています。
今後ますます加速していくデジタル化の動きに備えて、教育面でも、デジタル時代に対応した授業を実施していくことが重要となっています。
②コロナをきっかけとするオンラインシフトの加速
コロナウィルスの流行をきっかけに、教育の分野でもデジタル化・オンランシフトが加速しました。
多くの学校でオンライン授業が導入されたり、YouTube等で授業の映像を配信する予備校が登場したりなど、教育をオンラインで提供する取り組みが数多く実践されています。
このようなオンラインシフトの加速を受けて、すべての学校・教育機関は、オンライン授業を提供できるインターネット環境の整備やITツールの導入の必要性に迫られています。
③教員不足による教育の効率化の必要性
文部科学省の「教師不足」に関する実態調査によると、令和3年度時点で、全国の公立小・中学校の教職員定数に対して不足している人数は合計2,086人に達しています。教師不足の原因として、産休・育休の増加や特別支援学級数の増加などが挙げられるとのことです。
近年、教師不足の問題を解消するための手段として、DXが注目されています。具体的には、生成AIを活用して答案の添削やテスト問題作成の一部を自動化したり、生徒がいつでも質問できるチャットボットを導入するなどして、教師の業務負担を軽減する取り組みが考えられます。
例えば、長崎北高校は英作文の添削にChatGPTを活用するなど、一部の学校では先進的な取り組みもなされています。
文部科学省によるDX推進プランとは?
文部科学省は2020年12月に、「デジタル化推進プラン」を公表し、教育におけるデジタル化の推進や早期実現に向けた取り組みなどをまとめています。
デジタル化推進プランにおいて掲げられている主な取り組み案は以下の通りです。
- 一人につき一台、端末を支給する体制の構築
- 大学入学者選抜におけるデジタル活用やハイブリッド教育研究環境の整備など、大学におけるデジタル活用の推進
- 高卒/中卒認定の受験申請・証明のデジタル化
- 教育データの利活用によるEBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング)の推進
また、文部科学省は、2019年からGIGAスクール構想というプロジェクトを推進しています。GIGAとは、Global and Innovation Gateway for Allを意味し、全国の生徒に一人一台のコンピュータを届けることを目的とした取り組みです。
コロナをきっかけに、GIGAスクール構想に基づく取り組みはスピードアップし、全自治体のうち約96%が通信環境の整備を完了し、小中学生一人一台教育用端末の支給もほぼ完了しました。
教育におけるDXを推進する3つのメリット

教育におけるDXを推進するメリットとして、以下の3つが挙げられます。
- ①デジタル技術の導入による教育の質の向上
- ②校務の自動化・効率化による教師の負担軽減
- ③ペーパーレス化による教育コストの削減
それぞれについてわかりやすく解説していきます。
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①デジタル技術の導入による教育の質の向上

デジタル技術を導入することで教育の質を高めることができます。例えば、生成AI搭載のチャットボットが各生徒の学習の進捗状況に応じたカリキュラムを策定したり、学習アドバイスを提供することで、生徒一人一人の学習効果を高めることができます。
また、VRやメタバースなどの最新技術を用いることで、大規模な科学実験を再現したり、デジタル空間上に工場を再現して見学できるようにするなど、現実世界では実現が難しいインタラクティブな授業を実施することも可能となります。
②校務の自動化・効率化による教師の負担軽減
学校の教員の仕事は授業をすることだけではありません。テスト問題や教材などの種々の書類の作成、授業計画の策定、学校行事の準備など、多種多様な校務を行っています。
ITツールを活用すれば、これらの校務の一部を自動化・効率化することができます。生成AIにテスト問題を作成させたり、授業計画の骨子を立案してもらうなどは、その代表的な例です。
これにより、教師は、生徒とのコミュニケーションや学校行事の運営など、人間にしかできない本質的なタスクに集中できるようになります。
③ペーパーレス化による教育コストの削減
DXの最も基本的な取り組みとして、紙の書類のペーパーレス化が挙げられます。教育現場では、教科書・参考書、ノート、テストの問題用紙など数多くの紙が使われます。
教育現場で使われるすべての書類をすぐに電子化することは難しいですが、できるところからでもペーパーレス化を進めていくことが重要です。これにより、紙代や印刷代を削減することができます。
現在、多くの学校が授業にタブレット端末を導入しており、端末上で書類を配布したり、テスト問題を出題するなどの取り組みが行われています。
教育DXにおける3つの課題

教育においてDXを推進する上で、多くの楽興・教育機関が直面し得る課題として、主に以下の3つが挙げられます。
- ①DX人材の確保が困難
- ②初期的な導入コストがかかる
- ③個人情報の漏洩リスクがある
それぞれについてわかりやすく解説していきます。
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①DX人材の確保が困難
DXを推進する場合、最新のテクノロジーを使いこなせるエンジニアはもちろん、戦略策定力とデジタル活用の両方に知見をもつリーダーや、子供にわかりやすくITリテラシー教育を行える優秀な指導者が必要となります。
しかし、経済産業省の調査によると、近年、国内のIT人材は減少傾向にあることがわかっています。IT人材の供給は、2019年をピークに減少しており、2030年にかけて40〜80万人規模で不足すると予想されているのです。
そのため、短期的には外部ベンダーやコンサルの起用などで体制を強化しつつ、中長期的には教員に対するデジタル教育の実施等を通じてDX人材を育成することが求められるでしょう。
②初期的な導入コストがかかる

DXの推進にはツールの導入や新たなシステム開発などが必要となり、数百万円〜数千万円の費用が必要になることも少なくありません。
例えば、生徒にタブレットを支給するための費用や、オンライン授業を行うための通信環境の構築にかかる費用などの初期コストがかかります。
一方で、数年スパンで見ると大きな成果が期待できるため、中長期でのコスト削減の効果を試算した上で、適切な範囲内で予算を確保し投資を行うことが重要です。
③個人情報の漏洩リスクがある
デジタルツールの中には、生徒の成績などのデータを読み込んで生徒ごとにパーソナライズされたカリキュラムを提案したり、生徒の答案をAIで自動採点できるものもあります。
その際には、生徒の成績や名前などの個人情報を扱うことになり、情報漏洩によるプライバシー侵害のリスクが生じます。
そのため、情報漏洩が生じないようなセキュリティ環境の構築が非常に重要となります。
教育におけるDXの成功事例7選
教育におけるDXの成功事例として、以下の7つが挙げられます。
- ①【長崎北高校】英作文の添削に生成AIを活用。活用ルール作りにも挑戦
- ②【愛媛大学教育学部附属中学校】教師と生成AIが協働し教育の質と効率を向上
- ③【奈良県の県立高校】全高校1年生を対象にクラウド型学習支援プラットフォーム「Classi」を導入
- ④【京都産業大学】「学生の成長」のためのスマートキャンパス化を実現
- ⑤【スタンフォード大学】授業全体でVRを使用する講義「Virtual People」を実施
- ⑥【ベネッセ】自由研究のテーマ選びをサポートする生成AIを導入
- ⑦【学研】生成AIを活用した個別アドバイスを提供
それぞれの事例について分かりやすく解説していきます。
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①【長崎北高校】英作文の添削に生成AIを活用。活用ルール作りにも挑戦

長崎北高校では、英語学習の一環として対話型AI「CHATGPT」の活用が進められています。生徒たちは、英作文の添削や長文読解のサポートとしてAIを活用し、自分の弱点を把握し、学力向上に役立てています。
AIの活用により、生徒たちは文法や表現方法など、自分では気づけなかった点を瞬時に指摘され、学習効率の向上につながっています。
こちらの事例の特徴は、AIを使った授業で生徒たちが自ら活用法を実験・検討し、ガイドライン作成に挑戦している点です。
生徒たちは、AIのメリットだけでなくデメリットも理解し、便利さを最大化するためのルール作りに積極的に参加しています。こうした取り組みは、AIとの付き合い方を考え、問題解決能力を養う貴重な機会となっています。
②【愛媛大学教育学部附属中学校】教師と生成AIが協働し教育の質と効率を向上

愛媛大学教育学部附属中学校では、授業の「振り返り」を効率化するために、対話型AI「ChatGPT」の導入を試験的に行っています。
生徒たちはタブレット端末を使用して、授業で学んだ内容や疑問点を入力し、AIが即座にフィードバックを提供します。
これにより、従来は教師が行っていた時間を要するコメント作成作業が効率化され、教師の負担が軽減されています。
この事例では、教師がChatGPTのコメントをダブルチェックし、学習内容や生徒の理解度に応じた適切なフィードバックを提供することで、教育の質と業務効率性の両立が実現されています。
このバランスの取れた活用方法により、AIの利点を最大限に活かしつつ、生徒へのきめ細かな対応も維持されています。
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③【奈良県の県立高校】全高校1年生を対象にクラウド型学習支援プラットフォーム「Classi」を導入
奈良県の県立高校では、全高校1年生を対象にクラウド型学習支援プラットフォーム「Classi」が導入されています。
Classiは、学習トレーニング、Webテストなど学校現場において生徒の学習サイクルを支援する機能と、学習記録、生徒カルテなど先生のコーチングサイクルを支援する機能、校内グループ、メッセージ、保護者欠席連絡など、生徒・保護者と先生とのコミュニケーションを支援する機能という3つの機能を兼ね備えた総合型プラットフォームです。
本取り組みは、奈良県が求める学びと指導の個別化、生徒の自己実現に必要な資質・能力向上の実現を目的に実施されました。
これにより、奈良県の県立高校生徒がClassiを活用した個別最適な学びを体験できることとなります。さらに、学校と家庭とのスムーズなコミュニケーションや、教員の負担軽減も可能になります。
Classiは、コロナをきっかけに全国の学校に普及し、2019年5月時点で導入校数が2,500校を突破しました。
④【京都産業大学】「学生の成長」のためのスマートキャンパス化を実現

京都産業大学では、次の3つの柱を趣旨としたスマートキャンパス化を進めています。
- キャンパス内にソフトバンクの5Gの環境を整備し、ARサービスやVR演習室、インタラクティブ掲示板、食堂やバスなどの混雑状況配信ソリューション、顔認証システム等を導入予定。
- LINEのプラットフォームを活用した「LINEスマートキャンパス」を共創。窓口申請のデジタル化や証明書発行等におけるキャッシュレス決済サービス等の導入を想定し、学生生活の利便性向上を推進する。さらに、法人向けアカウントサービス「LINE公式アカウント」や、新たにアプリをダウンロードすることなく「LINE」のアプリ上でサービスを利用できるアプリプラットフォーム「LINEミニアプリ」などを活用して、学生の入学前から、在学中、卒業後まで、それぞれのタイミングに適切なコミュニケーションを図る。
- 全てが集まる一拠点総合大学に最先端のデジタル技術を集結させ、デジタル知見を支える人材育成を進め、研究力を生かした社会との連携により、大学のスローガンである「むすんで、うみだす。」を具現化する“共創拠点”となることを目指す。
これらを実行することで、将来に向かって挑戦する意欲を持ち、Society 5.0をリードしていく人材育成を目指しています。
⑤【スタンフォード大学】授業全体でVRを使用する講義「Virtual People」を実施

スタンフォード大学では、Oculus Quest 2とVR環境を活用して行われるコース「Virtual People」が開講されています。
「Virtual People」は、授業のほぼ全てでVRを利用する講義で、VRがこれまでどのように浸透してきたか、技術的進化を遂げてきたかをバーチャル上の講義で学ぶことができます。
また、VR内での“課外学習”として、人種的不平等に直面した男性の人生を体験することで、人種的寛容さを学べるコンテンツなどもあります。
日本でも、授業にVRを取り入れる学校が現れてきており、生徒の好奇心を刺激して学習意欲を高めたり、現実では不可能な大規模な実験を再現するなど、教育の質の向上に貢献しています。
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⑥【ベネッセ】自由研究のテーマ選びをサポートする生成AIを導入

大手通信教育事業のベネッセは、小学生とその親をターゲットに「自由研究おたすけAI」をリリースしました。
このサービスは、生成AI「ChatGPT」の技術を利用し、自由研究のテーマ選定を支援し、子供たちの疑問に対してアドバイスを提供します。
子供たちは、自由研究にかけられる時間や興味のあるジャンルを入力することで、ラボリーから具体的なテーマやアイデアを受け取ることができます。
ベネッセのこの取り組みは、デジタルリテラシー教育においても保護者から好意的な反応を得ており、子供たちの学習をサポートする新しい形として注目されています。
⑦【学研】生成AIを活用した個別アドバイスを提供

学習塾などの教育サービスを展開する学研ホールディングスは、オリジナル学習システム「GDLS」でChatGPTを活用し、個別に最適な学習アドバイスを提供するベータ版を開始しました。
このシステムは、生徒の学習履歴や理解度の変化に基づいて各生徒に対して適切な学習アドバイスを提供し、学習効果を最大化します。
学研オリジナル学習システム(GDLS)は、生徒が毎日ログインする習慣を促し、学習への意欲を高めます。さらに、学研メソッドはこれまでもAIを活用し、正答率に合わせた問題出題などを行っており、GDLSはその発展形となっています。
教育DXを推進する6つのステップ

教育DXの進め方は大きく6つのステップに分けられます。
それぞれのステップについてわかりやすく解説していきます。
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ステップ1:DXの目的・ビジョンを明確化する

DX推進の最初のステップとして、DXの目的・ビジョンを明確化しましょう。
「DX推進後の理想の自社の姿」を明確に設定することで、その後の取り組み内容や優先度、進め方などを決定する軸とすることができ、ブレることなくプロジェクトを推進できます。
本ステップの検討には経済産業省の「DXレポート2.1」のフレームワークが役に立ちます。
自社の業務、製品/サービス、ビジネスモデルのそれぞれが、どの程度までデジタル化された状態を理想とするかを、市場環境や自社の特性を踏まえ、検討しましょう。
例えば、業務のデジタル化すら進んでいない企業であれば、3年後までにまずは業務のデジタライゼーションを目指す。一方で、業務のデジタル化が進んでいる企業であれば、3年後までに製品/サービスやビジネスモデルのデジタルトランスフォーメーションを目指す。といったビジョンの設定が考えられます。
ステップ2:自社の現状と課題を把握する

続いて、自社が現状どの程度DXを推進できているのか、ビジョンの実現に向け何が課題なのかを把握しましょう。
本ステップの検討には、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「DX推進指標」を活用することで、企業文化、推進体制、人材育成など、多角的な観点から評価を行うことができます。
それぞれの観点における自社の成熟度のレベルを把握することで、特にDX推進が遅れているポイントを明確にすることができ、その後の戦略や計画の策定に活かすことが可能です。
ステップ3:DXに関する戦略と計画を策定する

前ステップで策定したビジョンと自社の現状・課題に基づき、DXに関する戦略・計画を策定しましょう。
検討すべき項目は上記画像のように多岐に渡りますが、特に重要なのは、「戦略=デジタル化の優先度付け」です。
デジタル化の対象や取り組み内容の候補は極めて幅広いため、バラバラと取り組みを進めてしまうことでリソースが分散し、思うような成果が上がらないというケースは少なくありません。
そのため、取り組みの候補を幅出し・整理した上で、DXを推進しやすくインパクトも期待できる取り組みから着手し、その後難易度が高くよりインパクトの期待できる取り組みにシフトしていくといった進め方が有効となります。
例えば、受発注のやりとりに関する膨大な作業の効率化を重点課題とした企業であれば、まずは資料のペーパーレス化や判子の電子印化を進めた上で、その後一連の受発注プロセスをデジタル活用により自動化するといった進め方が考えられます。
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ステップ4:DX推進チームを構築する

DXを推進するには、ビジョンや戦略を社員に周知し、現場からの課題を吸い上げながら、各部門と連携・調整し、実行支援も行う、DX推進専門のチームが必要になります。
そのため、DX推進チームのメンバーには特に、デジタルへの知見、コミュニケーション能力、業務の知見などのスキルが求められます。
また、DX人材の具体的な職種の例は以下の通りです。
- プロジェクトマネージャー:DXやデジタルビジネス構築を主導するリーダー
- テックリード:システム設計や要件定義を担当し、開発を主導
- UI/UXデザイナー:DXやデジタルビジネスのユーザー向けのデザインを担当
- エンジニア:デジタルシステムの実装・インフラ構築を担当
- データサイエンティスト:事業・業務に精通しデータの収集・分析を担当
これらのDX人材の確保には、外部ベンダー等の人材を活用する方法と、社員に対するDX人材育成を実施する方法があります。
DX推進のスケジュールや、社員のDXスキルの有無、既存業務を含めたリソースの有無などを考慮し、自社に最適な方法を選択しましょう。
ステップ5:デジタル化により業務効率を向上させる
これまでに策定したビジョン・戦略・計画に基づき、実際に業務効率化に向けたデジタル化を推進していきましょう。
ここで、いきなり全社単位や部門横断の大規模なDXに着手してしまうと、デジタル化の難易度が高く、成果が出るまで長期間を要し、コストも膨大になってしまいます。
そこで、デジタイゼーション(書類で管理していたデータをクラウド上で一元管理する等)やデジタライゼーション(RPAの導入によりデスクワークの一部を自動化する等)など着実に成果の上がる取り組みを、特定の事業部や部門単位から進めるのがおすすめです。
前のステップまでは比較的トップダウン的な取り組みですが、本ステップからはいかに現場の各社員と深く対話し、小さな成功を積み重ねるというボトムアップ的な取り組みが重要です。
これにより、多くの人材から共感と信頼を勝ち取り、DX推進に巻き込んでいくことで、より大規模なDXの推進が可能になります。
ステップ6:PDCAを回し、ビジネスモデル変革まで繋げる

業務のデジタル化を進めることで、企業は今まで見えていなかった業務や顧客に関する様々なデータを収集・蓄積・可視化できるようになります。
これらのデータを分析し、新たな業務の課題やビジネスチャンスを発見し、取り組みを改善するというPDCAサイクルを、数ヶ月単位で何度も回すことで、大きな成果を上げることが可能です。
さらに、PDCAサイクルを回し続けることで、自社独自の詳細な顧客データやより効率的なオペレーション、先端技術活用のノウハウなどの強みが蓄積されていきます。この強み蓄積こそが、他社には真似できない、ユニークな新サービスやビジネスモデルの創出の源泉となります。
教育DXを成功させる5つのポイント

教育DXを成功させるためのポイントとして、以下の5つが挙げられます。
- ①リーダーのコミットメントにより社内を巻き込む
- ②自社ならではのDX戦略を策定する
- ③十分なDX人材を確保する
- ④スモールスタートクイックウィンを実現する
- ⑤ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する
それぞれのポイントについて分かりやすく紹介していきます。
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①リーダーのコミットメントにより社内を巻き込む
DXは、個別業務のデジタル化だけでなく、全社規模の業務やビジネスモデル、組織文化の変革など、会社のコアとなる部分を大きく変えていく取り組みです。
そのため、経営陣や事業部のリーダーが起点となり、DXのビジョン・方針を明確に示し、社内全体を強力に動かしていく必要があります。
具体的には、「どのような中長期的なDXのビジョンを描くのか」、「業務や顧客体験、ビジネスモデルをどのように変えていくのか」、そのために「どの程度人材や予算を割り当てていくのか」などに対して、大きな権限を持って意思決定をしていくことが求められます。
一方で、経営陣やリーダー陣がDXに対する危機意識が低い場合などは、DX推進部門や経営企画部門などが主導し、リーダー陣を含め、DXに関する社内向けの勉強会/ワークショップを実施することも有効です。
②自社ならではのDX戦略を策定する

あらゆる人・モノ・コトがインターネットと繋がる現代で、人々の生活や業務、ビジネスの主戦場は、リアルの世界からデジタルの世界に加速度的にシフトし続けています。
その変化を踏まえ、いかにデジタルを活用し競争優位性を築いていくかは、全ての企業の経営戦略を考える上で必須のテーマとなっており、DX戦略を考えること=経営戦略を考えること、と言っても過言ではありません。
そのため、DX戦略を策定する際は、特定の事業部/部門×個別の業務×デジタル化という範囲で考えたり、同業他社が進めている取り組みをベースにして考えるといった、個別具体的なアプローチではなく、より中長期や全体のアプローチから、全社のビジョンや経営戦略、テクノロジートレンドや業界への影響などと連動させて考える必要があります。
③十分なDX人材を確保する
DXの成功に向けては、テクノロジーと経営戦略に対して深い知見を持つプロジェクトマネージャーや、専門的なスキルを有するエンジニア、デザイナーなどのDX人材を十分に確保することが必須となります。
本来であれば、既にDX人材が社内にいればよいのですが、ほとんどの日本企業で人材が不足しているという現状があります。
また、市場全体として人手不足で、DX人材の争奪戦となっており、採用も思うようには進められないというケースも多く見られます。
そのため、足元のDX推進にむけては、経営課題とデジタルの両方に精通した外部のエキスパートを活用しながら、中長期目線では実践や研修を通じた人材育成をしていくといったアプローチが有効です。
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④スモールスタートクイックウィンを実現する

DXがなかなか進まない理由として、業務や組織を大胆に変えていくことが必要な一方で、全社規模の大きな成果が上がるまでには5年程度を有するという点があります。
そのため、取り組みの方向性が正しくても、短期間では成果が見えにくいことから、部門間の軋轢や現場からの反発が生まれ、変革のスピードが落ちてしまうケースが少なくありません。
そこで、全社単位でのインパクトは小さくとも、比較的短期で成果が出る取り組みを進め、その成果を社内外に発信し巻き込んでいくことは非常に有効です。
取り組みの例としては、アナログデータのデジタル化や各種データの一元管理化、業務自動化ツールの導入などが挙げられます。
これらの取り組みにより小さな成功を積み重ね、他部門のリーダー陣や現場の社員のマインドが徐々に変わっていくことで、連鎖的に大規模なDXを推進しやすい状況を実現できます。
⑤ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する

業務の現状や課題を踏まえて設定したゴールに向けて、最適かつ低コストなアプローチ設計をすることは、DXの投資対効果を飛躍的に高めます。
そもそものDXの目的は、業務を効率化することや顧客により良い製品/サービスを届けることです。
一方で、「DXプロジェクトをやるぞ!」となると、本来目的であるはずのデジタル化自体が目的になってしまい、競合が取り組んでいるからといった理由で、自社にマッチしない大掛かりなデジタル化をすすめてしまうケースが少なくありません。
もし大規模なシステム開発をせずに効率化を実現できるのならそれがベストであり、そもそも業務は必要か、効率化のインパクトは大きいか、SaaSの導入で解決できないか、アジャイルな進め方で小規模なPoCで仮説を検証する余地はないか、などより幅広い視点で検討をするようにしましょう。
DXの実行フェーズになっても、デジタルへの知見はもちろんですが、全社単位での経営の視点や戦略思考が必要になります。
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