【2024年】DX銘柄に選ばれた注目企業一覧|取組事例10選も紹介
経済産業省と東京証券取引所は、毎年、企業価値・競争力向上につながる先進的なDXの取り組みを行っている企業をDX銘柄として選定し、公表しています。
DX銘柄に選定された企業は、最新のデジタル技術を自社の課題に合わせて適切に活用し、確実な成果に結びつけている先進的な取り組みを行っており、その取り組み内容を知ることは、自社でのDX推進を検討する上で、非常に参考になります。
本記事では、2024年のDX銘柄に選ばれた企業の取り組みの中から、特に参考になる事例を厳選してご紹介します。
またDX総研では、DXを検討・推進する上で必ず押さえておきたい、DX成功事例50選の取り組みや成果をまとめたレポートを無料で配布しています。ご興味のある方は、以下リンクからダウンロードしてご活用ください。
目次
- DXの注目企業が選ばれる「DX銘柄」とは?
- 【2024年】DX銘柄に選ばれた注目企業一覧
- DXで注目すべき企業による参考になるDX取り組み事例10選
- ①【LIXIL】接客等のDXを進め業務効率化と顧客体験向上を同時に実現
- ②【アシックス】デジタル上の顧客接点を強化しEC/D2C売上比率を大幅に向上
- ③【第一三共】AIやビッグデータを活用して創薬プロセスを刷新
- ④【旭鉄工】製造現場の組織的なカイゼンに生成AIを活用
- ⑤【ダイキン】空調機の効率的な稼働を実現するIoTシステムの構築
- ⑥【SGホールディングス】AI搭載の荷積みロボットやAI-OCRでトラックドライバーの労働負担を軽減
- ⑦【日本郵船】運航データの収集にAIを活用することで、船舶のIoT化を推進
- ⑧【マクニカ】SCMシステム刷新により需要予測の自動化率80%を達成
- ⑨【クレディセゾン】10年の歳月をかけ、レガシーシステムから脱却
- ⑩【コマツ】IoT・AIを搭載したスマート建機ソリューションの提供
- DXを成功させるための5つのポイント
- DXの進め方|具体的な6つのステップ
DXの注目企業が選ばれる「DX銘柄」とは?
DX銘柄とは、毎年、経済産業省と東京証券取引所が共同で実施している、他社にとって参考になる先進的なDXの取り組みを行っている企業の事例を公表する制度のことです。
DX銘柄に選定されるためには、東京証券取引所に上場していること、DX認定企業であること、明確な戦略の下で具体的な成果を上げていることなどの条件を満たす必要があります。
DX認定制度とは、デジタルガバナンス・コードの要件を満たした企業を国が認定する制度です。DX認定事業者に指定されると、日本政策金融公庫による金利優遇措置や税制支援措置など様々なメリットを得ることができます。
DX認定を受けた上で、DX銘柄に選ばれると、DXに積極的な企業として認知されて対外的な評価が高まるとともに、自社の製品やサービスのPRにもなります。また、投資家の関心を集め資金調達で有利になったり、ブランドイメージが向上するなどのメリットも得ることができます。
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【2024年】DX銘柄に選ばれた注目企業一覧
2024年のDX銘柄に選ばれた企業の一覧は以下の通りです。中でも、LIXIL、三菱重工、アシックスは、企業価値や競争力の向上に繋がる画期的なDXの取り組みを行った企業として、DXグランプリに選ばれています。
会社名 | 業種 |
---|---|
LIXIL(グランプリ) | 金属製品 |
三菱重工(グランプリ) | 機械 |
アシックス(グランプリ) | その他製品 |
ニチレイ | 食料品 |
ワコールホールディングス | 繊維製品 |
旭化成 | 化学 |
第一三共 | 医薬品 |
ブリヂストン | ゴム製品 |
AGC | ガラス・土石製品 |
JFEホールディングス | 鉄鋼 |
ダイキン | 機械 |
オムロン | 電気機器 |
横河電機 | 電気機器 |
アイシン | 輸送用機器 |
SGホールディングス | 陸運業 |
日本郵船 | 海運業 |
日本航空 | 空運業 |
三菱倉庫 | 倉庫・運輸関連業 |
ソフトバンク | 情報・通信業 |
マクニカホールディングス | 卸売業 |
アスクル | 小売業 |
三井住友フィナンシャルグループ | 銀行業 |
大和証券グループ本社 | 証券・商品先物取引業 |
クレディセゾン | その他金融業 |
H. U. グループホールディングス | サービス業 |
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DXで注目すべき企業による参考になるDX取り組み事例10選
DXグランプリやDX銘柄に選定された注目企業による取り組みの中でも、特に参考になる10事例は、以下の通りです。
- ①【三菱UFJ銀行】ChatGPT利用で月22万時間の労働時間削減へ
- ②【SMBCフィナンシャルグループ】契約件数200万件以上のモバイル総合金融サービス「Olive」を提供
- ③【りそな銀行】ToC向けワンストップ金融サービスアプリの提供
- ④【クレディセゾン】10年の歳月をかけ、レガシーシステムから脱却
- ⑤【みずほ銀行】メタバース上に店舗を開設し、決済機能提供などを検討
- ⑥【東京証券取引所】オンラインでETF取引ができるシステムをアジャイル開発
- ⑦【南都銀行】営業店端末全廃を掲げ、行員の業務時間半減を目指す
- ⑧【三井住友海上火災保険】AIによるスコアリングなど様々な新規ソリューションを提供
- ⑨【SOMPOホールディングス】データに基づく適切な災害予測により防災対策に貢献
- ⑩【東京海上ホールディングス】IoT搭載のドラレコにより交通事故削減に貢献
それぞれについて、取組内容や具体的な成果を分かりやすく解説していきます。
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①【LIXIL】接客等のDXを進め業務効率化と顧客体験向上を同時に実現
LIXILは、建築材料や住宅設備機器などを製造・販売する日本を代表するメーカーの一つです。同社は、製品設計から接客まであらゆる販売プロセスにAIやIoTなどのデジタル技術を取り入れて、業務効率化と顧客体験(CX)の向上を同時に実現しました。
【課題・背景】
- コロナをきっかけとするECの普及に伴い、オンラインでの顧客接点・販売チャネルの確保の必要性に迫られていた
【具体的な取り組み】
- LIXILの製品を購入したい企業に対して、自宅から接客を受けられるサービス「LIXILオンラインショールーム」の提供
- AIが顧客の希望に寄り添った見積りプランを提示する「かんたんプラン選び」の提供
【得られた成果】
- 忙しい人でも気軽に製品購入に関する相談や見積りの取得が可能となり、累計相談数15万組突破、顧客満足度93%を達成
- 時間を選ばず利用できるサービスとして「日本子育て支援大賞2023」を受賞
②【アシックス】デジタル上の顧客接点を強化しEC/D2C売上比率を大幅に向上
アシックスは、スポーツ用のシューズやウェアなどを製造・販売する日本を代表するスポーツ用品メーカーです。同社は、ランナー向けのスマホアプリなどを通じてデジタル上での顧客との直接の繋がり強化を進めることで、販売に占めるEC/D2C比率を高め、収益率の向上を実現しています。
【課題・背景】
- コロナをきっかけとする買い物のオンラインシフトに伴い、ECやD2Cでの販売比率を向上させ、売上げ拡大を図る必要に迫られていた
- アシックスの売上のうちECでの比率はわずか数%であり、EC比率拡大に向けた施策が喫緊の課題となっていた
【具体的な取り組み】
- ECサイトと連動し、限定クーポン等が貰えるロイヤリティプログラム「OneASICS」を展開し顧客接点を強化
- ランニングの記録と仲間とのシェアができるスマホアプリ「アシックスランキーパー」を提供し購入後の顧客との接点も獲得
- 購入後を含めた顧客データを活用し、各顧客の身体にフィットした商品を提案
【得られた成果】
- 卸売中心で顧客接点が限定的だったが、デジタル顧客基盤が1,000万人超へ
- 購入後も含めた多様な顧客接点の獲得により、ファン化を促進しLTVも向上
- 課題としていたEC売上比率が5%から18%へ、D2C比率が17%から33%へ向上
③【第一三共】AIやビッグデータを活用して創薬プロセスを刷新
第一三共は、ビッグデータやAIなどの技術を組み合わせて活用することで創薬を革新させています。同社は多様なデータや先進技術を活用し一人ひとりに寄り添った最適な健康・医療サービスを提供する ”HaaS(Healthcare as aService)”の実現を目指してDXに取り組んでいます。
【課題・背景】
- 2万分の1以下の成功確率といわれる新薬開発において、良質な薬をいち早く患者に届けるために、AIやビッグデータを活用して創薬に革新をもたらす必要性に迫られていた
【具体的な取り組み】
- 約60億種類もの化合物群の中から、病気に効果のある最適な化合物を見つけるためのAIスクリーニングを実施
- バイオ医薬品の生産工程にAIや機械学習技術を応用
【得られた成果】
- AIとビッグデータにより、約2か月という短期間で大量の良質な新薬候補化合物の創出に成功
- AIや機械学習技術の応用により、バイオ医薬品の生産工程の効率と安定性の向上を実現
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④【旭鉄工】製造現場の組織的なカイゼンに生成AIを活用
旭鉄工は、トヨタなどの主要自動車メーカーと取引を行う、日本の自動車部品メーカーです。「人には付加価値の高い仕事を」をスローガンに、IoTを起点としたDXを行っています。
またノウハウを他社展開するため、2016年9月にi Smart Technologies株式会社を設立し、IoTモニタリングやコンサルティングサービスも提供しています。
【課題・背景】
- IoT活用により改善活動のサイクルが早まったが、改善方法(ノウハウ)そのものは個人が紙やファイルで属人的に保存している状況であった
- そこで、それらをまとめた「横展アイテムリスト(ノウハウ集)」を作成。しかし、事例数が膨大で探し出すのが困難であり、かつ書き方に個人差があるため活用しづらいという新たな課題が生まれた
【具体的な取り組み】
- ChatGPTに「横展アイテムリスト」の内容を読み込ませ、ChatGPTに日本語で質問するだけで、最適な改善事例を回答できるように
- 例えば「マシニングのサイクルタイムの事例は?」と質問すると、「設備」「狙い」「内容」「注意点」などを箇条書きで整理して回答してくれる
【得られた成果・今後の展望】
- このシステムを本格導入することにより、社内の知見が現場の隅々にまで共有され、より生産性高くカイゼン活動を行うことが可能に
- 今後は同システムを、カイゼンGAIとして外部に提供するソリューションにも組み込んでいく方針
⑤【ダイキン】空調機の効率的な稼働を実現するIoTシステムの構築
ダイキン工業は、空調機や化学製品の製造を手掛ける大阪に本拠を置く世界的なメーカーです。同社は、2021年より「オールコネクテッド戦略」というプロジェクトを開始し、IoTにより空調機をクラウド環境に接続して一括管理を可能にし、業務やエネルギー消費の効率化を実現しています。
【課題・背景】
- オフィス空調設備のエネルギー消費量を最適化し、コスト削減と環境負荷の低減を目指す顧客企業のニーズが増加していた
- 多くの顧客企業が、設備管理者の人手不足に伴い、オフィス空調設備の運用・制御を効率化する必要性に迫られていた
【具体的な取り組み】
- 空調設備をインターネットでつなぐ「オールコネクテッド戦略」というプロジェクトを開始
- 各拠点の空調設備をつなぐクラウド型の空調コントロールシステム「DK-CONNECT」の構築
【得られた成果】
- 100万台以上のエアコンの接続と分単位のデータ取集・リアルタイム制御を実現
- スマホやタブレットから空調設備の監視・運用が可能となり、オフィスを巡回する手間をカット、業務時間の短縮を実現
- 部屋単位で空調を制御したり、人数に応じて自動で設定温度を調整するなど、空調設備の運用最適化によるエネルギー消費量の削減
⑥【SGホールディングス】AI搭載の荷積みロボットやAI-OCRでトラックドライバーの労働負担を軽減
佐川急便を中核とした総合物流企業グループであるSGホールディングスは、AI搭載の荷積みロボットやAI-OCRを活用し、業務効率化を実現しています。
【課題・背景】
- 物流業界では労働人口減少による労働力不足や、2030 年の輸送力不足を背景に、トラックドライバーの労働負担の軽減など労働環境の改善が求められていた
【具体的な取り組み】
- トラックの庫内に最適な荷積み作業ができる「AI搭載の荷積みロボット」を開発
- AI-OCRの機能を発展させ、給与支払報告書、コロナワクチン予診票、レセプト帳票などといった独自の帳票の読み取りも可能なソリューションを活用
【解決した課題・成果】
- トラックドライバーや積み込み作業者の業務負担軽減や荷役作業の省人化を実現
- 紙帳票のデータ化業務における人手不足やコスト増加に課題を抱える顧客に貢献できるサービスを提供
⑦【日本郵船】運航データの収集にAIを活用することで、船舶のIoT化を推進
日本郵船は、船舶のIoT化を推進し、海難事故の撲滅やCO2排出量削減への取り組みを進めています。
【課題・背景】
- SDGsやESGが重要視される中、環境に配慮した船舶の航行を実現するためのデジタル技術の活用が大きな目標となっていた
【具体的な取り組み】
- 船舶に装備するセンサーの種類や数を拡充し、運航データの収集にAIを活用することで、船舶のIoT化を推進
- 海域データを活用し、実際の船を再現したシミュレーションを行うことで、高効率を追求したプロペラを設計
【解決した課題・成果】
- 船舶のIoT化により、海難事故リスクの低減、燃費効率の向上、温室効果ガス排出量の削減、乗組員の点検業務の負担軽減を実現
- 高効率プロペラにより、燃費が向上し、CO2排出量を約2%削減
⑧【マクニカ】SCMシステム刷新により需要予測の自動化率80%を達成
マクニカとは、半導体やサイバーセキュリティを取り扱う技術商社です。同社は、システムの刷新によって2025年に売上2倍になっても同等の従業員数で業務ができることを目標に業務効率化を進めています。
【課題・背景】
- 問い合わせ業務において、顧客対応の属人化によるリードタイムの長さが課題となっていた
- 発注件数が増加した場合も、人的リソースを増やすことなく対応できる体制を整えたかった
【具体的な取り組み】
- 問合せ業務をポータル上に集約し、顧客ポータルを立ち上げ後も顧客要望の吸い上げによる継続的な改善を可能にする機能を追加
- 原材料の調達から販売を一元管理するSCM(サプライチェーンマネジメント)システム刷新による需給予測自動化で7万件に及ぶ需給計画のシステム化、需要予測の自動化率80%を達成
【得られた成果】
- 問合せ回答のリードタイム短縮や見積書の即日回答など、納期短縮やサポート品質の向上を実現
- 需要予測担当者を25%削減し、削減した人員をより付加価値の高い業務に再配置することに成功
⑨【クレディセゾン】10年の歳月をかけ、レガシーシステムから脱却
日本を代表するクレジットカード会社であるクレディセゾンは、他の金融機関と同様、レガシーシステムの存在に頭を悩ませており、中でもクレジットカードの基幹システムの複雑化は、新機能追加や改修を妨げる大きな障害となっていました。
今回の取り組みでは、クラウドを活用することで古いシステムを刷新し、レガシーシステムからの脱却に成功しました。
【課題・背景】
- クレディセゾンのクレジットカード基幹システムは、古いプログラミング言語を基に形成された複雑なシステムで、機能追加や改修が困難であり、エンジニアの確保にも苦戦していた
【具体的な取り組み】
- 社内API基盤を内製し、クラウドを活用して基幹システムの刷新を試みるプロジェクトを開始
- 約10年の歳月をかけて新たなシステム「HELIOS」を構築。総投資額は2,200億円に
【得られた成果】
- クレジットカード事業の新製品開発や新機能の追加が迅速に行えるようになり、事業の成長につながった
⑩【コマツ】IoT・AIを搭載したスマート建機ソリューションの提供
コマツは、ショベルやブルドーザーなどの建設機械や鉱山機械の製造を手掛ける日本の大手建設メーカーです。同社は、IoTやAIなどのデジタル技術を建設機械や産業機械に搭載した新たなソリューションを開発・提供し、製造業界や建設業界におけるモノづくりの現場のDXを支援しています。
【課題・背景】
- 建設業界の人手不足に伴う、現場作業の効率化・省人化のためのソリューションを求める顧客企業がますます増えていた
【具体的な取り組み】
- 建設・製造業界の企業に対して、遠隔地から機械の稼働状況を確認できるIoTを活用した管理システム「Komtrax」の開発・提供
- 建設・製造業界の企業に対して、AIが部品の劣化状態を把握し、故障前に交換時期を予測する予知保全システムの提供
- 建設業界の企業に対して、センサーを搭載し、自動制御を可能にしたICT建機の製造・販売
【得られた成果】
- 機械の稼働状況の一元管理が可能となり、稼働率の向上、メンテナンス時期の把握、生産量集計の自動化などによる顧客の現場作業の効率化・生産性向上を実現
- ある企業は、Komtraxにより、設備の稼働率が向上し、生産性が140%も増加するなど大幅な改善を実現
- 遠隔地から顧客の機械の稼働状況や部品の劣化状態の把握が可能となり、効率的かつ適切な修理・保全サービスの提案が可能に
DXを成功させるための5つのポイント
DXを成功させるためのポイントとして、以下の5つが挙げられます。
- ①リーダーのコミットメントにより社内を巻き込む
- ②自社ならではのDX戦略を策定する
- ③十分なDX人材を確保する
- ④スモールスタートクイックウィンを実現する
- ⑤ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する
それぞれのポイントについて分かりやすく紹介していきます。
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①リーダーのコミットメントにより社内を巻き込む
DXは、個別業務のデジタル化だけでなく、全社規模の業務やビジネスモデル、組織文化の変革など、会社のコアとなる部分を大きく変えていく取り組みです。
そのため、経営陣や事業部のリーダーが起点となり、DXのビジョン・方針を明確に示し、社内全体を強力に動かしていく必要があります。
具体的には、「どのような中長期的なDXのビジョンを描くのか」、「業務や顧客体験、ビジネスモデルをどのように変えていくのか」、そのために「どの程度人材や予算を割り当てていくのか」などに対して、大きな権限を持って意思決定をしていくことが求められます。
一方で、経営陣やリーダー陣がDXに対する危機意識が低い場合などは、DX推進部門や経営企画部門などが主導し、リーダー陣を含め、DXに関する社内向けの勉強会/ワークショップを実施することも有効です。
②自社ならではのDX戦略を策定する
あらゆる人・モノ・コトがインターネットと繋がる現代で、人々の生活や業務、ビジネスの主戦場は、リアルの世界からデジタルの世界に加速度的にシフトし続けています。
その変化を踏まえ、いかにデジタルを活用し競争優位性を築いていくかは、全ての企業の経営戦略を考える上で必須のテーマとなっており、DX戦略を考えること=経営戦略を考えること、と言っても過言ではありません。
そのため、DX戦略を策定する際は、特定の事業部/部門×個別の業務×デジタル化という範囲で考えたり、同業他社が進めている取り組みをベースにして考えるといった、個別具体的なアプローチではなく、より中長期や全体のアプローチから、全社のビジョンや経営戦略、テクノロジートレンドや業界への影響などと連動させて考える必要があります。
③十分なDX人材を確保する
DXの成功に向けては、テクノロジーと経営戦略に対して深い知見を持つプロジェクトマネージャーや、専門的なスキルを有するエンジニア、デザイナーなどのDX人材を十分に確保することが必須となります。
本来であれば、既にDX人材が社内にいればよいのですが、ほとんどの日本企業で人材が不足しているという現状があります。
また、市場全体として人手不足で、DX人材の争奪戦となっており、採用も思うようには進められないというケースも多く見られます。
そのため、足元のDX推進にむけては、経営課題とデジタルの両方に精通した外部のエキスパートを活用しながら、中長期目線では実践や研修を通じた人材育成をしていくといったアプローチが有効です。
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④スモールスタートクイックウィンを実現する
DXがなかなか進まない理由として、業務や組織を大胆に変えていくことが必要な一方で、全社規模の大きな成果が上がるまでには5年程度を有するという点があります。
そのため、取り組みの方向性が正しくても、短期間では成果が見えにくいことから、部門間の軋轢や現場からの反発が生まれ、変革のスピードが落ちてしまうケースが少なくありません。
そこで、全社単位でのインパクトは小さくとも、比較的短期で成果が出る取り組みを進め、その成果を社内外に発信し巻き込んでいくことは非常に有効です。
取り組みの例としては、アナログデータのデジタル化や各種データの一元管理化、業務自動化ツールの導入などが挙げられます。
これらの取り組みにより小さな成功を積み重ね、他部門のリーダー陣や現場の社員のマインドが徐々に変わっていくことで、連鎖的に大規模なDXを推進しやすい状況を実現できます。
⑤ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する
業務の現状や課題を踏まえて設定したゴールに向けて、最適かつ低コストなアプローチ設計をすることは、DXの投資対効果を飛躍的に高めます。
そもそものDXの目的は、業務を効率化することや顧客により良い製品/サービスを届けることです。
一方で、「DXプロジェクトをやるぞ!」となると、本来目的であるはずのデジタル化自体が目的になってしまい、競合が取り組んでいるからといった理由で、自社にマッチしない大掛かりなデジタル化をすすめてしまうケースが少なくありません。
もし大規模なシステム開発をせずに効率化を実現できるのならそれがベストであり、そもそも業務は必要か、効率化のインパクトは大きいか、SaaSの導入で解決できないか、アジャイルな進め方で小規模なPoCで仮説を検証する余地はないか、などより幅広い視点で検討をするようにしましょう。
DXの実行フェーズになっても、デジタルへの知見はもちろんですが、全社単位での経営の視点や戦略思考が必要になります。
DXの進め方|具体的な6つのステップ
DXの進め方は大きく6つのステップに分けられます。
それぞれのステップについてわかりやすく解説していきます。
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ステップ1:DXの目的・ビジョンを明確化する
DX推進の最初のステップとして、DXの目的・ビジョンを明確化しましょう。
「DX推進後の理想の自社の姿」を明確に設定することで、その後の取り組み内容や優先度、進め方などを決定する軸とすることができ、ブレることなくプロジェクトを推進できます。
本ステップの検討には経済産業省の「DXレポート2.1」のフレームワークが役に立ちます。
自社の業務、製品/サービス、ビジネスモデルのそれぞれが、どの程度までデジタル化された状態を理想とするかを、市場環境や自社の特性を踏まえ、検討しましょう。
例えば、業務のデジタル化すら進んでいない企業であれば、3年後までにまずは業務のデジタライゼーションを目指す。一方で、業務のデジタル化が進んでいる企業であれば、3年後までに製品/サービスやビジネスモデルのデジタルトランスフォーメーションを目指す。といったビジョンの設定が考えられます。
ステップ2:自社の現状と課題を把握する
続いて、自社が現状どの程度DXを推進できているのか、ビジョンの実現に向け何が課題なのかを把握しましょう。
本ステップの検討には、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「DX推進指標」を活用することで、企業文化、推進体制、人材育成など、多角的な観点から評価を行うことができます。
それぞれの観点における自社の成熟度のレベルを把握することで、特にDX推進が遅れているポイントを明確にすることができ、その後の戦略や計画の策定に活かすことが可能です。
ステップ3:DXに関する戦略と計画を策定する
前ステップで策定したビジョンと自社の現状・課題に基づき、DXに関する戦略・計画を策定しましょう。
検討すべき項目は上記画像のように多岐に渡りますが、特に重要なのは、「戦略=デジタル化の優先度付け」です。
デジタル化の対象や取り組み内容の候補は極めて幅広いため、バラバラと取り組みを進めてしまうことでリソースが分散し、思うような成果が上がらないというケースは少なくありません。
そのため、取り組みの候補を幅出し・整理した上で、DXを推進しやすくインパクトも期待できる取り組みから着手し、その後難易度が高くよりインパクトの期待できる取り組みにシフトしていくといった進め方が有効となります。
例えば、受発注のやりとりに関する膨大な作業の効率化を重点課題とした企業であれば、まずは資料のペーパーレス化や判子の電子印化を進めた上で、その後一連の受発注プロセスをデジタル活用により自動化するといった進め方が考えられます。
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ステップ4:DX推進チームを構築する
DXを推進するには、ビジョンや戦略を社員に周知し、現場からの課題を吸い上げながら、各部門と連携・調整し、実行支援も行う、DX推進専門のチームが必要になります。
そのため、DX推進チームのメンバーには特に、デジタルへの知見、コミュニケーション能力、業務の知見などのスキルが求められます。
また、DX人材の具体的な職種の例は以下の通りです。
- プロジェクトマネージャー:DXやデジタルビジネス構築を主導するリーダー
- テックリード:システム設計や要件定義を担当し、開発を主導
- UI/UXデザイナー:DXやデジタルビジネスのユーザー向けのデザインを担当
- エンジニア:デジタルシステムの実装・インフラ構築を担当
- データサイエンティスト:事業・業務に精通しデータの収集・分析を担当
これらのDX人材の確保には、外部ベンダー等の人材を活用する方法と、社員に対するDX人材育成を実施する方法があります。
DX推進のスケジュールや、社員のDXスキルの有無、既存業務を含めたリソースの有無などを考慮し、自社に最適な方法を選択しましょう。
ステップ5:デジタル化により業務効率を向上させる
これまでに策定したビジョン・戦略・計画に基づき、実際に業務効率化に向けたデジタル化を推進していきましょう。
ここで、いきなり全社単位や部門横断の大規模なDXに着手してしまうと、デジタル化の難易度が高く、成果が出るまで長期間を要し、コストも膨大になってしまいます。
そこで、デジタイゼーション(書類で管理していたデータをクラウド上で一元管理する等)やデジタライゼーション(RPAの導入によりデスクワークの一部を自動化する等)など着実に成果の上がる取り組みを、特定の事業部や部門単位から進めるのがおすすめです。
前のステップまでは比較的トップダウン的な取り組みですが、本ステップからはいかに現場の各社員と深く対話し、小さな成功を積み重ねるというボトムアップ的な取り組みが重要です。
これにより、多くの人材から共感と信頼を勝ち取り、DX推進に巻き込んでいくことで、より大規模なDXの推進が可能になります。
ステップ6:PDCAを回し、ビジネスモデル変革まで繋げる
業務のデジタル化を進めることで、企業は今まで見えていなかった業務や顧客に関する様々なデータを収集・蓄積・可視化できるようになります。
これらのデータを分析し、新たな業務の課題やビジネスチャンスを発見し、取り組みを改善するというPDCAサイクルを、数ヶ月単位で何度も回すことで、大きな成果を上げることが可能です。
さらに、PDCAサイクルを回し続けることで、自社独自の詳細な顧客データやより効率的なオペレーション、先端技術活用のノウハウなどの強みが蓄積されていきます。この強み蓄積こそが、他社には真似できない、ユニークな新サービスやビジネスモデルの創出の源泉となります。
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- 自社がデジタルを活用してどんなことができるか知りたい
- DXをどのように進めれば良いか分からない
- 自社にデジタル活用の経験や知識のある人がおらず困っている