DXとAIの関係とは?AIの活用法や3大メリット・成功事例5選も紹介
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用し、業務やサービス、ビジネスモデルを変革し、企業の競争優位性を高める取り組みのことです。
DXを実現するための手段として、AIは非常に強力なツールとなります。多くの企業がAIを活用して、業務効率化や新たなサービスの創出などの成果をあげています。
本記事では、AIを活用したDXの推進を検討している方に向けて、DXとAIの関係性、DXにAIを活用する方法やメリット、注意点、AIを活用したDXの成功事例、成功のポイントなどをわかりやすく解説していきます。
またDX総研では、DXを検討・推進する上で必ず押さえておきたい、DX成功事例50選の取り組みや成果をまとめたレポートを無料で配布しています。ご興味のある方は、以下リンクからダウンロードしてご活用ください。
目次
DXとは?

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して、業務やサービス、ビジネスモデルを変革し、企業の競争優位性を高める取り組みのことです。
単なるデジタル化・IT化ではなく、デジタル活用により、業務やサービス、ビジネスモデルを大きく変革していく取り組みであるという点が大きなポイントです。
経済産業省は、2018年に発表した「DX推進ガイドライン」において、DXを以下のように定義しています。
“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること”
ー出典:経済産業省 デジタルガバナンス・コード2.0
例えば、動画配信大手のNetflixが、宅配型のDVDレンタル事業からサブスクリプション型のオンライン動画配信サービスへとビジネスモデルを変革したのは、DXの代表的な事例といえるでしょう。
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AIとは?

AIとは、「Artificial Intelligence(人工知能)」の略称で、コンピューターがまるで人間のように学習・判断・予測などの知的作業を行うことを可能にする技術のことを指します。
例えば、画像を認識し異常を検知する、過去のデータから未来を予測する、依頼を元に文章や画像を作成するなどの様々な活用が可能です。
近年、ビッグデータの蓄積や分析技術の進歩などにより、2020年以降その性能が飛躍的に向上し、幅広い業界・用途での活用が急激に進んでいます。
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DXとAIの関係性とは?

DXとAIの関係をひとことで言うと、AIはDXを推進する手段と位置付けられます。
AIは、人間には処理できない膨大なデータを分析してパターンやトレンドを発見することができます。例えば、顧客の購買履歴などのデータを分析することで各商品の需要を予測し、売上げを最大化する販売戦略を策定することが可能となります。
また、AIは計算能力や定型的な作業を得意としており、データ入力や書類作成などの単純作業を、人間の代わりに迅速かつ正確に遂行することができます。
このように、AIを導入することで、業務プロセスの大幅な効率化・カイゼンや新たな提供価値の創出が可能となり、DXの推進を加速させます。
AIがDXを実現する上で重要である3つの理由

AIがDXを実現する上で重要である理由として、以下の3つが挙げられます。
- ①大量のデータの有効活用が可能となる
- ②業務の効率化を加速させる
- ③新たな価値やサービスの創出につながる
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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①大量のデータの有効活用が可能となる
AIは、ビッグデータと呼ばれる、大量かつ多様なデータ群を分析・処理することができます。これにより、データに基づいた実効性のあるビジネス戦略の策定や業務プロセスの改革が可能となり、DXの推進に大きく貢献します。
特に、モノをインターネットで繋ぎ、そのモノから大量の情報を取得するIoT技術とAIを組み合わせることで、データ活用の効果を飛躍的に高めることができます。例えば、エアコンをIoT化することで、エアコンの使用状況等のデータを分析し、温度設定やオン・オフのタイミングを最適化することで、エネルギー消費量を節約することが可能となります。
②業務の効率化を加速させる
AIに適切な役割を与えて上手に活用することで、業務を大幅に効率化することができます。計算・データ入力や定型的な問い合わせへの応答、画像の識別など単純作業はAIが最も得意とする領域の一つであり、人間よりも早く正確に遂行することが可能です。
また、近年は、文章や画像を自動で作成できる生成AIが登場し、メール文・議事録・企画書などの文書/資料の作成にかかる時間も大幅に短縮することができるようになりました。
AIによる業務効率化の効果は、他のITツールと比べても格段に大きなものであり、AIを積極的に取り入れる企業とそうでない企業とでは、大きな差が生じると考えられます。
③新たな価値やサービスの創出につながる

AIを活用することで、既存の製品やサービスに新たな価値を付加したり、新規サービスを創出することが可能となります。
前者の例として、Amazonのように、ECサイトにAIのデータ分析機能を搭載することで、各ユーザーの好みに応じたレコメンド機能を導入することが挙げられます。
後者の例として、AIの文書作成能力を活用した議事録自動作成サービスや自動翻訳サービスなどが挙げられます。また、Netflixは、生成AIの画像作成機能を活用して、AIが作成したイラストを利用したアニメ「犬と少年」を配信しました。
DXにAIを活用する際の3つの注意点

DXにAIを活用する際の注意点として、主に以下の3つが挙げられます。
- ①情報漏洩対策を万全に整える
- ②AIを過信しすぎないようにする
- ③社員のDX/AIリテラシーを高める
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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①情報漏洩対策を万全に整える
DXにAIを活用する際は、個人情報や機密情報が外部に流出しないよう細心の注意が必要です。
AI活用で大きな成果を上げるためには、膨大な顧客の個人情報や社内の機密情報などを学習に活用することが有効です。
それらの情報が漏洩しないよう、学習に使用するデータの匿名化処理や、アウトプットの管理、活用用途の制限などのセキュリティ対策を万全に整えましょう。
②AIを過信しすぎないようにする
AIができることを把握したうえで、AIを過信せずに人間によるチェックを入れることが必要です。
AIを適切に利用することで業務生産性を大きく高めることが可能ですが、どのようなシチュエーションでも万能という訳ではありません。
例えば、倫理的に問題のあるコンテンツの社外への公開や、製造ラインやロボット制御ミスによる事故などの深刻な問題に繋がる可能性があります。
③社員のDX/AIリテラシーを高める
AIを最大限に活用するためには、従業員のDX/AIに対する理解とスキル、すなわち活用リテラシーを向上させることが不可欠です。
AI(特に生成AI)を活用するにあたっては、同じAIを利用していても、使い手のリテラシーによって成果が大きく左右されてしまいます。
そこで、研修プログラムや実践的なトレーニングを通じて、従業員がAIの基本的な知識、適切な使用方法、関連するリスクを理解し、効率的かつ責任ある方法でAIを利用できることが重要となります。
AIを活用したDXの成功事例7選
AIを活用したDXの成功事例として、以下の7つが挙げられます。
- ①【三菱UFJ銀行】ChatGPT利用で月22万時間の労働時間削減へ
- ②【東急リバブル】多様化する不動産顧客のニーズに応えるAIサービスを続々リリース
- ③【旭化成】生成AI導入により書面監査業務を年間1,820時間削減
- ④【パナソニック】電気シェーバーのモーター設計に生成AIを活用
- ⑤【三井住友海上火災保険】AIによるスコアリングなど様々な新規ソリューションを提供
- ⑥【国立がん研究センター】内視鏡画像をAIに解析・診断させ、がんの早期発見につなげる
- ⑦【第一三共】AIやビッグデータを活用して創薬プロセスを刷新
それぞれの事例についてわかりやすく紹介していきます。
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①【三菱UFJ銀行】ChatGPT利用で月22万時間の労働時間削減へ

三菱UFJ銀行は、AIを活用した様々な取り組みを実施し、DXを推進しています。近年では、対話型生成AI「ChatGPT」を自社専用にカスタマイズして導入し、稟議書などの文書作成業務の自動化・効率化を目指す取り組みが注目されています。
【課題・背景】
- 銀行業務では、稟議書や融資申込書など様々な文書の作成業務が発生し、多くの工数がかかっており、行員の負担となっていた
【具体的な取り組み】
- 4万人の行員を対象にChatGPTの利用を開放。自社独自にカスタマイズし、セキュリティ対策を施した安全な利用環境を構築
- AIを搭載したチャットボットを導入し、顧客からの問い合わせに対応
【得られた成果】
- ChatGPTを稟議書作成や社内文書ドラフトに活用することで、月22万時間以上の労働時間削減効果を試算
- チャットボットにより24時間365日の顧客対応が可能となり、行員の業務負担の軽減と顧客満足度の向上を実現
②【東急リバブル】多様化する不動産顧客のニーズに応えるAIサービスを続々リリース

土地から建物まであらゆる不動産の情報を提供する東急リバブルは、DXの一環として、AIを活用した様々な新規サービスの創出を行っています。
【課題・背景】
- 「急な転勤等に備えて売却価格を知りたい」「自分に合った物件をすぐに見つけ出したい」といった顧客の様々なニーズに応えたい
【具体的な取り組み】
- AIにより所有不動産の価格を簡単査定する「スピードAI査定」のリリース
- AIを活用することで相性ぴったりの物件を探すことができる「AI相性診断」のリリース
- AIが投資用区分マンションのおすすめ度を顧客ごとに分析してレコメンドする「投資用区分マンションAIマッチングシステム」を 開発・運用
【得られた成果】
- スピードAI査定は、所有する不動産を登録するだけでAIが瞬時に価格を査定する利便性が評価され、登録者が1万人を突破
- AI相性診断は、パーソナライズされた物件情報をスピーディに提供、マッチ度95%を達成
- 投資用区分マンションAIマッチングシステムは、営業経験5年以上の担当者と同等レベルの物件選定・提案力を実現
③【旭化成】生成AI導入により書面監査業務を年間1,820時間削減

旭化成は、サランラップなど化学製品を中心に製造する、日本の大手総合化学メーカーです。
DXにも積極的に取り組んでおり、経済産業省による「DX銘柄」に2021年から4年連続で選定されています。特に生成AIについては、2023年5月に従業員向け生成AI利用ガイドラインを発行し、いち早く生成AIを業務利用しています。
【課題・背景】
- 書面による顧客監査対応業務に1件当たり25時間もかかっており、従業員にとって大きな負担となっていた
【具体的な取り組み】
- 全社的に生成AIの活用を推進。生成AI基盤の構築、実証実験の推進、独自のガイドラインの制定を行う
- 当初は公開情報だけを学習した生成AIを導入、その後社内データも検索できるようにアップデート。社内文書作成や書面監査に活用
【得られた成果】
- 書面監査に生成AIを活用することで、従来と比べて年間1,820時間削減する実証実験が成功
- ある部署では、顧客と監査の書類をやりとりする時間を約25時間から約12時間に短縮
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④【パナソニック】電気シェーバーのモーター設計に生成AIを活用

パナソニックは、日本を代表する大手家電メーカーです。同社は、DXを核とするグループ横断の取り組みを「Panasonic Transformation(PX)」と称し、AIなどの最先端技術を取り入れながら、事業戦略の基礎となる業務・プロセス・カルチャーそのものの変革を2021年5月から進めています。
【課題・背景】
- 同社の電動シェーバー「LAMDASH(ラムダッシュ)」は20年以上にわたり改良を続けてきた製品であり、伸びしろが限界に来ていた
- モーターの高出力化が大きな課題となっていたが、人間の経験と知見では、これ以上の進化の余地はない状態だった
【具体的な取り組み】
- LAMDASHシリーズ次期商品のモーター設計に生成AIを活用
- AIがモーターの中核部品であるムーバーの構造をゼロベースで設計し、シミュレーション結果を基に改善するプロセスを自動で繰り返すシステムを構築
【得られた成果・今後の展望】
- 生成AIが設計したモーターは、熟練技術者による最適設計と比較して出力が15%UPし、品質向上を実現
- 人間では改善に数か月も要していたが、AIであれば数日でPDCAを回し、同等の改善が可能に
- 今後は電動工具や車載用モーター、シーリングファンなど、他の製品開発にもAIによる設計を採用する方針
⑤【三井住友海上火災保険】AIによるスコアリングなど様々な新規ソリューションを提供

大手損害保険会社の三井住友海上火災保険は、AIをさまざまな業務に活用し、サービスの質の向上・顧客満足度向上といった成果をあげています。
【課題・背景】
- よりパーソナライズされた体験を提供するために、AIによりデータをより科学的に分析・理解・活用し、効率的かつ正確なサービスを提供したい
【具体的な取り組み】
- AIによる自動車ローンスコアリングサービスを実装
- AIが災害時の被害推定を可視化する防災ダッシュボードを提供
- 損保業界で初めてAIチャットボットによる顧客対応を実施
【得られた成果】
- 公正かつ迅速な保険審査が可能となり、保険審査の質の向上や保険収益の増加を実現
- 災害発生時の被害推定をダッシュボード上にわかりやすく可視化することで、地域社会の防災対策を支援
- AIチャットボットが24時間265日、顧客からの問い合わせに即時に応答可能となり、顧客満足度が向上
⑥【国立がん研究センター】内視鏡画像をAIに解析・診断させ、がんの早期発見につなげる

国立がん研究センターは、内視鏡画像をAIに解析・診断させ、消化器系のがんの早期発見につなげる取り組みを実施しています。これまで、内視鏡検査は医師が肉眼で行っており、医師によって診断内容にばらつきがあったり、がんの兆候の見逃しがあるなどの課題がありました。
【課題・背景】
- 大腸内視鏡検査を受けていたにもかかわらず、内視鏡検査時の見逃しによりその後大腸がんになるケースが約3%に達している現状
- 早期発見が重要である大腸がん治療において見逃しを防ぐことが喫緊の課題に
【具体的な取り組み】
- NECと共同で、AIが早期大腸がんや前がん病変を内視鏡検査時にリアルタイムに発見するソフトウェアを開発
- AIに約 5,000 例の大腸癌と前癌病変の内視鏡画像を学習、診断させる
【得られた成果】
- 偽陽性率を1%に抑えたまま、98%の病変発見率を達成するなど、正確性が向上
- 解析時間もわずか0.1秒以内に短縮
⑦【第一三共】AIやビッグデータを活用して創薬プロセスを刷新

第一三共は、ビッグデータやAIなどの技術を組み合わせて活用することで創薬を革新させています。同社は多様なデータや先進技術を活用し一人ひとりに寄り添った最適な健康・医療サービスを提供する ”HaaS(Healthcare as aService)”の実現を目指してDXに取り組んでいます。
【課題・背景】
- 2万分の1以下の成功確率といわれる新薬開発において、良質な薬をいち早く患者に届けるために、AIやビッグデータを活用して創薬に革新をもたらす必要性に迫られていた
【具体的な取り組み】
- 約60億種類もの化合物群の中から、病気に効果のある最適な化合物を見つけるためのAIスクリーニングを実施
- バイオ医薬品の生産工程にAIや機械学習技術を応用
【得られた成果】
- AIとビッグデータにより、約2か月という短期間で大量の良質な新薬候補化合物の創出に成功
- AIや機械学習技術の応用により、バイオ医薬品の生産工程の効率と安定性の向上を実現
AIを活用したDX推進を進めるための6つのステップ

AIを活用したDXの進め方は大きく6つのステップに分けられます。
それぞれのステップについてわかりやすく解説していきます。
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ステップ1:DXの目的・ビジョンを明確化する

DX推進の最初のステップとして、DXの目的・ビジョンを明確化しましょう。
「DX推進後の理想の自社の姿」を明確に設定することで、その後の取り組み内容や優先度、進め方などを決定する軸とすることができ、ブレることなくプロジェクトを推進できます。
本ステップの検討には経済産業省の「DXレポート2.1」のフレームワークが役に立ちます。
自社の業務、製品/サービス、ビジネスモデルのそれぞれが、どの程度までデジタル化された状態を理想とするかを、市場環境や自社の特性を踏まえ、検討しましょう。
例えば、業務のデジタル化すら進んでいない企業であれば、3年後までにまずは業務のデジタライゼーションを目指す。一方で、業務のデジタル化が進んでいる企業であれば、3年後までに製品/サービスやビジネスモデルのデジタルトランスフォーメーションを目指す。といったビジョンの設定が考えられます。
ステップ2:自社の現状と課題を把握する

続いて、自社が現状どの程度DXを推進できているのか、ビジョンの実現に向け何が課題なのかを把握しましょう。
本ステップの検討には、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「DX推進指標」を活用することで、企業文化、推進体制、人材育成など、多角的な観点から評価を行うことができます。
それぞれの観点における自社の成熟度のレベルを把握することで、特にDX推進が遅れているポイントを明確にすることができ、その後の戦略や計画の策定に活かすことが可能です。
ステップ3:DXに関する戦略と計画を策定する

前ステップで策定したビジョンと自社の現状・課題に基づき、DXに関する戦略・計画を策定しましょう。
検討すべき項目は上記画像のように多岐に渡りますが、特に重要なのは、「戦略=デジタル化の優先度付け」です。
デジタル化の対象や取り組み内容の候補は極めて幅広いため、バラバラと取り組みを進めてしまうことでリソースが分散し、思うような成果が上がらないというケースは少なくありません。
そのため、取り組みの候補を幅出し・整理した上で、DXを推進しやすくインパクトも期待できる取り組みから着手し、その後難易度が高くよりインパクトの期待できる取り組みにシフトしていくといった進め方が有効となります。
例えば、受発注のやりとりに関する膨大な作業の効率化を重点課題とした企業であれば、まずは資料のペーパーレス化や判子の電子印化を進めた上で、その後一連の受発注プロセスをデジタル活用により自動化するといった進め方が考えられます。
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ステップ4:DX推進チームを構築する

DXを推進するには、ビジョンや戦略を社員に周知し、現場からの課題を吸い上げながら、各部門と連携・調整し、実行支援も行う、DX推進専門のチームが必要になります。
そのため、DX推進チームのメンバーには特に、デジタルへの知見、コミュニケーション能力、業務の知見などのスキルが求められます。
また、DX人材の具体的な職種の例は以下の通りです。
- プロジェクトマネージャー:DXやデジタルビジネス構築を主導するリーダー
- テックリード:システム設計や要件定義を担当し、開発を主導
- UI/UXデザイナー:DXやデジタルビジネスのユーザー向けのデザインを担当
- エンジニア:デジタルシステムの実装・インフラ構築を担当
- データサイエンティスト:事業・業務に精通しデータの収集・分析を担当
これらのDX人材の確保には、外部ベンダー等の人材を活用する方法と、社員に対するDX人材育成を実施する方法があります。
DX推進のスケジュールや、社員のDXスキルの有無、既存業務を含めたリソースの有無などを考慮し、自社に最適な方法を選択しましょう。
ステップ5:デジタル化により業務効率を向上させる
これまでに策定したビジョン・戦略・計画に基づき、実際に業務効率化に向けたデジタル化を推進していきましょう。
ここで、いきなり全社単位や部門横断の大規模なDXに着手してしまうと、デジタル化の難易度が高く、成果が出るまで長期間を要し、コストも膨大になってしまいます。
そこで、デジタイゼーション(書類で管理していたデータをクラウド上で一元管理する等)やデジタライゼーション(RPAの導入によりデスクワークの一部を自動化する等)など着実に成果の上がる取り組みを、特定の事業部や部門単位から進めるのがおすすめです。
前のステップまでは比較的トップダウン的な取り組みですが、本ステップからはいかに現場の各社員と深く対話し、小さな成功を積み重ねるというボトムアップ的な取り組みが重要です。
これにより、多くの人材から共感と信頼を勝ち取り、DX推進に巻き込んでいくことで、より大規模なDXの推進が可能になります。
ステップ6:PDCAを回し、ビジネスモデル変革まで繋げる

業務のデジタル化を進めることで、企業は今まで見えていなかった業務や顧客に関する様々なデータを収集・蓄積・可視化できるようになります。
これらのデータを分析し、新たな業務の課題やビジネスチャンスを発見し、取り組みを改善するというPDCAサイクルを、数ヶ月単位で何度も回すことで、大きな成果を上げることが可能です。
さらに、PDCAサイクルを回し続けることで、自社独自の詳細な顧客データやより効率的なオペレーション、先端技術活用のノウハウなどの強みが蓄積されていきます。この強み蓄積こそが、他社には真似できない、ユニークな新サービスやビジネスモデルの創出の源泉となります。
AIを活用したDX推進を成功させる5つのポイント
AIを活用したDX推進を成功させるためのポイントとして、以下の5つが挙げられます。
- ①リーダーのコミットメントにより社内を巻き込む
- ②自社ならではのDX戦略を策定する
- ③十分なDX人材を確保する
- ④スモールスタートクイックウィンを実現する
- ⑤ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する
それぞれのポイントについて分かりやすく紹介していきます。
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①リーダーのコミットメントにより社内を巻き込む
DXは、個別業務のデジタル化だけでなく、全社規模の業務やビジネスモデル、組織文化の変革など、会社のコアとなる部分を大きく変えていく取り組みです。
そのため、経営陣や事業部のリーダーが起点となり、DXのビジョン・方針を明確に示し、社内全体を強力に動かしていく必要があります。
具体的には、「どのような中長期的なDXのビジョンを描くのか」、「業務や顧客体験、ビジネスモデルをどのように変えていくのか」、そのために「どの程度人材や予算を割り当てていくのか」などに対して、大きな権限を持って意思決定をしていくことが求められます。
一方で、経営陣やリーダー陣がDXに対する危機意識が低い場合などは、DX推進部門や経営企画部門などが主導し、リーダー陣を含め、DXに関する社内向けの勉強会/ワークショップを実施することも有効です。
②自社ならではのDX戦略を策定する

あらゆる人・モノ・コトがインターネットと繋がる現代で、人々の生活や業務、ビジネスの主戦場は、リアルの世界からデジタルの世界に加速度的にシフトし続けています。
その変化を踏まえ、いかにデジタルを活用し競争優位性を築いていくかは、全ての企業の経営戦略を考える上で必須のテーマとなっており、DX戦略を考えること=経営戦略を考えること、と言っても過言ではありません。
そのため、DX戦略を策定する際は、特定の事業部/部門×個別の業務×デジタル化という範囲で考えたり、同業他社が進めている取り組みをベースにして考えるといった、個別具体的なアプローチではなく、より中長期や全体のアプローチから、全社のビジョンや経営戦略、テクノロジートレンドや業界への影響などと連動させて考える必要があります。
③十分なDX人材を確保する
DXの成功に向けては、テクノロジーと経営戦略に対して深い知見を持つプロジェクトマネージャーや、専門的なスキルを有するエンジニア、デザイナーなどのDX人材を十分に確保することが必須となります。
本来であれば、既にDX人材が社内にいればよいのですが、ほとんどの日本企業で人材が不足しているという現状があります。
また、市場全体として人手不足で、DX人材の争奪戦となっており、採用も思うようには進められないというケースも多く見られます。
そのため、足元のDX推進にむけては、経営課題とデジタルの両方に精通した外部のエキスパートを活用しながら、中長期目線では実践や研修を通じた人材育成をしていくといったアプローチが有効です。
※DX総研では経験豊富なコンサルタントによる、DXに関する個別無料相談会を実施しております。DX人材の確保や自社に合った推進方法などでお困りの方は、お気軽にご相談ください。
④スモールスタートクイックウィンを実現する

DXがなかなか進まない理由として、業務や組織を大胆に変えていくことが必要な一方で、全社規模の大きな成果が上がるまでには5年程度を有するという点があります。
そのため、取り組みの方向性が正しくても、短期間では成果が見えにくいことから、部門間の軋轢や現場からの反発が生まれ、変革のスピードが落ちてしまうケースが少なくありません。
そこで、全社単位でのインパクトは小さくとも、比較的短期で成果が出る取り組みを進め、その成果を社内外に発信し巻き込んでいくことは非常に有効です。
取り組みの例としては、アナログデータのデジタル化や各種データの一元管理化、業務自動化ツールの導入などが挙げられます。
これらの取り組みにより小さな成功を積み重ね、他部門のリーダー陣や現場の社員のマインドが徐々に変わっていくことで、連鎖的に大規模なDXを推進しやすい状況を実現できます。
⑤ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する

業務の現状や課題を踏まえて設定したゴールに向けて、最適かつ低コストなアプローチ設計をすることは、DXの投資対効果を飛躍的に高めます。
そもそものDXの目的は、業務を効率化することや顧客により良い製品/サービスを届けることです。
一方で、「DXプロジェクトをやるぞ!」となると、本来目的であるはずのデジタル化自体が目的になってしまい、競合が取り組んでいるからといった理由で、自社にマッチしない大掛かりなデジタル化をすすめてしまうケースが少なくありません。
もし大規模なシステム開発をせずに効率化を実現できるのならそれがベストであり、そもそも業務は必要か、効率化のインパクトは大きいか、SaaSの導入で解決できないか、アジャイルな進め方で小規模なPoCで仮説を検証する余地はないか、などより幅広い視点で検討をするようにしましょう。
DXの実行フェーズになっても、デジタルへの知見はもちろんですが、全社単位での経営の視点や戦略思考が必要になります。
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- 自社がデジタルを活用してどんなことができるか知りたい
- DXをどのように進めれば良いか分からない
- 自社にデジタル活用の経験や知識のある人がおらず困っている