DX推進の費用対効果を高める5つのポイント|算出方法も紹介
DX推進に必要となる費用として、ITツールの導入費用、チーム体制の構築にかかる費用、開発費用、人材育成・採用にかかる費用などが挙げられます。そのため、DXを成功させるためには、いかに費用対効果を最大化できるかにかかっています。
本記事では、DX推進の費用対効果を高めるために意識すべき5つのポイントについて、成功事例とともに分かりやすく解説していきます。
またDX総研では、DXを検討・推進する上で必ず押さえておきたい、DX成功事例50選の取り組みや成果をまとめたレポートを無料で配布しています。ご興味のある方は、以下リンクからダウンロードしてご活用ください。
目次
DX推進に必要となる費用とは?

DXの推進に当たっては、様々な費用がかかります。代表的なコスト要因として、以下の5つが挙げられます。
- ①ITツール・システムの導入・開発・メンテナンス
- ②人材の育成
- ③新規サービスの宣伝広告
- ④プロジェクトチームの立ち上げ
- ⑤外部コンサルや専門家の起用
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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①ITツール・システムの導入・開発・メンテナンス
DXを推進して業務を改革していくためには、ITツールやシステムの導入が不可欠です。そのため、これらのITツールやシステムの導入や開発・メンテナンスの費用を負担しなければなりません。
また、これらのITツールは通常、クラウドを経由して必要な分だけ利用するというパターンが一般的となっています。そのため、クラウドサービスの利用にかかる費用も考慮しなければなりません。
なお、クラウドではなく、サーバーやネットワークをすべて自社で賄うオンプレミス型を採用する場合、サーバーやネットワーク機器の導入費用やメンテナンスコストを負担する必要があります。
②人材の育成
DXを推進していくためには、プロジェクトを主導していくDX人材の存在が不可欠です。DX人材は、単にITに詳しいだけでなく、DX推進に向けてチームを引っ張っていくリーダーシップや、他の部署と連携・協力していくコミュニケーションスキルなど、様々な能力が求められます。
経済産業省の調査によると、デジタル人材は、2030年にかけて40〜80万人規模で不足すると予想されています。そのため、DX人材を確保するためには、外部から採用するだけでなく、社内の従業員を育成することが不可欠です。
そのため、DX人材育成のための研修や勉強会にかかる費用や外部の研修サービスを利用する費用などを負担しなければなりません。
③新規サービスの宣伝広告
DXにより、既存サービスを一新し、新たなサービスを立ち上げたり、今までにない提供価値を届けることが可能となります。Netflixが、宅配型のレンタルDVD事業から、サブスクリプション型の動画配信ストリーミングサービスへと、ビジネスモデルを変革したのはその好例です。
新規サービスのリリースに当たっては、その宣伝・PRのための広告費用が必要となる場合も多いでしょう。
④プロジェクトチームの立ち上げ
DXを推進していくためには、専門のプロジェクトチームを立ち上げることが必要となります。チームの立ち上げに当たっては、人材やリソースの確保や組織体制の変更が必要となり、様々な費用が発生します。
⑤外部コンサルや専門家の起用
社内に、DXを推進するための十分な人材がいない場合には、外部のコンサルティング会社に相談したり、専門家を新たに雇い入れる必要があります。
そのため、コンサルティング会社に支払うフィーや専門家を採用する費用などがかかります。
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DX推進により得られる5つの効果とは?

DXを推進することで、企業は様々な効果・メリットを得ることができます。代表的なメリットとして、以下のようなものが挙げられます。
- ①業務効率化やコスト削減
- ②データ活用による企業の競争力向上
- ③新たなサービスやビジネスモデルの創出
- ④働き方改革の推進
- ⑤事業停止のリスクの回避(BCPの充実)
それぞれについて分かりやすく解説していきます。
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①業務効率化やコスト削減を実現できる
DXを推進し、手作業で行っていた各業務のデジタル化を進めることで、業務効率化やコスト削減を実現できます。
例えば、書類で管理していたデータをクラウド上で一元管理したり、RPAの導入によりデスクワークの一部を自動化したりといった取り組みが挙げられます。
これらの取り組みにより、作業時間の短縮やヒューマンエラーの防止、作業人員の縮小などの成果が期待できます。
また、個別作業のデジタル化だけでなく、デジタル活用を前提とした、既存の業務プロセス全体の見直し・カイゼンを行うことで、より大きな成果を上げることが可能です。
②データ活用により企業の競争力を高められる
DX推進により、より多くのデータを収集したり、蓄積しているデータを有効活用することで、企業の競争力を高めることができます。
例えば、購入前〜購入後までの一連の顧客接点のデジタル化を進めることで、より広範囲な顧客情報や消費行動データを収集したり、これまで社内の各チームでバラバラに管理していたデータを、一元管理できるシステムを構築するなどの取り組みが挙げられます。
これらの取り組みにより、よりパーソナライズされた商品提案やプロモーション施策を実施したり、より詳細なデータを活用し、精度の高い戦略や企画の立案を行ったりすることが可能になり、競合との差別化を図ることができます。
③新たなサービスやビジネスモデルを創出できる
DXを推進し、既存業務のデジタル化を進めることは、新たなサービスやビジネスモデルの創出に繋がります。
既存業務のデジタル化に取り組む過程で、詳細な顧客データやより効率的なオペレーション、先端技術活用のノウハウなどを得ることができます。
それらを、新たなサービスの企画や構築に活用することで、既存事業の延長線上にはない、新たな顧客体験・提供価値を実現することに繋がります。
デジタルをベースとした新規性の高いサービスやビジネスモデルの創出により、競合との差別化や収益性の向上を図ることができます。
④働き方改革を推進できる
DXを推進し、デジタル活用により業務効率化を進めることで、働き方改革を推進することができます。
DXによる業務効率化は、従業員の長時間労働の削減に直結します。また、業務プロセスのデジタル化やコミュニケーションツールの導入などにより、リモートワークがしやすい環境を整備することで、柔軟な働き方を実現することにも繋がります。
これらの取り組みにより、より働きやすい環境を整え、従業員の負担/ストレスの軽減、モチベーションの向上が期待できます。また、捻出した時間をより付加価値の高い事業や業務に集中させ生産性を向上させることも可能です。
⑤事業停止のリスクを回避できる(BCPの充実)
DXに取り組むことで、BCP(Business Continuity Plan=事業継続計画)の充実に繋がり、緊急時の事業停止のリスクを回避できるというメリットもあります。BCPとは、災害や感染症の流行、システム障害などの緊急事態が発生した際の対策の計画のことを指します。
例えば、リモートワークを推進することで災害や感染症の流行時にも大きな支障なく業務を進められる、レガシーシステムを脱却することでシステム障害が発生し復旧にも時間がかかるといったリスクを避けられるといったメリットがあります。
このようなBCPの充実は、取引先や株主からの信頼性の向上や企業価値向上にも繋がります。
DXにおける費用対効果の算出方法|具体的な3つのステップ

費用対効果とは、投入したコスト(費用)に対して得られた成果(効果)がどれだけあるかを評価する指標のことです。例えば、ある施策に投下した費用が、その結果として得られた利益や成果と比較して妥当であるか、効率的であるかを判断するために用いられます。
DXにおける費用対効果を算出する方法は、大きく以下の3つのステップに分けられます。
- Step 1:コストの計算
- Step 2:成果の定量化
- Step 3:費用対効果の計算
それぞれのステップについて、わかりやすく解説していきます。
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Step 1:コストの計算
費用対効果を算出するにあたっては、まずは費用・コストの部分を見積もる必要があります。
DXにかかるコストとしては、ITツールの導入費用、システム開発費用、メンテナンス費用、人件費等が挙げられます。当然ながらDXの取り組み内容や自社の業務/業態・IT環境によってかかるコストは変わるため、個別具体的な検討が必要となります。
それぞれの費用の相場については、以下の記事でわかりやすく解説しています。
⇒DXにかかる予算はどれくらい?相場・注意点・補助金7選も紹介
Step 2:成果の定量化
DXの推進によって得られた成果を定量化することで、費用対効果の「効果」の部分を算出します。
例えば、ペーパーレス化により紙代や印刷代などのコスト削減を実現した場合には、その削減分が成果となります。また、新規サービスを創出して、それにより売上げが上がった場合には、それが成果となるでしょう。
さらに、成果は金銭的なものに限られません。RPA等のツール導入により業務時間を短縮したり、働き方改革により従業員の離職率が低下した場合には、これも成果として考慮することができます。その際には、これらの効果により見込まれる利益を概算で見積もることになります。
Step 3:費用対効果の計算
最後に、効果を費用で割ることで費用対効果を計算します。例えば、100万円を透過してAIを導入し、AIによるデータ分析を活用したマーケティングを実施したことで、売上が200万円増加した場合、費用対効果は、2倍となります。
効果を費用で割った値が大きくなるほど、高い費用対効果を実現できていることを意味します。
DXの費用対効果を高めるための5つのポイント

DXの費用対効果を高め、成功に導くためのポイントとして、以下の5つが挙げられます。
- ①リーダーのコミットメントにより社内を巻き込む
- ②自社ならではのDX戦略を策定する
- ③十分なDX人材を確保する
- ④スモールスタートクイックウィンを実現する
- ⑤ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する
それぞれのポイントについて分かりやすく紹介していきます。
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①リーダーのコミットメントにより社内を巻き込む
DXは、個別業務のデジタル化だけでなく、全社規模の業務やビジネスモデル、組織文化の変革など、会社のコアとなる部分を大きく変えていく取り組みです。
そのため、経営陣や事業部のリーダーが起点となり、DXのビジョン・方針を明確に示し、社内全体を強力に動かしていく必要があります。
具体的には、「どのような中長期的なDXのビジョンを描くのか」、「業務や顧客体験、ビジネスモデルをどのように変えていくのか」、そのために「どの程度人材や予算を割り当てていくのか」などに対して、大きな権限を持って意思決定をしていくことが求められます。
一方で、経営陣やリーダー陣がDXに対する危機意識が低い場合などは、DX推進部門や経営企画部門などが主導し、リーダー陣を含め、DXに関する社内向けの勉強会/ワークショップを実施することも有効です。
②自社ならではのDX戦略を策定する

あらゆる人・モノ・コトがインターネットと繋がる現代で、人々の生活や業務、ビジネスの主戦場は、リアルの世界からデジタルの世界に加速度的にシフトし続けています。
その変化を踏まえ、いかにデジタルを活用し競争優位性を築いていくかは、全ての企業の経営戦略を考える上で必須のテーマとなっており、DX戦略を考えること=経営戦略を考えること、と言っても過言ではありません。
そのため、DX戦略を策定する際は、特定の事業部/部門×個別の業務×デジタル化という範囲で考えたり、同業他社が進めている取り組みをベースにして考えるといった、個別具体的なアプローチではなく、より中長期や全体のアプローチから、全社のビジョンや経営戦略、テクノロジートレンドや業界への影響などと連動させて考える必要があります。
③十分なDX人材を確保する
DXの成功に向けては、テクノロジーと経営戦略に対して深い知見を持つプロジェクトマネージャーや、専門的なスキルを有するエンジニア、デザイナーなどのDX人材を十分に確保することが必須となります。
本来であれば、既にDX人材が社内にいればよいのですが、ほとんどの日本企業で人材が不足しているという現状があります。
また、市場全体として人手不足で、DX人材の争奪戦となっており、採用も思うようには進められないというケースも多く見られます。
そのため、足元のDX推進にむけては、経営課題とデジタルの両方に精通した外部のエキスパートを活用しながら、中長期目線では実践や研修を通じた人材育成をしていくといったアプローチが有効です。
④スモールスタートクイックウィンを実現する

DXがなかなか進まない理由として、業務や組織を大胆に変えていくことが必要な一方で、全社規模の大きな成果が上がるまでには5年程度を有するという点があります。
そのため、取り組みの方向性が正しくても、短期間では成果が見えにくいことから、部門間の軋轢や現場からの反発が生まれ、変革のスピードが落ちてしまうケースが少なくありません。
そこで、全社単位でのインパクトは小さくとも、比較的短期で成果が出る取り組みを進め、その成果を社内外に発信し巻き込んでいくことは非常に有効です。
取り組みの例としては、アナログデータのデジタル化や各種データの一元管理化、業務自動化ツールの導入などが挙げられます。
これらの取り組みにより小さな成功を積み重ね、他部門のリーダー陣や現場の社員のマインドが徐々に変わっていくことで、連鎖的に大規模なDXを推進しやすい状況を実現できます。
⑤ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する

業務の現状や課題を踏まえて設定したゴールに向けて、最適かつ低コストなアプローチ設計をすることは、DXの投資対効果を飛躍的に高めます。
そもそものDXの目的は、業務を効率化することや顧客により良い製品/サービスを届けることです。
一方で、「DXプロジェクトをやるぞ!」となると、本来目的であるはずのデジタル化自体が目的になってしまい、競合が取り組んでいるからといった理由で、自社にマッチしない大掛かりなデジタル化をすすめてしまうケースが少なくありません。
もし大規模なシステム開発をせずに効率化を実現できるのならそれがベストであり、そもそも業務は必要か、効率化のインパクトは大きいか、SaaSの導入で解決できないか、アジャイルな進め方で小規模なPoCで仮説を検証する余地はないか、などより幅広い視点で検討をするようにしましょう。
DXの実行フェーズになっても、デジタルへの知見はもちろんですが、全社単位での経営の視点や戦略思考が必要になります。
DXをコスパ良く進める方法|具体的な6つのステップ

DXをコスパ良く進める方法は、大きく6つのステップに分けられます。
それぞれのステップについてわかりやすく解説していきます。
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ステップ1:DXの目的・ビジョンを明確化する

DX推進の最初のステップとして、DXの目的・ビジョンを明確化しましょう。
「DX推進後の理想の自社の姿」を明確に設定することで、その後の取り組み内容や優先度、進め方などを決定する軸とすることができ、ブレることなくプロジェクトを推進できます。
本ステップの検討には経済産業省の「DXレポート2.1」のフレームワークが役に立ちます。
自社の業務、製品/サービス、ビジネスモデルのそれぞれが、どの程度までデジタル化された状態を理想とするかを、市場環境や自社の特性を踏まえ、検討しましょう。
例えば、業務のデジタル化すら進んでいない企業であれば、3年後までにまずは業務のデジタライゼーションを目指す。一方で、業務のデジタル化が進んでいる企業であれば、3年後までに製品/サービスやビジネスモデルのデジタルトランスフォーメーションを目指す。といったビジョンの設定が考えられます。
ステップ2:自社の現状と課題を把握する

続いて、自社が現状どの程度DXを推進できているのか、ビジョンの実現に向け何が課題なのかを把握しましょう。
本ステップの検討には、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「DX推進指標」を活用することで、企業文化、推進体制、人材育成など、多角的な観点から評価を行うことができます。
それぞれの観点における自社の成熟度のレベルを把握することで、特にDX推進が遅れているポイントを明確にすることができ、その後の戦略や計画の策定に活かすことが可能です。
ステップ3:DXに関する戦略と計画を策定する

前ステップで策定したビジョンと自社の現状・課題に基づき、DXに関する戦略・計画を策定しましょう。
検討すべき項目は上記画像のように多岐に渡りますが、特に重要なのは、「戦略=デジタル化の優先度付け」です。
デジタル化の対象や取り組み内容の候補は極めて幅広いため、バラバラと取り組みを進めてしまうことでリソースが分散し、思うような成果が上がらないというケースは少なくありません。
そのため、取り組みの候補を幅出し・整理した上で、DXを推進しやすくインパクトも期待できる取り組みから着手し、その後難易度が高くよりインパクトの期待できる取り組みにシフトしていくといった進め方が有効となります。
例えば、受発注のやりとりに関する膨大な作業の効率化を重点課題とした企業であれば、まずは資料のペーパーレス化や判子の電子印化を進めた上で、その後一連の受発注プロセスをデジタル活用により自動化するといった進め方が考えられます。
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ステップ4:DX推進チームを構築する

DXを推進するには、ビジョンや戦略を社員に周知し、現場からの課題を吸い上げながら、各部門と連携・調整し、実行支援も行う、DX推進専門のチームが必要になります。
そのため、DX推進チームのメンバーには特に、デジタルへの知見、コミュニケーション能力、業務の知見などのスキルが求められます。
また、DX人材の具体的な職種の例は以下の通りです。
- プロジェクトマネージャー:DXやデジタルビジネス構築を主導するリーダー
- テックリード:システム設計や要件定義を担当し、開発を主導
- UI/UXデザイナー:DXやデジタルビジネスのユーザー向けのデザインを担当
- エンジニア:デジタルシステムの実装・インフラ構築を担当
- データサイエンティスト:事業・業務に精通しデータの収集・分析を担当
これらのDX人材の確保には、外部ベンダー等の人材を活用する方法と、社員に対するDX人材育成を実施する方法があります。
DX推進のスケジュールや、社員のDXスキルの有無、既存業務を含めたリソースの有無などを考慮し、自社に最適な方法を選択しましょう。
ステップ5:デジタル化により業務効率を向上させる
これまでに策定したビジョン・戦略・計画に基づき、実際に業務効率化に向けたデジタル化を推進していきましょう。
ここで、いきなり全社単位や部門横断の大規模なDXに着手してしまうと、デジタル化の難易度が高く、成果が出るまで長期間を要し、コストも膨大になってしまいます。
そこで、デジタイゼーション(書類で管理していたデータをクラウド上で一元管理する等)やデジタライゼーション(RPAの導入によりデスクワークの一部を自動化する等)など着実に成果の上がる取り組みを、特定の事業部や部門単位から進めるのがおすすめです。
前のステップまでは比較的トップダウン的な取り組みですが、本ステップからはいかに現場の各社員と深く対話し、小さな成功を積み重ねるというボトムアップ的な取り組みが重要です。
これにより、多くの人材から共感と信頼を勝ち取り、DX推進に巻き込んでいくことで、より大規模なDXの推進が可能になります。
ステップ6:PDCAを回し、ビジネスモデル変革まで繋げる

業務のデジタル化を進めることで、企業は今まで見えていなかった業務や顧客に関する様々なデータを収集・蓄積・可視化できるようになります。
これらのデータを分析し、新たな業務の課題やビジネスチャンスを発見し、取り組みを改善するというPDCAサイクルを、数ヶ月単位で何度も回すことで、大きな成果を上げることが可能です。
さらに、PDCAサイクルを回し続けることで、自社独自の詳細な顧客データやより効率的なオペレーション、先端技術活用のノウハウなどの強みが蓄積されていきます。この強み蓄積こそが、他社には真似できない、ユニークな新サービスやビジネスモデルの創出の源泉となります。
費用対効果に優れたDXの成功事例5選
費用対効果に優れた大手企業によるDX成功事例の中から、特に注目すべき5社の取り組みをご紹介します。
- ①【ダイキン】空調機の効率的な稼働を実現するIoTシステムの構築
- ②【アシックス】デジタル上の顧客接点を強化しEC/D2C売上比率を大幅に向上
- ③【LIXIL】接客等のDXを進め業務効率化と顧客体験向上を同時に実現
- ④【コマツ】IoT・AIを搭載したスマート建機ソリューションの提供
- ⑤【丸井グループ】百貨店×フィンテックにより売上の多角化を実現
それぞれの事例についてわかりやすく紹介していきます。
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①【ダイキン】空調機の効率的な稼働を実現するIoTシステムの構築

ダイキン工業は、空調機や化学製品の製造を手掛ける大阪に本拠を置く世界的なメーカーです。同社は、2021年より「オールコネクテッド戦略」というプロジェクトを開始し、IoTにより空調機をクラウド環境に接続して一括管理を可能にし、業務やエネルギー消費の効率化を実現しています。
【課題・背景】
- オフィス空調設備のエネルギー消費量を最適化し、コスト削減と環境負荷の低減を目指す顧客企業のニーズが増加していた
- 多くの顧客企業が、設備管理者の人手不足に伴い、オフィス空調設備の運用・制御を効率化する必要性に迫られていた
【具体的な取り組み】
- 空調設備をインターネットでつなぐ「オールコネクテッド戦略」というプロジェクトを開始
- 各拠点の空調設備をつなぐクラウド型の空調コントロールシステム「DK-CONNECT」の構築
【得られた成果】
- 100万台以上のエアコンの接続と分単位のデータ取集・リアルタイム制御を実現
- スマホやタブレットから空調設備の監視・運用が可能となり、オフィスを巡回する手間をカット、業務時間の短縮を実現
- 部屋単位で空調を制御したり、人数に応じて自動で設定温度を調整するなど、空調設備の運用最適化によるエネルギー消費量の削減
②【アシックス】デジタル上の顧客接点を強化しEC/D2C売上比率を大幅に向上

アシックスは、スポーツ用のシューズやウェアなどを製造・販売する日本を代表するスポーツ用品メーカーです。同社は、ランナー向けのスマホアプリなどを通じてデジタル上での顧客との直接の繋がり強化を進めることで、販売に占めるEC/D2C比率を高め、収益率の向上を実現しています。
【課題・背景】
- コロナをきっかけとする買い物のオンラインシフトに伴い、ECやD2Cでの販売比率を向上させ、売上げ拡大を図る必要に迫られていた
- アシックスの売上のうちECでの比率はわずか数%であり、EC比率拡大に向けた施策が喫緊の課題となっていた
【具体的な取り組み】
- ECサイトと連動し、限定クーポン等が貰えるロイヤリティプログラム「OneASICS」を展開し顧客接点を強化
- ランニングの記録と仲間とのシェアができるスマホアプリ「アシックスランキーパー」を提供し購入後の顧客との接点も獲得
- 購入後を含めた顧客データを活用し、各顧客の身体にフィットした商品を提案
【得られた成果】
- 卸売中心で顧客接点が限定的だったが、デジタル顧客基盤が1,000万人超へ
- 購入後も含めた多様な顧客接点の獲得により、ファン化を促進しLTVも向上
- 課題としていたEC売上比率が5%から18%へ、D2C比率が17%から33%へ向上
③【LIXIL】接客等のDXを進め業務効率化と顧客体験向上を同時に実現

LIXILは、建築材料や住宅設備機器などを製造・販売する日本を代表するメーカーの一つです。同社は、製品設計から接客まであらゆる販売プロセスにAIやIoTなどのデジタル技術を取り入れて、業務効率化と顧客体験(CX)の向上を同時に実現しました。
【課題・背景】
- コロナをきっかけとするECの普及に伴い、オンラインでの顧客接点・販売チャネルの確保の必要性に迫られていた
【具体的な取り組み】
- LIXILの製品を購入したい企業に対して、自宅から接客を受けられるサービス「LIXILオンラインショールーム」の提供
- AIが顧客の希望に寄り添った見積りプランを提示する「かんたんプラン選び」の提供
【得られた成果】
- 忙しい人でも気軽に製品購入に関する相談や見積りの取得が可能となり、累計相談数15万組突破、顧客満足度93%を達成
- 時間を選ばず利用できるサービスとして「日本子育て支援大賞2023」を受賞
④【コマツ】IoT・AIを搭載したスマート建機ソリューションの提供

コマツは、ショベルやブルドーザーなどの建設機械や鉱山機械の製造を手掛ける日本の大手建設メーカーです。同社は、IoTやAIなどのデジタル技術を建設機械や産業機械に搭載した新たなソリューションを開発・提供し、製造業界や建設業界におけるモノづくりの現場のDXを支援しています。
【課題・背景】
- 建設業界の人手不足に伴う、現場作業の効率化・省人化のためのソリューションを求める顧客企業がますます増えていた
【具体的な取り組み】
- 建設・製造業界の企業に対して、遠隔地から機械の稼働状況を確認できるIoTを活用した管理システム「Komtrax」の開発・提供
- 建設・製造業界の企業に対して、AIが部品の劣化状態を把握し、故障前に交換時期を予測する予知保全システムの提供
- 建設業界の企業に対して、センサーを搭載し、自動制御を可能にしたICT建機の製造・販売
【得られた成果】
- 機械の稼働状況の一元管理が可能となり、稼働率の向上、メンテナンス時期の把握、生産量集計の自動化などによる顧客の現場作業の効率化・生産性向上を実現
- ある企業は、Komtraxにより、設備の稼働率が向上し、生産性が140%も増加するなど大幅な改善を実現
- 遠隔地から顧客の機械の稼働状況や部品の劣化状態の把握が可能となり、効率的かつ適切な修理・保全サービスの提案が可能に
⑤【丸井グループ】百貨店×フィンテックにより売上の多角化を実現

日本を代表するデパート「丸井」を運営する丸井グループは、DXを推進することで、金融サービスの提供など小売の周辺領域にもビジネスの幅を拡大しています。オンラインとオフラインを上手に統合し、実店舗・EC両方での売上拡大とクレジットカード発行による収益の拡大を同時に実現しています。
【課題・背景】
- ECの加速に対応すべく、販売チャネルを多角化するとともに、フィンテック等の周辺領域にも参入して収益基盤を拡大したい
【具体的な取り組み】
- フィンテック事業に参入。低収入の若年層にも低限度額でクレジットカードを発行
- ITの活用により独自の与信システムを確立
【得られた成果】
- 5年間でカード会員数が23倍に増加し、2021年3月時点で709万人・取扱高2兆円超に到達
- 利用と支払を繰り返すことで顧客の信用が創造される仕組みを構築し、会員一人当たりのLTVが2~4倍の増加を達成
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- 自社がデジタルを活用してどんなことができるか知りたい
- DXをどのように進めれば良いか分からない
- 自社にデジタル活用の経験や知識のある人がおらず困っている