DX推進の6つのレベルとは?DX推進指標での自己診断方法も紹介
経済産業省は、企業によるDXの推進レベルに関する基準である「DX推進指標」を定めています。これによると、企業のDX推進レベルは、成熟度に応じて6段階にわかれるとのことです。
さらに、情報処理推進機構(IPA)は、DX推進指標に基づき、企業が自社のDX推進レベルを把握できるような自己診断ツールを提供しています。
本記事では、自社のDX推進レベルが気になっている方に向けて、経済産業省が定めるDX推進の6つのレベル、自社のレベルを診断する方法、レベルアップのために意識すべきポイントなどを分かりやすく解説していきます。
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目次
DXのレベルを示したDX推進指標とは?
経済産業省が策定した「DX推進指標」は、日本企業がDXを効果的に進めるために、自社の現状レベルを評価し、課題を明確にするためのガイドラインです。これにより、企業はDXの取り組みを計画的に進め、競争力を強化することを目指します。
DX推進指標の特徴は以下の通りです。
- 自己診断ツールとしての役割:企業がDX推進において、どの程度取り組みが進んでいるかを客観的に評価できる指標を提供。この指標を使って、企業は自社の強みと弱みを把握し、改善点を見つけることが可能
- 4つの主要領域:「戦略・経営ビジョン」「組織・人材」「テクノロジー・データ」「業務プロセス」の4つの領域に分かれ、それぞれの領域で具体的な評価項目が設定されている
- レベルごとの評価:各項目について初期段階から先進的な取り組みまでの段階が設定されており、自社がどのレベルに位置するかを確認できる
この指標を活用することで、企業はDXの成功に向けた具体的な計画を立てやすくなり、業務効率の向上、新しいビジネスモデルの構築、顧客価値の創出などを目指すことができます。
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DX推進指標が示すDXの6つのレベル
DX推進指標では、企業のDX推進の成熟度レベルを評価する指標として、以下の通り、6つのレベルを設けています。
成熟度レベル | 特性 | |
---|---|---|
レベル0 | 未着手 | 経営者は無関心か、関心があっても具体的な取組に至っていない |
レベル1 | 一部での散発的実施 | 全社戦略が明確でない中、部門単位での試行・実施にとどまっている |
レベル2 | 一部での戦略的実施 | 全社戦略に基づく一部の部門での推進 |
レベル3 | 全社戦略に基づく部門横断的推進 | 全社戦略に基づく部門横断的推進 |
レベル4 | 全社戦略に基づく持続的実施 | 定量的な指標などによる持続的な実施 |
レベル5 | グローバル市場におけるデジタル企業 | デジタル企業として、グローバル競争を勝ち抜くことのできるレベル |
上記のレベルのうち、自社がどの位置にあるか、次にどのレベルを目指すのかを認識することで、適切なアクションにつなげることが期待できます。
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自社のDXレベルを自己診断する3つのステップ

情報処理推進機構(IPA)は、DX推進指標に基づき、各企業が自社のDX推進レベルを自己診断することができるツールを提供しています。IPAによる自己診断ツールに基づき、自社のDXレベルを自己診断するステップは以下の通りです。
- ステップ1:DX推進指標に基づき自己診断を行う
- ステップ2:自己診断結果を提出する
- ステップ3:ベンチマークレポートを受け取る
それぞれについてわかりやすく解説していきます。
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ステップ1:DX推進指標に基づき自己診断を行う
まず、IPAが公開している専用の自己診断フォーマットをダウンロードし、DX推進指標に基づいて自己診断を行います。
経営陣や事業部、DX推進部門など関係者が集まったうえで、議論しながらフォーマットに記入していきましょう。
ステップ2:自己診断結果を提出する
自己診断が完了したら、Web申請システムであるDX推進ポータルにアクセスし、記入済みの自己診断フォーマットを提出します。
ステップ3:ベンチマークレポートを受け取る
自己診断フォーマットを提出したら、ベンチマークレポートを受け取ることができます。このレポートには、各社の取り組み状況を踏まえ、参考になる先行事例が掲載されており、今後の取り組み方針を検討する上で参考にすることができます。
また、IPAは、各企業から収集した自己診断の結果を分析し、その結果をレポートとしてまとめています。このレポートの結果と自社の診断結果を照らし合わせて、自社に足りない部分は何かを検討していきましょう。
次のレベルに到達するために意識すべき5つのポイント

DXの成熟度において、次のレベルに到達するために意識すべきポイントとして、以下の5つが挙げられます。
- ①リーダーのコミットメントにより社内を巻き込む
- ②自社ならではのDX戦略を策定する
- ③十分なDX人材を確保する
- ④スモールスタートクイックウィンを実現する
- ⑤ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する
それぞれのポイントについて分かりやすく紹介していきます。
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①リーダーのコミットメントにより社内を巻き込む
DXは、個別業務のデジタル化だけでなく、全社規模の業務やビジネスモデル、組織文化の変革など、会社のコアとなる部分を大きく変えていく取り組みです。
そのため、経営陣や事業部のリーダーが起点となり、DXのビジョン・方針を明確に示し、社内全体を強力に動かしていく必要があります。
具体的には、「どのような中長期的なDXのビジョンを描くのか」、「業務や顧客体験、ビジネスモデルをどのように変えていくのか」、そのために「どの程度人材や予算を割り当てていくのか」などに対して、大きな権限を持って意思決定をしていくことが求められます。
一方で、経営陣やリーダー陣がDXに対する危機意識が低い場合などは、DX推進部門や経営企画部門などが主導し、リーダー陣を含め、DXに関する社内向けの勉強会/ワークショップを実施することも有効です。
②自社ならではのDX戦略を策定する

あらゆる人・モノ・コトがインターネットと繋がる現代で、人々の生活や業務、ビジネスの主戦場は、リアルの世界からデジタルの世界に加速度的にシフトし続けています。
その変化を踏まえ、いかにデジタルを活用し競争優位性を築いていくかは、全ての企業の経営戦略を考える上で必須のテーマとなっており、DX戦略を考えること=経営戦略を考えること、と言っても過言ではありません。
そのため、DX戦略を策定する際は、特定の事業部/部門×個別の業務×デジタル化という範囲で考えたり、同業他社が進めている取り組みをベースにして考えるといった、個別具体的なアプローチではなく、より中長期や全体のアプローチから、全社のビジョンや経営戦略、テクノロジートレンドや業界への影響などと連動させて考える必要があります。
③十分なDX人材を確保する
DXの成功に向けては、テクノロジーと経営戦略に対して深い知見を持つプロジェクトマネージャーや、専門的なスキルを有するエンジニア、デザイナーなどのDX人材を十分に確保することが必須となります。
本来であれば、既にDX人材が社内にいればよいのですが、ほとんどの日本企業で人材が不足しているという現状があります。
また、市場全体として人手不足で、DX人材の争奪戦となっており、採用も思うようには進められないというケースも多く見られます。
そのため、足元のDX推進にむけては、経営課題とデジタルの両方に精通した外部のエキスパートを活用しながら、中長期目線では実践や研修を通じた人材育成をしていくといったアプローチが有効です。
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④スモールスタートクイックウィンを実現する

DXがなかなか進まない理由として、業務や組織を大胆に変えていくことが必要な一方で、全社規模の大きな成果が上がるまでには5年程度を有するという点があります。
そのため、取り組みの方向性が正しくても、短期間では成果が見えにくいことから、部門間の軋轢や現場からの反発が生まれ、変革のスピードが落ちてしまうケースが少なくありません。
そこで、全社単位でのインパクトは小さくとも、比較的短期で成果が出る取り組みを進め、その成果を社内外に発信し巻き込んでいくことは非常に有効です。
取り組みの例としては、アナログデータのデジタル化や各種データの一元管理化、業務自動化ツールの導入などが挙げられます。
これらの取り組みにより小さな成功を積み重ね、他部門のリーダー陣や現場の社員のマインドが徐々に変わっていくことで、連鎖的に大規模なDXを推進しやすい状況を実現できます。
⑤ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する

業務の現状や課題を踏まえて設定したゴールに向けて、最適かつ低コストなアプローチ設計をすることは、DXの投資対効果を飛躍的に高めます。
そもそものDXの目的は、業務を効率化することや顧客により良い製品/サービスを届けることです。
一方で、「DXプロジェクトをやるぞ!」となると、本来目的であるはずのデジタル化自体が目的になってしまい、競合が取り組んでいるからといった理由で、自社にマッチしない大掛かりなデジタル化をすすめてしまうケースが少なくありません。
もし大規模なシステム開発をせずに効率化を実現できるのならそれがベストであり、そもそも業務は必要か、効率化のインパクトは大きいか、SaaSの導入で解決できないか、アジャイルな進め方で小規模なPoCで仮説を検証する余地はないか、などより幅広い視点で検討をするようにしましょう。
DXの実行フェーズになっても、デジタルへの知見はもちろんですが、全社単位での経営の視点や戦略思考が必要になります。
日本企業におけるDXの成功事例5選
経済産業省によりDXグランプリ企業として表彰された、DX成功事例の中から、特に注目すべき5社の取り組みをご紹介します。
- ①【ダイキン】空調機の効率的な稼働を実現するIoTシステムの構築
- ②【アシックス】デジタル上の顧客接点を強化しEC/D2C売上比率を大幅に向上
- ③【LIXIL】接客等のDXを進め業務効率化と顧客体験向上を同時に実現
- ④【コマツ】IoT・AIを搭載したスマート建機ソリューションの提供
- ⑤【丸井グループ】百貨店×フィンテックにより売上の多角化を実現
それぞれの事例についてわかりやすく紹介していきます。
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①【ダイキン】空調機の効率的な稼働を実現するIoTシステムの構築

ダイキン工業は、空調機や化学製品の製造を手掛ける大阪に本拠を置く世界的なメーカーです。同社は、2021年より「オールコネクテッド戦略」というプロジェクトを開始し、IoTにより空調機をクラウド環境に接続して一括管理を可能にし、業務やエネルギー消費の効率化を実現しています。
【課題・背景】
- オフィス空調設備のエネルギー消費量を最適化し、コスト削減と環境負荷の低減を目指す顧客企業のニーズが増加していた
- 多くの顧客企業が、設備管理者の人手不足に伴い、オフィス空調設備の運用・制御を効率化する必要性に迫られていた
【具体的な取り組み】
- 空調設備をインターネットでつなぐ「オールコネクテッド戦略」というプロジェクトを開始
- 各拠点の空調設備をつなぐクラウド型の空調コントロールシステム「DK-CONNECT」の構築
【得られた成果】
- 100万台以上のエアコンの接続と分単位のデータ取集・リアルタイム制御を実現
- スマホやタブレットから空調設備の監視・運用が可能となり、オフィスを巡回する手間をカット、業務時間の短縮を実現
- 部屋単位で空調を制御したり、人数に応じて自動で設定温度を調整するなど、空調設備の運用最適化によるエネルギー消費量の削減
②【アシックス】デジタル上の顧客接点を強化しEC/D2C売上比率を大幅に向上

アシックスは、スポーツ用のシューズやウェアなどを製造・販売する日本を代表するスポーツ用品メーカーです。同社は、ランナー向けのスマホアプリなどを通じてデジタル上での顧客との直接の繋がり強化を進めることで、販売に占めるEC/D2C比率を高め、収益率の向上を実現しています。
【課題・背景】
- コロナをきっかけとする買い物のオンラインシフトに伴い、ECやD2Cでの販売比率を向上させ、売上げ拡大を図る必要に迫られていた
- アシックスの売上のうちECでの比率はわずか数%であり、EC比率拡大に向けた施策が喫緊の課題となっていた
【具体的な取り組み】
- ECサイトと連動し、限定クーポン等が貰えるロイヤリティプログラム「OneASICS」を展開し顧客接点を強化
- ランニングの記録と仲間とのシェアができるスマホアプリ「アシックスランキーパー」を提供し購入後の顧客との接点も獲得
- 購入後を含めた顧客データを活用し、各顧客の身体にフィットした商品を提案
【得られた成果】
- 卸売中心で顧客接点が限定的だったが、デジタル顧客基盤が1,000万人超へ
- 購入後も含めた多様な顧客接点の獲得により、ファン化を促進しLTVも向上
- 課題としていたEC売上比率が5%から18%へ、D2C比率が17%から33%へ向上
③【LIXIL】接客等のDXを進め業務効率化と顧客体験向上を同時に実現

LIXILは、建築材料や住宅設備機器などを製造・販売する日本を代表するメーカーの一つです。同社は、製品設計から接客まであらゆる販売プロセスにAIやIoTなどのデジタル技術を取り入れて、業務効率化と顧客体験(CX)の向上を同時に実現しました。
【課題・背景】
- コロナをきっかけとするECの普及に伴い、オンラインでの顧客接点・販売チャネルの確保の必要性に迫られていた
【具体的な取り組み】
- LIXILの製品を購入したい企業に対して、自宅から接客を受けられるサービス「LIXILオンラインショールーム」の提供
- AIが顧客の希望に寄り添った見積りプランを提示する「かんたんプラン選び」の提供
【得られた成果】
- 忙しい人でも気軽に製品購入に関する相談や見積りの取得が可能となり、累計相談数15万組突破、顧客満足度93%を達成
- 時間を選ばず利用できるサービスとして「日本子育て支援大賞2023」を受賞
④【コマツ】IoT・AIを搭載したスマート建機ソリューションの提供

コマツは、ショベルやブルドーザーなどの建設機械や鉱山機械の製造を手掛ける日本の大手建設メーカーです。同社は、IoTやAIなどのデジタル技術を建設機械や産業機械に搭載した新たなソリューションを開発・提供し、製造業界や建設業界におけるモノづくりの現場のDXを支援しています。
【課題・背景】
- 建設業界の人手不足に伴う、現場作業の効率化・省人化のためのソリューションを求める顧客企業がますます増えていた
【具体的な取り組み】
- 建設・製造業界の企業に対して、遠隔地から機械の稼働状況を確認できるIoTを活用した管理システム「Komtrax」の開発・提供
- 建設・製造業界の企業に対して、AIが部品の劣化状態を把握し、故障前に交換時期を予測する予知保全システムの提供
- 建設業界の企業に対して、センサーを搭載し、自動制御を可能にしたICT建機の製造・販売
【得られた成果】
- 機械の稼働状況の一元管理が可能となり、稼働率の向上、メンテナンス時期の把握、生産量集計の自動化などによる顧客の現場作業の効率化・生産性向上を実現
- ある企業は、Komtraxにより、設備の稼働率が向上し、生産性が140%も増加するなど大幅な改善を実現
- 遠隔地から顧客の機械の稼働状況や部品の劣化状態の把握が可能となり、効率的かつ適切な修理・保全サービスの提案が可能に
⑤【丸井グループ】百貨店×フィンテックにより売上の多角化を実現

日本を代表するデパート「丸井」を運営する丸井グループは、DXを推進することで、金融サービスの提供など小売の周辺領域にもビジネスの幅を拡大しています。オンラインとオフラインを上手に統合し、実店舗・EC両方での売上拡大とクレジットカード発行による収益の拡大を同時に実現しています。
【課題・背景】
- ECの加速に対応すべく、販売チャネルを多角化するとともに、フィンテック等の周辺領域にも参入して収益基盤を拡大したい
【具体的な取り組み】
- フィンテック事業に参入。低収入の若年層にも低限度額でクレジットカードを発行
- ITの活用により独自の与信システムを確立
【得られた成果】
- 5年間でカード会員数が23倍に増加し、2021年3月時点で709万人・取扱高2兆円超に到達
- 利用と支払を繰り返すことで顧客の信用が創造される仕組みを構築し、会員一人当たりのLTVが2~4倍の増加を達成
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- DXをどのように進めれば良いか分からない
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