DXリテラシーとは?必要な理由・高める5つの手順・注意点も紹介

DXリテラシーとは、DXを効果的に推進するための能力、すなわち、デジタル技術を活用して業務やビジネスモデルの変革を実現するために必要な知識やスキルを指します。

 

社員のDXリテラシーを高めることで、変化の激しい時代に対応できる柔軟かつ強固な組織体制を構築し、企業の競争力を維持・向上させることができるようになります。

 

本記事では、社員のDXリテラシーを向上させたい企業担当者の方に向けて、DXリテラシーが重要視されている理由、高める方法、注意点などを分かりやすく解説していきます。


またDX総研では、DXを検討・推進する上で必ず押さえておきたい、DX成功事例50選の取り組みや成果をまとめたレポートを無料で配布しています。ご興味のある方は、以下リンクからダウンロードしてご活用ください。

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目次

DXリテラシーとは?

DXリテラシーとは、DXを効果的に推進するための能力、すなわち、デジタル技術を活用して業務やビジネスモデルの変革を実現するために必要な知識やスキルを指します。

 

DXリテラシーには、クラウドやAIなどのデジタル技術に関する基本知識、データの活用能力、プロジェクトマネジメントスキル、コミュニケーションスキルなど、様々な要素が含まれます。

 

社員のDXリテラシーを高めることで、変化の激しい時代に対応できる柔軟かつ強固な組織体制を構築し、企業の競争力を維持・向上させることができるようになります。

 

DXリテラシーを高める方法としては、ITやデジタル技術に関する教育・研修プログラムを実施するほか、外部セミナーへの参加や小規模なDXプロジェクトの実践などが挙げられます。

 

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DXリテラシーとITリテラシーの違い

DXリテラシーとITリテラシーの違い

ITリテラシーは、コンピュータやインターネット、ソフトウェアなどのIT技術を使いこなすための基本的な知識やスキルを指します。

 

主にITツールやシステムの利用方法に焦点を当てており、例えば、電子メールの使い方、ExcelやWordといったオフィスソフトの操作、ネットワークやセキュリティの基本知識などが含まれます。

 

日常業務で必要なIT技術を正しく利用し、効率的に業務を遂行することを主たる目的としています。

 

一方で、DXリテラシーは、単にIT技術を使いこなすだけでなく、企業や組織のビジネスモデルや業務プロセスを変革するための知識やスキルを指します。

 

デジタル技術を使って、ビジネスモデルや業務プロセスを変革するところまで含まれる点がITリテラシーとの大きな違いです。

 

このように、ITリテラシーは、主に日常業務に必要な基本的なITスキルにフォーカスしているのに対し、DXリテラシーは、さらに進んで、デジタル技術を活用した組織全体の変革や、新規ビジネス創出に焦点を当てている点に大きな違いがあります。

 

“今”企業にDXリテラシーが求められている3つの理由

DXが必要である3つの理由

近年あらゆる企業にDXリテラシーが求められている代表的な理由として、以下の3つが挙げられます。

  

  • ①企業間の競争激化への対応
  • ②レガシーシステムの老朽化対策【2025年の崖】
  • ③労働人口減少への対応

 

それぞれについて分かりやすく解説していきます。

 

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①企業間の競争激化への対応

2010年以降、誰もがスマートフォンやPCを通じてインターネットと繋がる時代となり、ビジネスの主戦場はリアルの世界からデジタルの世界にシフトしてきました。

 

そこで、各業界において、他社に先んじて、デジタルを活用した業務効率化/コスト削減や顧客体験の向上などを進めてきた企業が、市場シェアを拡大しています。

また、デジタルを活用し急成長を遂げるGAFAのようなテクノロジー企業は、国境や業界を問わず、それまでの勢力図を一変させるような動き(ディスラプション)を見せています。

 

そのため、ITやサービス業などはもちろん、小売や金融、製造業など比較的、リアルアセットの重要性や人手による仕事の割合が高かった業界でも、他業界や海外の新興企業から一気にシェアを奪われかねないという状況に置かれています。

 

このような状況に対応していくためには、これまで培った強みを活かしながら、DXリテラシーを向上させ、競争優位性を高めていくことが求められます。

 

②レガシーシステムの老朽化対策【2025年の崖】

DX レガシーシステムの老朽化対策【2025年の崖】
(画像:経済産業省「DXレポート(サマリー)」

経済産業省によると、日本企業の約8割が、レガシーシステムと呼ばれる老朽化したITシステムを利用しています。

  

そのレガシーシステムの多くが、長年の継ぎ足しによって大きく複雑化しており、また開発担当の社員がいなくなっており中身が分からないブラックボックスになっています。 

 

その結果、長期的に保守費や運用費が高くなってしまい、企業のIT関連予算の約8割が既存ビジネスの維持・運用にあてられているという問題があります。

 

経済産業省のレポートでは、このままDXが推進されない場合、2025年以降に国内全体で最大年間12兆円の経済損失が生じる可能性があると警鐘を鳴らしており、このリスクは「2025年の崖」と呼ばれています。

 

③労働人口減少への対応

DX 労働人口減少への対応
(画像:国土交通白書2021「デジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れと成長の停滞」

日本は今後少子高齢化が加速していき、それに伴う経済成長の低迷が危惧されています。日本の生産活動を担う労働人口は、2008年をピークに減少に転じており、企業の人手不足は深刻化しています。

 

また、諸国と比べた現状の労働者一人当たりの生産性も、20位以下で低迷している傾向にあります。 

 

そんななか、経済成長を実現していくためには生産性向上が必要不可欠となります。その実現のためには、DXリテラシーを高め、デジタルを活用した高付加価値のビジネスの創出や業務効率化を図ることが重要となります。

 

経済産業省によるDXリテラシー標準とは?

経済産業省は、2022年3月、全てのビジネスパーソンが身に付けるべきDXに関わる能力・スキルの基準を示したDXリテラシー標準を公開しました。

 

経産省は、DXリテラシー標準の狙いについて、「働き手一人一ひとりがDXリテラシーを身につけることで、DXを自分事としてとらえ、変革に向けて行動できるようになる」と規定しています。

 

そして、DXリテラシーを身に付けるための指針として、「Why」「What」「How」「マインド・スタンス」という4つの項目を挙げています。それぞれの項目の詳細については後述します。

 

社員のDXリテラシーを向上させたい企業は、DXリテラシー標準に掲げられた指針を参考にすることで、DXを成功させるために必要な人材を適切かつ効率的に育成することが可能となるでしょう。

 

DXリテラシー標準から学ぶDXリテラシーの4つの要素

DXリテラシー標準から学ぶDXリテラシーの4つの要素

DXリテラシー標準には、DXリテラシーを以下の通り、4つの要素に分けて、各要素について学習すべき項目の例を示しています。

 

  • ①Why:DXの背景
  • ②What:DXで活用されるデータ・技術
  • ③How:データ・技術の活用
  • ④マインド・スタンス

 

それぞれについてわかりやすく解説していきます。

 

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①Why:DXの背景

Whyの項目では、DXの重要性を理解することに焦点を当てています。社会情勢、顧客・ユーザーのニーズや動向、競争環境などがどのように変化しているかを知ることで、なぜ今DXが必要とされているのかを理解できるようになります。

 

Whyの項目における具体的な学習項目例(抜粋)は以下の通りです。

 

カテゴリ目的学習項目例
社会の変化 社会の変化や社会課題解決のために
デジタル技術が有用であることを理解している
  • Society 5.0、データ駆動型社会などの重要キーワード
  • 海外の動向
顧客価値の変化 顧客価値の概念を正しく理解し、
デジタル技術の発展によりそれがどう変わってきたかを理解している
  • 顧客の行動変化と変化への対応
  • 顧客を取り巻くデジタルサービスの状況
競争環境の変化 デジタル技術の進展等により
既存ビジネスの競争環境が変化したことを理解している
  • デジタル技術の活用による競争環境変化の具体的事例 等

 

②What:DXで活用されるデータ・技術

Whatの項目では、DXを推進するためのデータやデジタル技術について理解していることが重要となります。

 

Whatの項目における具体的な学習項目例(抜粋)は以下の通りです。

 

カテゴリ目的学習項目例
社会におけるデータデータがどのように蓄積され、社会で活用されているかを理解している
  • データの種類
  • 社会における活用方法
データを読む・説明するデータの分析手法や結果の読み取りを理解し、説明することができる
  • 基礎的な確率・統計の知識
  • 言語化能力
データによって判断するデータ分析の結果から改善のアクションを見出し、実行する手法を理解している
  • データドリブンな判断プロセス
  • 結果モニタリングの手法
AIAIに関する基本的な知識を理解している
  • AIの歴史
  • AIを作るための技術
  • AIの得意分野と限界
クラウドクラウドの仕組みや提供形態を理解している
  • クラウドの仕組み
  • クラウドサービスの提供形態 (SaaS, PaaS 等)

 

③How:データ・技術の活用

Howの項目では、データ・デジタル技術の活用事例や基本的なツールの活用方法を理解し、実際の業務で活用できるようになることを目的としています。

 

Howの項目における具体的な学習項目例(抜粋)は以下の通りです。

 

カテゴリ目的学習項目例
データ・デジタル技術の活用事例データ・デジタル技術が様々な業務で活用できることを理解し、 自身の業務への適用場面を想像できる
  • データ・デジタル技術の活用事例
ツール活用ツールの活用方法を理解し、状況に合わせて適切なツールを選択できる
  • ツールの活用方法
  • ノーコード・ローコードツールの基礎知識
セキュリティセキュリティ技術の仕組みと対策を理解し、安心してデータやデジタル技術を活用できる
  • セキュリティ技術
  • 個人がとるべき対策
モラルインターネット利用時やデータ活用時のモラルを身に付ける
  • ネット被害・トラブルの事例/対策
  • データ活用における禁止事項
コンプライアンスプライバシー権・著作権等の法制度を理解している
  • 個人情報保護法や著作権法に関する知識
  • 諸外国におけるデータ規則

 

④マインド・スタンス

マインド・スタンスの項目では、社会変化の中で新たな価値を生み出すために必要なマインド・スタンスを知り、自身の行動を振り返ることができる能力が求められます。

 

マインド・スタンスの項目における具体的な学習項目例(抜粋)は以下の通りです。

 

カテゴリ目的学習項目例
変化への適応環境や働き方の変化に適応するために主体的に学び、新たな価値観やスキルを身につける各自が置かれた環境において目指すべき具体的な行動や影響例
コラボレーション様々な専門性を持った人と社内がいとわず協働し、多様性を尊重している
顧客への共感顧客に寄り添ったニーズや課題の発見に努めている
常識にとらわれない発想既存の概念にとらわれずに課題解決のアイデアを考えている
事実に基づく判断勘や経験のみならず、データに基づく客観的な判断ができている

 

社員のDXリテラシーを高める3つのメリット

社員のDXリテラシーを高める3つのメリット

社員のDXリテラシーを高めるメリットとして、以下の3つが挙げられます。

 

  • ①自社の事業や現状をよく理解した人材を育成できる
  • ②中長期的なDX体制の強化につながる
  • ③従業員の満足度向上につながる

 

それぞれについてわかりやすく紹介していきます。

 

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①自社の事業や現状をよく理解した人材を育成できる

社内の従業員のDXリテラシーを高めることの最も大きなメリットは、自社の事業や現状、業態をよく理解しているDX人材を排出することができる点です。

 

外部から採用したエンジニアやコンサルタントは、デジタル技術やITに関する知識はありますが、自社の業務や業態を理解していないため、自社の事業にマッチしない改革を行ってしまうリスクがあります。

 

一方で、自社で長く働いている社員であれば、身に付けたデジタルスキルを用いて、自社の業務がより改善される方向での改革を行うことが期待できます。

 

②中長期的なDX体制の強化につながる

社内の従業員のDXリテラシーを高めることで、中長期的なDX体制の強化につながります。

 

外部のコンサルタントを起用したり、エンジニアに外注することは、短期的に成果を上げるためには有効ですが、中長期的に持続力のあるDX体制の強化にはつながりづらいです。

 

社内でDXリテラシー向上のための仕組みを整えることで、外部の人材に頼らずに、DXを内製化することができるでしょう。

 

③従業員の満足度向上につながる

従業員に新しいスキルを学習する機会を与えることは、従業員にとってもメリットがあります。新しい知識やスキルを身に付けることで自己成長を感じられ、仕事に対するやりがいや満足度が高まることが考えられます。

 

また、従業員の満足度向上は離職率の低下や生産性の向上にもつながるため、企業にとってもメリットは大きいです。

 

DXに限らず、従業員が新たなスキルを身に付けるための取り組みを「リスキリング」と言い、多くの企業で従業員に対するリスキリングの機会提供の取り組みが行われています。

 

社員のDXリテラシーを高める5つのステップ

社員のDXリテラシーを高める5つのステップ

社員のDXリテラシーを高めるステップは、大きく以下の5つにわけられます。

 

  • ①目的の設定
  • ②DX人材の定義の明確化
  • ③育成計画の策定
  • ④育成体制の構築
  • ⑤実践の場でのアウトプット

 

それぞれについてわかりやすく紹介していきます。

 

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①目的の設定

目的の設定 DXリテラシー
(出典:経済産業省「デジタルスキル標準」)

まずは、DXリテラシーを高める目的を設定しましょう。ひとことでDXリテラシー向上といっても、企業によって目的は様々です。

 

プログラミングや開発能力を持ったエンジニア的なスキルを育てたいのか、プロジェクトを主導するマネジメントスキルを育てたいのか、製品の設計を担当するデザイナー的なスキルがほしいのか、など自社の現状のリソースや業務内容に応じて、どのようなスキルがほしいのかを明確にする必要があります。

 

目的の設定に当たっては、経済産業省が公開している「デジタルスキル標準」も参考になります。この資料は、企業のDX人材育成の方針を示したガイドラインであり、DX人材を、ビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティスト、サイバーセキュリティ、ソフトウェアエンジニアの5つのタイプに分けています。これらのタイプのうち、どのタイプが自社にとって最もほしい人材かを考えることで、目的の言語化に役立つでしょう。

 

②DXリテラシーの定義の明確化

目的が定まったら、DXリテラシーの定義を具体化・明確化します。DX人材としてどのようなスキルを身に付けさせるべきか、どのようなマインドセットを強化すべきかを整理して、明確化することで、DXリテラシー向上の方向性も定まってくるでしょう。

 

DXリテラシーの定義に当たっても、前述のデジタルスキル標準が参考になります。ここには、DXリテラシーを持った人材のスキル項目や学習項目の例が示されており、どのようなスキルが必要となるかを検討するにあたっての材料となります。

 

③計画の策定

DXリテラシー向上の目的とDXリテラシーの定義づけが完了したら、それに基づいた計画の策定を行います。

 

育成計画の策定に当たっては、具体的なスケジュールを考えることも重要ですが、どのような方法で人材を育成するかの検討も必要となります。

 

社内で勉強会や研修を開催するのか、外部の研修サービスを利用するのか、Eラーニングを活用するのか、など様々な育成方法から自社に合った方法を選択しましょう。

 

また、育成の対象とする社員を決定した上で、育成対象となった社員の本業務をどうするかも検討しなければなりません。

 

育成の対象者については、希望者全員を対象とするのか、何かしらの基準で選考を行うのか、など様々な考え方がありますが、企業の規模や予算に応じて決めていきましょう。育成対象となった社員の本業務については、引継ぎの要否も含めて適切なリソースの再配分を行う必要があります。

 

DX総研では、各企業様の事業や業務/業態に応じたオーダーメイドのDX人材育成支援サービスを提供しております。DX人材の育成やリテラシー向上について相談されたい方は、まずはお気軽に無料相談にお申し込みください。

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④育成体制の構築

DXリテラシー向上のための計画が定まったら、計画を遂行するための育成体制を構築しましょう。社内にITなどに詳しい人材がいる場合には、そのような社員を講師として勉強会や研修を開催することが考えられます。

 

一方で、社内に適切な人材がいない場合には、外部のコンサルタントを起用したり、新たに人材を採用する必要があります。

 

⑤実践の場でのアウトプット

従業員に対して、デジタル技術やITに関する知見を提供しても、実際に活用する場がなければ身につきません。DXリテラシー向上を成果のあるものにするためには、身に付けたスキルを実際に使いこなせるようになるまで教育を行うことが不可欠です。

 

実践の場の提供方法としては、紙の書類のペーパーレス化やRPAによるExcel作業の自動化など、簡単な取り組みを実施して、従業員にITツールを活用する機会を与えることなどが考えられます。

 

DXリテラシーを高める上で企業が直面し得る5つの課題

DXリテラシーを高める上で企業が直面し得る5つの課題

DXリテラシーを高める上で企業が直面し得る課題として、以下の5つが挙げられます。

 

  • ①どのようなスキル・知識を学ばせたらよいかわからない
  • ②育成の方法・進め方がわからない
  • ③目の前の業務が忙しくて学習に費やす時間がない
  • ④学んだことを実践の場でうまく活かすことができない
  • ⑤最新知識を継続的に学習させなければならない

 

それぞれについてわかりやすく紹介していきます。

 

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①どのようなスキル・知識を学ばせたらよいかわからない

DXリテラシーを高める上で、そもそもどのようなスキルや知識を学ばせれば良いかわからないという問題に直面する企業も少なくありません。

 

経済産業省のデジタルスキル標準の学習項目・スキル項目を参考にしたり、DXを専門とするコンサル会社に相談するなどして、必要なスキルや知識の洗い出し・整理をしておくことが重要となります。

 

DX人材としてどのようなスキルや知識を身に付けさせたいかを明確にしておかないと、自社の課題解決・目的達成にマッチしない人材を育成してしまうこととなり、コストが無駄になるという自体につながりかねません。

 

②育成の方法・進め方がわからない

必要なスキルや知識がわかっても、具体的な育成方法や進め方が分からず、立ち止まってしまう事態は多々あります。

 

DX人材の育成方法としては、社内研修・勉強会、外部の研修サービスの利用、他社が提供する教材の利用など様々なものがあります。

 

それぞれの方法のメリット・デメリットを明確にしたうえで、自社に合った育成方法を選択していくことが重要となります。

 

③目の前の業務が忙しくて学習に費やす時間がない

DXリテラシー向上のためのプログラムを設けても、従業員が目の前の業務に忙しくて学習に費やす時間がなければ、育成の目的は達成できません。

 

プログラムと本来の業務との兼ね合いをどうするかは、各社のリソース状況や規模に応じて変わってきます。企業によっては、プログラム中は、対象社員を本来の業務から一切開放するところもあります。

 

いずれにしても、従業員が本来の業務を気にせずに集中して学習に取り組める環境を整えることが重要です。

 

④学んだことを実践の場でうまく活かすことができない

DXリテラシー向上プログラムを受けてデジタルの知見を学んだとしても、実践の場でうまく活かすことができず、実際の成果につながらないという事態はよくあります。座学で学ぶことと、実際に業務で活かすこととは大きく異なるからです。

 

実践で役立つ知識を身に付けさせるためには、プログラムにおいて、実際にITツールを使う機会を設けるなど、実践的なカリキュラムにすることが有効です。

 

また、実際に、紙の書類のペーパーレス化やRPAによるExcel作業の自動化など、簡単な取り組み/プロジェクトを企画して、従業員にITツールを活用する機会を与えることなどが考えられます。

 

⑤最新知識を継続的に学習させなければならない

AIやIoTをはじめとするデジタル技術の進化とそれに伴う各種ITツールのアップデート・趨勢は目まぐるしく変化しています。

 

継続的に最新知識をキャッチアップしておかないと、自分がもっているスキルも陳腐化し、使い物にならなくなってしまう可能性があります。

 

そのため、「DX人材を獲得して終わり」とするのではなく、継続的に最新情報の収集や学び直しを行い、知識をアップデートしていくことが重要です。

 

DXリテラシーの向上に取り組んでいる企業の事例3選

DXリテラシーの向上に取り組んでいる企業として、以下の3つが挙げられます。

 

  • ①【ダイキン】社内に情報技術大学を開設し、2年間のICT教育を実施
  • ②【ニチレイ】レベルに応じたDXプログラムを実施し、約3,900名が受講
  • ③【双日】5段階のレベルでデジタル人材を育成し、様々なDX-PJを推進

 

それぞれの事例について分かりやすく解説していきます。

 

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①【ダイキン】社内に情報技術大学を開設し、2年間のICT教育を実施

【ダイキン】社内に情報技術大学を開設し、2年間のICT教育を実施
(画像:ダイキン)

空調機製造メーカーであるダイキンは、2017年12月、社内にダイキン情報技術大学(DICT)を開設し、希望する社員に対して2年間の徹底したICT教育を実施しています。

 

2023年3月までに390人がDICTを卒業しました。今後もこの取り組みを継続し、2026年3月期末までにデジタル人材を2,000人育成する計画を掲げています。

 

さらに、DICT修了後は、IT企業等に出向できるプログラムも用意し、学んだスキルを実践の場で活用できる機会も提供しています。

②【ニチレイ】レベルに応じたDXプログラムを実施し、約3,900名が受講

【ニチレイ】レベルに応じたDXプログラムを実施し、約3,900名が受講
(画像:ニチレイ)

ニチレイグループは、レベルに応じたDX研修プログラムを行い、従業員に対するDX教育を進めています。2023年度末には国内全社員の約3,900 名が受講を修了しました。

 

レベルに応じて「DXブロンズ」「DXシルバー」「DXゴールド」の3ステップのプログラムを実施。それぞれ「DXを知る」「DXに触れる」「DXを実践する」をテーマに、最終的には全社視点で具体的な行動を起こすことができるレベルを目標としています。

 

また、上位のプログラムを受講した従業員の中から、DXを牽引する人財として「デジタルリーダー」を任命。彼らが今後のDX活動の中心的役割を担い、それぞれの現場の課題をデジタルで解決することを目指しています。

 

③【双日】5段階のレベルでデジタル人材を育成し、様々なDX-PJを推進

【双日】5段階のレベルでデジタル人材を育成し、様々なDX-PJを推進
(画像:双日)

双日は、デジタルの活用によってビジネスモデルや業務プロセスの変革を実践できる「デジタル人材」の育成に注力しています。

 

デジタル人材育成プログラムは、入門・基礎・応用基礎・エキスパート・ソートリーダーの5段階にレベルを設定。2023年には入門・基礎を全社員が修了、応用基礎も目標値(300人)を達成しました。

 

また、カリキュラムの中に生成AI等の科目を追加するなど、日々進化するテクノロジーにも対応できるよう、動的KPIを導入し、適宜見直す体制としています。

 

それらのデジタル人材を活用し、以下のようなDX-PJを進めています。

  1. 鉱物取引での顧客毎の製品販売価格の分析・最適化による収益性向上PJ
  2. マグロ養殖事業での、デジタルツインとAIを組み合わせた生簀内尾数の推定技術の開発と特許出願を行ったスマート水産PJ
  3. 東南アジア農業事業における、土壌、施肥、品種、生育期間をシミュレーションするアプリ開発とその実証実験、データ流通による保険や資材の共同購買等の新サービスを提供する営農プラットフォームPJ
  4. 中古車流通事業での、デジタルツインとカメラ等の技術を用いた車両検査の自動化技術の開発PJ

 

DXリテラシーを高めてDX推進を成功させる5つのポイント

DXを成功させるための5つのポイント

DXリテラシーを高めてDX推進を成功させるためのポイントとして、以下の5つが挙げられます。

 

  • ①リーダーのコミットメントにより社内を巻き込む
  • ②自社ならではのDX戦略を策定する
  • ③十分なDX人材を確保する
  • ④スモールスタートクイックウィンを実現する
  • ⑤ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する

 

それぞれのポイントについて分かりやすく紹介していきます。

 

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①リーダーのコミットメントにより社内を巻き込む

DXは、個別業務のデジタル化だけでなく、全社規模の業務やビジネスモデル、組織文化の変革など、会社のコアとなる部分を大きく変えていく取り組みです。

 

そのため、経営陣や事業部のリーダーが起点となり、DXのビジョン・方針を明確に示し、社内全体を強力に動かしていく必要があります。 

 

具体的には、「どのような中長期的なDXのビジョンを描くのか」、「業務や顧客体験、ビジネスモデルをどのように変えていくのか」、そのために「どの程度人材や予算を割り当てていくのか」などに対して、大きな権限を持って意思決定をしていくことが求められます。

 

一方で、経営陣やリーダー陣がDXに対する危機意識が低い場合などは、DX推進部門や経営企画部門などが主導し、リーダー陣を含め、DXに関する社内向けの勉強会/ワークショップを実施することも有効です。

 

②自社ならではのDX戦略を策定する

自社ならではのDX戦略を策定する

あらゆる人・モノ・コトがインターネットと繋がる現代で、人々の生活や業務、ビジネスの主戦場は、リアルの世界からデジタルの世界に加速度的にシフトし続けています。

 

その変化を踏まえ、いかにデジタルを活用し競争優位性を築いていくかは、全ての企業の経営戦略を考える上で必須のテーマとなっており、DX戦略を考えること=経営戦略を考えること、と言っても過言ではありません。

 

そのため、DX戦略を策定する際は、特定の事業部/部門×個別の業務×デジタル化という範囲で考えたり、同業他社が進めている取り組みをベースにして考えるといった、個別具体的なアプローチではなく、より中長期や全体のアプローチから、全社のビジョンや経営戦略、テクノロジートレンドや業界への影響などと連動させて考える必要があります。

 

③十分なDX人材を確保する

DXの成功に向けては、テクノロジーと経営戦略に対して深い知見を持つプロジェクトマネージャーや、専門的なスキルを有するエンジニア、デザイナーなどのDX人材を十分に確保することが必須となります。

 

本来であれば、既にDX人材が社内にいればよいのですが、ほとんどの日本企業で人材が不足しているという現状があります。

 

また、市場全体として人手不足で、DX人材の争奪戦となっており、採用も思うようには進められないというケースも多く見られます。

 

そのため、足元のDX推進にむけては、経営課題とデジタルの両方に精通した外部のエキスパートを活用しながら、中長期目線では実践や研修を通じた人材育成をしていくといったアプローチが有効です。

 

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④スモールスタートクイックウィンを実現する

DX スモールスタートクイックウィンを実現する

DXがなかなか進まない理由として、業務や組織を大胆に変えていくことが必要な一方で、全社規模の大きな成果が上がるまでには5年程度を有するという点があります。

 

そのため、取り組みの方向性が正しくても、短期間では成果が見えにくいことから、部門間の軋轢や現場からの反発が生まれ、変革のスピードが落ちてしまうケースが少なくありません。

 

そこで、全社単位でのインパクトは小さくとも、比較的短期で成果が出る取り組みを進め、その成果を社内外に発信し巻き込んでいくことは非常に有効です。

 

取り組みの例としては、アナログデータのデジタル化や各種データの一元管理化、業務自動化ツールの導入などが挙げられます。

 

これらの取り組みにより小さな成功を積み重ね、他部門のリーダー陣や現場の社員のマインドが徐々に変わっていくことで、連鎖的に大規模なDXを推進しやすい状況を実現できます。

 

⑤ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する

DX ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する

業務の現状や課題を踏まえて設定したゴールに向けて、最適かつ低コストなアプローチ設計をすることは、DXの投資対効果を飛躍的に高めます。 

 

そもそものDXの目的は、業務を効率化することや顧客により良い製品/サービスを届けることです。

 

一方で、「DXプロジェクトをやるぞ!」となると、本来目的であるはずのデジタル化自体が目的になってしまい、競合が取り組んでいるからといった理由で、自社にマッチしない大掛かりなデジタル化をすすめてしまうケースが少なくありません。

 

もし大規模なシステム開発をせずに効率化を実現できるのならそれがベストであり、そもそも業務は必要か、効率化のインパクトは大きいか、SaaSの導入で解決できないか、アジャイルな進め方で小規模なPoCで仮説を検証する余地はないか、などより幅広い視点で検討をするようにしましょう。

 

DXの実行フェーズになっても、デジタルへの知見はもちろんですが、全社単位での経営の視点や戦略思考が必要になります。

 

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