DXとGXの違い・関係とは?両者の意味/目的や成功事例3選も紹介
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して、業務やサービス、ビジネスモデルを変革し、企業の競争優位性を高める取り組みのことです。
GX(グリーントランスフォーメーション)とは、温室効果ガス削減や脱炭素の取り組みを通じて産業競争力を向上させ、経済社会システムの変革を目指す取り組みのことです。
DXを推進することで、環境保護と経済成長の両立というGXの目的を達成しやすくなるという意味で、DXはGXを実現する一つの手段と位置付けられます。
本記事では、DXとGX、さらにSXの定義やそれぞれの関係性、実際の取り組み事例などをわかりやすく紹介していきます。
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DXとは?

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して、業務やサービス、ビジネスモデルを変革し、企業の競争優位性を高める取り組みのことです。
単なるデジタル化・IT化ではなく、デジタル活用により、業務やサービス、ビジネスモデルを大きく変革していく取り組みであるという点が大きなポイントです。
経済産業省は、2018年に発表した「DX推進ガイドライン」において、DXを以下のように定義しています。
“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること”
ー出典:経済産業省 デジタルガバナンス・コード2.0
例えば、動画配信大手のNetflixが、宅配型のDVDレンタル事業からサブスクリプション型のオンライン動画配信サービスへとビジネスモデルを変革したのは、DXの代表的な事例といえるでしょう。
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GXとは?
GXの定義
GX(グリーントランスフォーメーション)とは、温室効果ガス削減や脱炭素の取り組みを通じて産業競争力を向上させ、経済社会システムの変革を目指す取り組みのことです。
経済産業省が発表した「GX基本リーグ構想」では、GXは以下のように定義されています。
”2050年カーボンニュートラルや、2030年の国としての温室効果ガス排出削減目標の達成に向けた取組を経済の成長の機会と捉え、排出削減と産業競争力の向上の実現に向けて、経 済社会システム全体の変革”を目指す取り組み”
地球温暖化の防止に向けた取り組みと企業の成長・拡大に向けた取り組みを同時に行うことで、環境問題の解決と経済成長を両立させることを目指します。
カーボンニュートラルとの違い
GXとよく似た概念として、カーボンニュートラルが挙げられます。両者の違いをひとことで表すと、カーボンニュートラルはGXの実現に向けた手段と位置付けられます。
カーボンニュートラルとは、二酸化炭素の排出量と吸収量を相殺することで、地球全体としての二酸化炭素排出量をゼロにすることを目指す取り組みのことです。具体的な取組として、再生可能エネルギーの利用や二酸化炭素を吸収する技術の活用などが挙げられます。
一方で、GXは、二酸化炭素排出量削減を含む環境保護施策と企業の成長戦略を両立させて、経済社会そのものを変革していくという、より包括的な取り組みのことを指します。
GX推進の取り組み事例
GXを推進するための具体的な取り組み事例は、以下の通りです。
取り組み内容 | 具体例 |
---|---|
エネルギー消費量の削減 |
|
再生可能エネルギーの導入 |
|
業務のデジタル化によるコスト削減 |
|
DXとGXの関係性は?
DXとGXの関係性をひとことで表すと、DXはGXを実現するための手段と位置付けられます。
例えば、紙の書類のデジタル化によって資源コストを削減し、環境への負荷を軽減したり、ロボットを導入して生産プロセスを効率化し、より少ないエネルギーで大量の製品の生産を可能とするなど、DXの取り組みが結果として、環境保護に繋がることがあります。
このように、DXを推進することで、環境保護と経済成長の両立というGXの目的を達成しやすくなるのです。
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DXがGXを実現する上で重要である3つの理由

DXがGXを実現する上で重要である理由として、以下の3つが挙げられます。
- ①あらゆるモノのデジタル化により物理的コストの削減が可能
- ②データ分析によりエネルギー消費量の最適化が可能
- ③持続可能性を重視した新たなビジネスモデルの創出が可能
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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①あらゆるモノのデジタル化により物理的コストの削減が可能
DXの取り組み例として、紙の書類のデジタル化や窓口手続きのオンライン化というものが挙げられます。
これにより、単に業務を効率化できるだけでなく、物理的な資源の削減や電気代等の節約が可能となり、環境への負荷を軽減することができます。
②データ分析によりエネルギー消費量の最適化が可能
あらゆるモノをインターネットでつないでデータを取得するIoT技術や、ビッグデータと呼ばれる大量のデータをAIにより分析することで、エネルギー消費量を最適化し、二酸化炭素排出量を削減することが可能となります。
例えば、空調設備にセンサーを設置して、温度や使用頻度などのデータを取得することで、空調機のオン/オフのタイミングや温度設定を自動で調整し、エネルギー消費量を最適化することができます。
日本の空調設備メーカーであるダイキンは、オフィス用の空調設備をインターネットでつなぐことで、部屋ごとに自動で温度設定をしたり、人のいない部屋の空調を自動でオフにすることを可能とするシステムを構築しました。これにより、空調設備のエネルギー消費量の最適化を実現しています。
③持続可能性を重視した新たなビジネスモデルの創出が可能

DXにより生まれるビジネスモデルとして、月単位や年単位での継続的な課金制でコンテンツを提供するサブスクリプションや、インターネットを通じて資産の貸し借りを行うシェアリングエコノミーなどが挙げられます。
サブスクリプションの例として、月額課金で動画コンテンツを配信するNetflixやHulu、シェアリングエコノミーの例として、住宅を宿泊場所として利用するAirbnbなどが挙げられます。
これらのビジネスモデルは、モノを所有せず、必要な時に必要な分だけ利用するというコンセプトに基づいたものであり、必要以上のモノを購入することを防いで資源の無駄遣いをなくすことができます。
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DX×GXの取り組み事例3選
DX×GXの取り組み事例として、以下の3つが挙げられます。
- ①【ダイキン】空調機の効率的な稼働を実現するIoTシステムの構築
- ②【西松建設】社内会議資料をペーパーレス化し、年間約250万枚の用紙削減を実現
- ③【長野県長野市】ペーパーレス会議の導入で印刷費用を300万円カット
それぞれの事例について分かりやすく解説していきます。
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①【ダイキン】空調機の効率的な稼働を実現するIoTシステムの構築

ダイキン工業は、空調機や化学製品の製造を手掛ける大阪に本拠を置く世界的なメーカーです。同社は、2021年より「オールコネクテッド戦略」というプロジェクトを開始し、IoTにより空調機をクラウド環境に接続して一括管理を可能にし、業務やエネルギー消費の効率化を実現しています。
【課題・背景】
- オフィス空調設備のエネルギー消費量を最適化し、コスト削減と環境負荷の低減を目指す顧客企業のニーズが増加していた
- 多くの顧客企業が、設備管理者の人手不足に伴い、オフィス空調設備の運用・制御を効率化する必要性に迫られていた
【具体的な取り組み】
- 空調設備をインターネットでつなぐ「オールコネクテッド戦略」というプロジェクトを開始
- 各拠点の空調設備をつなぐクラウド型の空調コントロールシステム「DK-CONNECT」の構築
【得られた成果】
- 100万台以上のエアコンの接続と分単位のデータ取集・リアルタイム制御を実現
- スマホやタブレットから空調設備の監視・運用が可能となり、オフィスを巡回する手間をカット、業務時間の短縮を実現
- 部屋単位で空調を制御したり、人数に応じて自動で設定温度を調整するなど、空調設備の運用最適化によるエネルギー消費量の削減
②【西松建設】社内会議資料をペーパーレス化し、年間約250万枚の用紙削減を実現

土木、建築、環境技術を中心とした幅広い建設事業を手がける西松建設は、富士ソフトのペーパーレスシステム「moreNOT」を導入し、社内会議資料をペーパーレス化しました。
同社では2012年から「各職場における自発的無駄の改善」プロジェクトを開始しており、「社内会議で配布するコピー用紙の削減」も取り組みの一部として進められています。
そこで、タブレットによるペーパーレス会議の推進をスタートするべく、充実したペアリング機能、万が一のリスクを考慮したセキュリティ機能、iOS、Windows、Androidにマルチ対応していることなどを理由に「moreNOT」が導入されました。
これにより、年間約250万枚の削減効果が出ています。また、コピー代を気にせずカラーで資料作成を行うことができるなどのメリットもあり、視覚的にわかりやすく会議進行できるようになりました。
③【長野県長野市】ペーパーレス会議の導入で印刷費用を300万円カット

長野県長野市は、紙の会議資料を準備するのに大きな手間とコストがかかっていたことを受け、ICTを活用したペーパーレス会議を導入し、省力化・省コスト化を図りました。
長野市は、紙の会議資料を配布せず、パソコン上で画面を共有することでペーパーレス会議を実現させました。また、複合機集中管理システムを導入し、プリンタ・コピー機・FAXを集中管理の複合機に入れ替えることで、合計約1,000台の機器を250台に集約するなど、不必要な印刷を避けるための仕組みも構築しています。
これにより、年間約14万枚の紙の使用を削減するとともに、印刷費用を約300万円カットすることに成功しました。また、紙の使用量の削減に伴い、文書の保管スペースが確保されました。
GXと似た概念「SX」とは?
SXの定義
GXと似た概念として近年話題となっているものとして、「SX」というものが挙げられます。
SX(サステナビリティトランスフォーメーション)とは、企業のサステナビリティ(持続可能性)を重視した経営を行っていくという考え方のことです。
経済産業省は、SXの定義について、以下のように述べています。
「SX」とは、企業が持続的に成長原資を生み出し、企業価値を高めるべく(「企業のサステナビリティ」の向上)、社会のサステナビリティ課題に由来する中長期的なリスクや事業機会を踏まえ(「社会のサステナビリティ」との同期化)、資本効率性を意識した経営・事業変革を投資家等との間の建設的な対話を通じて実行することを指します。
簡単に言うと、持続可能な社会の実現に向けて、企業が事業のあり方やビジネスモデルを根本から見直す取り組みのことです。
SDGsとの違い
SXとよく似た概念として、SDGs(Sustainable Development Goals)と呼ばれるものがあります。いずれも持続可能な未来を築くことを目指す取り組みですが、アプローチの仕方に違いがあります。
SXは企業や地域社会が自らのビジネスモデルや運営方法を抜本的に改革することで持続可能性を達成しようとするのに対し、SDGsは政府や企業による国際的な協力を通じて持続可能な社会を目指します。
このように、SXは企業や地域社会レベルの取り組み、SDGsはより広範な国際的な取り組みであるという違いがあります。
SX推進の取り組み事例
SXを推進するための具体的な取り組み事例は、以下の通りです。
取り組み内容 | 具体例 |
---|---|
サステナブルな製品の開発 |
|
持続可能性を重視する企業文化の構築 |
|
サプライチェーンの持続可能性の強化 |
|
DX・GX・SXの関係性は?
DX・GX・SXそれぞれをひとことで表すと以下の通りとなります。
- DX:デジタル技術を活用して企業の競争力を高めること
- GX:環境保護の取り組みと企業の成長戦略を両立させること
- SX:持続可能な社会に向けて事業やビジネスモデルを根本から見直すこと
アプローチの仕方はそれぞれ異なりますが、いずれも企業の成長や競争力向上を目指すという点では共通しているといえます。
DX・GX・SXは互いに独立したものではなく、相互に密接に関連しあっています。例えば、DX推進の一環としてペーパーレス化を進めれば、コストが削減され、GXやSXに繋がります。また、GX推進の一環として再生可能エネルギーを導入すれば、持続可能性が高まり、SXの実現に貢献します。
また、経済産業省は、DXとGX/SXの関係性について、「これらをさらに効果的かつ迅速に推進していくために、DXと一体的に取り組んでいくことが望まれる」としています。
これからDXを推進していくにあたっては、GXやSXといった視点を取り入れることも重要となるでしょう。
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