DX人材を育てるリスキリングとは?進め方や成功事例3選も紹介

リスキリングとは、新たな職務や技術に対応するために、従業員が必要なスキルや知識を再習得することです。

 

DXにおけるリスキリングとは、DXを推進するために、社員が新しいスキルや知識を習得することを指します。

 

デジタル人材が不足している中、多くの企業が、社員のリスキリングを推進して、DX人材の育成に努めています。

 

本記事では、DX人材を育成するリスキリングの進め方や成功のポイントなどを分かりやすく解説していきます。


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DX人材の育成に役立つリスキリングとは?

そもそもリスキリングとは、新たな職務や技術に対応するために、従業員が必要なスキルや知識を再習得することです。

 

競合が目まぐるしく入れ替わる変化の激しい現代において、技術の進歩や市場環境の変化に対応できる組織力を身に付けるため、多くの企業が社員のリスキリングを掲げています。また、岸田文雄首相は2022年10月の所信表明演説において、リスキリングなどの人的投資に5年間で1兆円を投入する意向を表明するなど、リスキリングは国を挙げた一大政策と位置付けられています。

 

リスキリングは、特にDXの文脈の中で語られることが多い概念です。DXにおけるリスキリングとは、DXを推進するために、社員が新しいスキルや知識を習得することを指します。DXを推進するためのリスキリングの具体的な例としては、以下のようなものが挙げられます。

 

デジタルツールの習得クラウドサービスやデータ分析ツール、AIやIoTなど、DXに不可欠な技術を使いこなすスキルを学ぶ
プログラミングやコーディングソフトウェア開発や自動化に関わる基本的なプログラミングスキルを習得する
データ分析ビッグデータを効果的に活用するためのデータ分析やデータサイエンスのスキルを学ぶ
アジャイル手法アジャイル開発やプロジェクト管理手法を学び、迅速かつ柔軟にプロジェクトを進めるスキルを習得する
プロジェクトマネジメントDXプロジェクトを引っ張っていくリーダーシップやマネジメント能力を身に付ける
コミュニケーションスキル他の部署と連携・協力関係を築き、全社的なDXを推進していくためのコミュニケーションスキルを身に付ける

 

DXにおけるリスキリングは、社員がDXを推進するのに必要なスキルを習得し、組織全体が競争力を維持するために重要な要素となります。また、社員個人の自己成長にもつながるものであり、社員の満足度向上やエンゲージメントの強化にもつながります。

 

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リスキリングとアンラーニングの違い

リスキリングとアンラーニングの違い

アンラーニングとは、これまでに学んだ知識や習慣、思考の枠組みを意識的に捨て、新たな考え方やアプローチを受け入れるプロセスのことです。古い知識や固定観念が、新しい状況に適応するための障害になる場合、それらを取り除くことが重要になります。

 

したがって、リスキリングは「新しいスキルの習得」に焦点を当てているのに対し、アンラーニングは「古い知識や思考を手放すこと」に重点が置かれてると考えることができます。

 

リスキリングとリカレント教育の違い

リスキリングとリカレント教育の違い

リカレント教育は、社会人が定期的に教育機関で学び直し、職業生活や社会の変化に対応するための教育全般を指します。これは、職務に特化せず、幅広い知識やスキルを継続的に更新することを目的としています。

 

したがって、リスキリングは「特定の職務や業務」に焦点を当てたスキルの再習得を意味しますが、リカレント教育はより広く、「職業生活全体や社会的適応力」を高めるための継続的な学び直しを指すものと考えることができます。

 

企業がDXのリスキリングを推進する3つのメリット

企業がDXのリスキリングを推進する3つのメリット

企業がDXのリスキリングを推進するメリットとして、以下の3つが挙げられます。

 

  • ①DX人材の確保
  • ②DX人材の採用コスト削減
  • ③社員の満足度向上

 

それぞれについてわかりやすく解説していきます。

 

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①DX人材の確保

DX人材の確保が難しい
(出典:経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課

リスキリングの取り組みとして、従業員にITに関する知識やスキルを身につけさせることで、DX人材の確保につながります。

 

経済産業省の調査によると、国内のIT人材の需要は拡大し続けるのに対し、供給は2019年をピークに減少しており、2030年にかけて40〜80万人規模で不足すると予想されています。このように、DX人材は新卒・中途問わず争奪戦が続いており、希望通りに採用が進むことは稀という状況です。

 

したがって、新たな人材を外部から雇うのではなく、従業員に対するリスキリングを通じて、社内でDX人材を育成していくことが重要となっているのです。

 

②DX人材の採用コスト削減

DXを推進するためには、デジタル技術に関する知見や、ITツールを使いこなすスキルが必要となります。社内にこのようなスキルを持つ人材がいない場合、通常は新しい人材を採用しなければなりませんが、これには多大なコストがかかります。

 

リクルートが運営する就職みらい研究所の発表によると、2019年度時点で、1人の新卒採用にかかるコストは平均で93万6,000円、1人の中途採用にかかるコストは平均で103万3,000円となっています。その後継続的に支払う給与や報酬を考えると、新たな人材の採用には多額のコストがかかることがわかります。

 

リスキリングにより、従業員に必要なスキルを身につけさせれば、新たに人材を雇う必要がなくなり、採用コストの削減につながります。

 

③社員の満足度向上

リスキリングにより新しい知識やスキルを身に付けることで、従業員は自己の成長を感じられるようになるでしょう。リクルートの調査によると、従業員エンゲージメントや従業員満足度をリスキリングの成果指標の一つとしている企業が7割近くに達しているとのことです。

 

リスキリングにより、従業員が今まで以上に意欲的に仕事に取り組むようになり、生産性の向上や従業員の満足度の向上につながります。

 

※出典:リクルート「学ぶ動機と風土を醸成する社内連携と人事制度

 

リスキリングでDX人材の育成を進める4つのステップ

リスキリングでDX人材の育成を進める4つのステップ

リスキリングでDX人材の育成を進めるためには、以下の4つのステップを経る必要があります。

 

  • ①必要な人材とスキルの明確化
  • ②リスキリングプログラムの設計
  • ③リスキリング教育・研修の実施
  • ④DX推進に向けた実践とフィードバック

 

なお、社内のリソースのみでリスキリングを推進することが難しい場合には、DX支援を専門とするコンサル会社が提供する研修/セミナーなど、DXのリスキリング支援サービスを活用することも考えられます。

 

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①必要な人材とスキルの明確化

まず、企業にとって必要な人材やスキルを明確化します。リスキリングの目的は、業界や各社の業態/事業によって異なるため、他社の真似をするのではなく、自社に合った最適な目的を設定することが重要です。

 

例えば、IT系の企業で、社内に優秀なエンジニアはたくさん在籍しているが、プロジェクトを引っ張るリーダー的な存在がいない場合には、プロジェクトを主導するリーダーシップやマネジメントスキルを育成する必要があります。

 

また、必要な人材とスキルを適切に見極めるためには、人事評価等を通じて現在の社員のスキルレベルを正確に把握しておくことも重要です。

 

②リスキリングプログラムの設計

必要な人材とスキルが明確になったら、それらを獲得するために最適なプログラムを設計します。eラーニング、ワークショップ、セミナーなど、多様な形式を組み合わせると効果的です。

 

また、必要に応じて専門知識を持つ外部パートナー(教育機関、コンサル会社など)と協力し、質の高いトレーニングプログラムを提供することも検討に値するでしょう。

 

③リスキリング教育・研修の実施

プログラムが確定したら、実際にリスキリング教育や研修を実施していきます。リスキリングの実施方法としては、以下のようなものが挙げられます。

 

  • 社内勉強会:社内の専門家による勉強会の開催
  • 外部研修/セミナー:DXに詳しいコンサル会社等が提供する研修サービスの利用やセミナーへの参加
  • eラーニングプラットフォームの活用:オンライン学習プラットフォームを活用し、社員が自分のペースで学習できる環境を整備

 

どの方法を採用するかは、社内のリソースや予算とも照らし合わせながら検討する必要があります。

 

④DX推進に向けた実践とフィードバック

教育や研修を行うだけで、学んだスキルを実践する機会がなければ、成果に繋がるリスキリングとはなりません。

 

そのため、書類のペーパーレス化など、失敗による損失リスクが小さい簡易なDXプロジェクトから小さく始めて、身に付けたITの知識やスキルを試す場を設けることが重要です。

 

また、各社員に対して、リスキリングプログラムに対するフィードバックを収集し、満足度の検証や改善案の反映を行うことも忘れずに行いましょう。

 

リスキリングによるDX人材育成を成功させる5つのポイント

リスキリングによるDX人材育成を成功させる5つのポイント

リスキリングによるDX人材育成を成功させるために重要なポイントは以下の通りです。

 

  • ①長期的な目的やビジョンを明確化する
  • ②経営陣がしっかりとコミットする
  • ③全社的な協力・連携体制を構築する
  • ④実践・応用の機会を提供する
  • ⑤外部のサービスやコンテンツを活用する

 

それぞれについてわかりやすく解説していきます。

 

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①長期的な目的やビジョンを明確化する

リスキリングに限らず、DXに関する取り組みの実施に当たっては、長期的な目的やビジョンを明確にしておくことが重要です。

 

目的もなく漫然と取り組みを開始してしまうと、自社の課題解決につながらないまま時間と費用だけを浪費してしまうという事態になりかねません。

 

②経営陣がしっかりとコミットする

DXは、ビジネスモデルの変革や業務プロセス全体の刷新を伴うものであり、全社的に取り組んでいくことが想定されています。

 

リスキリングによるDX人材の育成は、DXの推進のための準備段階の取り組みですが、この段階から経営陣がしっかりとコミットし、どのような人材が自社にとって必要となるか、従業員にどのようなスキルを学ばせるべきか、をしっかりと検討しておくことが重要です。

 

③全社的な協力・連携体制を構築する

上記の通り、DXは、ビジネスモデルの変革や業務プロセス全体の刷新を伴う全社的な取り組みとなります。そのため、DXを推進するためには部署同士が相互に連携・協力する体制を構築する必要があります。

 

DX人材の育成に当たっても、所属部署にかかわらず、希望するすべての従業員に対してリスキリングの機会を与えることが重要です。

 

④実践・応用の機会を提供する

DXに必要なデジタル技術に関する知識は、座学で学んだだけでは足りず、実際に学んだ知識を活用できなければ成果にはつながりません。

 

そのため、単なる講義だけでなく、従業員がITツールを実際に使いこなせる実践の機会も用意することが重要です。

 

例えば、一部のタスクをオンライン化する取り組みなど、小さな改革から始めていくことで、失敗した場合のリスクを抑えながら、実践練習の場を提供することができます。

 

⑤外部のサービスやコンテンツを活用する

DXのリスキリングを行うためには、教える側もデジタル技術に関する専門知識を有していなければなりません。また、単にデジタルに詳しいだけでなく、それをビジネス戦略と絡めて説明できるような講師が理想です。

 

そのような人物を社内で確保するのは難しいことも多いでしょう。その場合には、外部のコンサル会社などが提供している研修・勉強会サービスを利用することも有効です。

 

DX総研では、従業員に対してDXのリスキリングを行いたい企業様に向けて、各社に合わせたオーダーメイドのDX研修/勉強会サービスを提供させていただきます。DX人材の育成について相談したい方は、お気軽にお問い合わせください。

 

リスキリングによるDX人材育成の成功事例3選

リスキリングによるDX人材育成の成功事例として、以下の3事例が挙げられます。

 

  • ①【ダイキン】社内に情報技術大学を開設し、2年間のICT教育を実施
  • ②【ニチレイ】レベルに応じたDXプログラムを実施し、約3,900名が受講
  • ③【双日】5段階のレベルでデジタル人材を育成し、様々なDX-PJを推進

 

それぞれの事例について分かりやすく解説していきます。

 

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①【ダイキン】社内に情報技術大学を開設し、2年間のICT教育を実施

【ダイキン】社内に情報技術大学を開設し、2年間のICT教育を実施
(画像:ダイキン)

空調機製造メーカーであるダイキンは、2017年12月、社内にダイキン情報技術大学(DICT)を開設し、希望する社員に対して2年間の徹底したICT教育を実施しています。

 

2023年3月までに390人がDICTを卒業しました。今後もこの取り組みを継続し、2026年3月期末までにデジタル人材を2,000人育成する計画を掲げています。

 

さらに、DICT修了後は、IT企業等に出向できるプログラムも用意し、学んだスキルを実践の場で活用できる機会も提供しています。

 

②【ニチレイ】レベルに応じたDXプログラムを実施し、約3,900名が受講

【ニチレイ】レベルに応じたDXプログラムを実施し、約3,900名が受講
(画像:ニチレイ)

ニチレイグループは、レベルに応じたDX研修プログラムを行い、従業員に対するDX教育を進めています。2023年度末には国内全社員の約3,900 名が受講を修了しました。

 

レベルに応じて「DXブロンズ」「DXシルバー」「DXゴールド」の3ステップのプログラムを実施。それぞれ「DXを知る」「DXに触れる」「DXを実践する」をテーマに、最終的には全社視点で具体的な行動を起こすことができるレベルを目標としています。

 

また、上位のプログラムを受講した従業員の中から、DXを牽引する人財として「デジタルリーダー」を任命。彼らが今後のDX活動の中心的役割を担い、それぞれの現場の課題をデジタルで解決することを目指しています。

 

③【双日】5段階のレベルでデジタル人材を育成し、様々なDX-PJを推進

【双日】5段階のレベルでデジタル人材を育成し、様々なDX-PJを推進
(画像:双日)

双日は、デジタルの活用によってビジネスモデルや業務プロセスの変革を実践できる「デジタル人材」の育成に注力しています。

 

デジタル人材育成プログラムは、入門・基礎・応用基礎・エキスパート・ソートリーダーの5段階にレベルを設定。2023年には入門・基礎を全社員が修了、応用基礎も目標値(300人)を達成しました。

 

また、カリキュラムの中に生成AI等の科目を追加するなど、日々進化するテクノロジーにも対応できるよう、動的KPIを導入し、適宜見直す体制としています。

 

それらのデジタル人材を活用し、以下のようなDX-PJを進めています。

  1. 鉱物取引での顧客毎の製品販売価格の分析・最適化による収益性向上PJ
  2. マグロ養殖事業での、デジタルツインとAIを組み合わせた生簀内尾数の推定技術の開発と特許出願を行ったスマート水産PJ
  3. 東南アジア農業事業における、土壌、施肥、品種、生育期間をシミュレーションするアプリ開発とその実証実験、データ流通による保険や資材の共同購買等の新サービスを提供する営農プラットフォームPJ
  4. 中古車流通事業での、デジタルツインとカメラ等の技術を用いた車両検査の自動化技術の開発PJ

 

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