DXが進んでいない業界と進んでいる業界とは?理由や事例も紹介
情報処理推進機構が公開しているDX白書2023では、業界ごとのDXの取組状況が示されています。
業界ごとにDXの推進状況は異なり、物流業・医療・製造業などDXが進んでいない業界もあれば、金融・保険業や情報通信業など比較的DXが進んでいる業界もあります。
本記事では、業界ごとにDXが進んでいない理由・進んでいる理由、具体的な取り組み、企業の成功事例などをわかりやすく解説していきます。
またDX総研では、DXを検討・推進する上で必ず押さえておきたい、DX成功事例50選の取り組みや成果をまとめたレポートを無料で配布しています。ご興味のある方は、以下リンクからダウンロードしてご活用ください。
目次
DXが進んでいない業界・進んでいる業界とは?
情報処理推進機構が公開しているDX白書2023では、業界ごとのDXの取組状況が示されています。
各業界のDXの取組割合を「20%未満」「20%以上30%未満」「30%以上」の3つに分類しており、DXが進んでいない業界と進んでいる業界が一目で分かるようになっています。
DX白書2023からわかる、主要な業界のDX取組状況は以下の通りです。
業界別のDXの取組状況 | |||
---|---|---|---|
20%未満 | 20%以上30%未満 | 30%以上 | |
産業 | ● 農業 ● 運輸業 ● 宿泊・飲食サービス業 ● 医療・福祉 | ● 建設業 ● 製造業 ● 卸・小売業 ● 不動産業 ● 教育 | ● 情報通信業 ● 金融・保険業 ● 電気・ガス・熱供給・水道業 |
建設・製造や農業・医療などの第二次・第一次産業については、DXが進んでいないことがわかります。一方で、情報通信業や金融・保険業など、第三次産業に含まれる業界においてはDXが進んでいます。
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DXが進んでいない業界とその理由
DX白書において、DXが進んでいないとされている業界は以下の通りです。
- ①製造業界
- ②建設業界
- ③小売業界
- ④不動産業界
- ⑤教育業界
- ⑥物流業界
- ⑦医療/ヘルスケア業界
それぞれの業界においてDXが進んでいない理由について、わかりやすく解説していきます。
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①製造業界
製造業界は、DXの取り組みが進んでいない業界に位置付けられます。その理由として、ITに詳しい人材が乏しいことや、現場主義の考えが根強くアナログ文化が常態化していることなどが挙げられます。
もっとも、近年のグローバル化による競争激化に伴い、製造業界においても、デジタル技術の活用により生産性を高め、競争力を強化していこうという動きが徐々に見え始めています。
具体的な取組事例としては、RPAやロボットの導入による工場での作業の自動化、AIによる検品・不良品検知作業の自動化、サプライチェーンの管理による生産工程の最適化などが挙げられます。
例えば、川崎重工は、自社工場をデジタルツインにより仮想空間上に再現し、様々なデータを取得して生産フローを最適化する取り組みを行っています。また、パナソニックは電動シェーバーのモーター設計を生成AIにより自動化することで、出力の15%UP、品質向上を実現しています。
また、スポーツ用品メーカーのアシックスは、オンラインでの販売チャネルを構築してD2C(Direct to Consumer。卸や小売を介さず、メーカーが直接消費者に販売する形態)の売上比率を高めるなど、マーケティングの強化のためにDXを推進している事例もあります。
②建設業界
建設業界のDXが進んでいない理由としては、他の業界と同様、DX人材が不足していること、初期投資やメンテナンスの費用がかかることなどが挙げられます。
また、建設現場での作業の中には、ベテラン作業員の長年の経験や勘に依存した複雑で高度なものもあります。このような作業は、デジタル技術で再現・代替することが難しく、DXを妨げる要因となっています。
一方で、近年では、大手ゼネコンを中心に、AI/生成AIやIoTなどの最新技術を活用したDXの取り組みが行われています。
例えば、西松建設は、AIが原材料の価格を予測して、正確な見積りを算出する仕組みを構築しました。
また、IT技術を駆使した建設ソリューションを提供するコマツは、IoTセンサーやAIを搭載した建設機械を提供しています。このソリューションを導入することで、センサーから得られる情報をもとに建設機械の稼働状況を遠隔で監視し、メンテナンス時期の把握や稼働率の向上を図ることができます。
さらに、特に大手ゼネコンを中心に広く活用されている技術として、BIM(Building Information Modeling)というものがあります。これは、コンピュータ上に立体的な建物を再現することで、設計から施工、メンテナンスまでの工程をシミュレーションできる技術です。
代表的な例として、鹿島建設は建築の全工程をBIM上でシミュレーションすることに成功しています。これにより、建築の効率化やコスト削減が可能となります。
③小売業界
小売業界でも、DX人材の不足や費用の不足等により、DXの取り組みが比較的遅れています。
しかし、大手コンビニやデパートの一部では、AIやデータを活用した新たな取り組みが開始されており、徐々にDX化の動きが広がっています。
例えば、AIによるデータ分析を活用したマーケティング/販売戦略の最適化の取り組みが挙げられます。AIが各商品の過去の販売推移や顧客の属性などのデータを分析して、各商品の将来の需要を予測し、需要に応じて商品の配置を工夫することで、販売数の増加が期待できます。
また、ローソンなどのコンビニでは、商品の陳列棚にAIカメラを設置して、来店客の行動データをリアルタイムで取得することで、商品の配置や店内のレイアウトを最適化するといった取り組みも行われています。
このように、日本でも小売店のDXの取り組みは徐々に進んでいることがわかります。一方、海外では、Amazon Goという、完全レジ無しの無人店舗が展開されています。来店客が商品をバッグに入れてレジを通らずに退店するだけで、出入口にあるセンサーが商品を認識し、自動で決済を行うことができる未来型の店舗として注目されています。
④不動産業界
不動産業界は、契約書の紙でのやり取りや対面での接客など、アナログ文化が常態化しており、DXが進んでいない業界の一つです。
一方で、大手不動産会社を中心に積極的にDXを推進していこうという動きも見られています。
その代表が三井不動産で、リアルとデジタルを掛け合わせた不動産ビジネスの変革を掲げたDX VISION 2030のもとに、様々な建物のDX化を進めています。
例えば、東京ドームにサイネージやメインビジョンを設置して観戦体験をアップデートしたり、東京ミッドタウン八重洲に製造ロボットを導入したりと、既存の建物に付加価値を与える取り組みを多数実行しています。
また、AIやデジタルツインを活用した新規サービスの動きも見られます。例えば、東急リバブルは、AIが不動産の価格を自動で査定するサービスや各ユーザーと相性の良い物件をレコメンドするサービスを提供しています。
さらに、東急不動産は、デジタルツイン上に建物を再現し、現地に行かなくても物件をリアルに内見できるサービスを提供しています。
⑤教育業界
学校や学習塾等の教育機関においても、デジタル化は注目されています。しかし、特に学校については、予算の制約やデジタル人材の不足等によりなかなかDXが進んでいない状況です。
そんな中、文部科学省は2020年12月にデジタル化推進プランを公開しました。一人一台のタブレット支給、教育データの利活用など、教育におけるデジタル化の推進や早期実現に向けた取り組みなどをまとめています。
さらに、2019年からは、全国の生徒に一人一台のコンピュータを届けることを目的としたGIGAスクール構想というプロジェクトを推進しています。コロナをきっかけにこの取り組みは加速し、全自治体の約96%が通信環境の整備を完了し、小中学生への一人一台端末支給もほぼ完了しました。
また、ChatGPTでテスト問題を作成したり、英作文の添削を行ったりするなど、最新のツールを積極的に活用している学校も見られます。さらに、VRゴーグルを使った科学実験や工場見学など、デジタル技術により教育の質そのものを高める取り組みも行われています。
デジタル技術を積極的に取り入れることで、教師の負担を減らしつつ、教育の質を高めることができます。一方で、デジタル技術に依存することにより考える力が損なわれること、生徒の個人情報が流出することといった懸念事項も呈されています。教育機関としてはこれらのリスクにも配慮した上で、デジタル化の取り組みを進めることが重要です。
⑥物流業界
物流業界も長年DX化が遅れていましたが、ドライバー不足や長時間労働の問題を受けて、徐々にデジタル化の動きが見られ始めています。特に、2024年4月から、ドライバーの時間外労働の上限が960時間となったことを受け、DXによる物流業務効率化の必要性がますます高まっています。
物流業界で実施されているDXの取り組みの例としては、倉庫へのロボット導入による荷物運搬の自動化、AIの分析による配送ルートの最適化、ドローンによる配達の実証実験などが挙げられます。
例えば日本通運は、倉庫でのピッキング作業を自動化できるロボットを導入したり、RPAを活用して労働時間の合計72万時間削減に成功するなど、一定の成果を上げています。
また、ロジスティードは、倉庫でのオペレーションを72%自動化できる「SMART WAREHOUSE」というソリューションを提供しています。
物流業務の効率化は、従業員の負担軽減だけでなく、配達スピードの向上による顧客の利便性向上や環境への負荷の軽減などにも貢献します。
⑦医療/ヘルスケア業界
医療/ヘルスケア業界におけるDXも長年進んでいませんでしたが、コロナによりオンラインでの診療の必要性が認識されたことなどを受けて、徐々にデジタル化の動きが見られ始めています。
医療分野におけるDXの具体的な取り組みとしては、電子カルテの導入、オンラインでの予約/問診、AIによる医療画像診断や疾病予測、ロボットによる手術サポートなどが挙げられます。
例えば、国立がん研究センターは、大腸内視鏡画像をAIに読み取らせてがんの早期発見に繋げる取り組みを実施しており、98%の病変発見率を達成しています。
また、患者にウェアラブルデバイスを取り付け、健康状態に関するデータをリアルタイムで取得することで、患者ごとに最適な治療を提供することができるようになります。
DXにより、電子カルテの導入、オンラインでの予約/問診など、医療サービスは大きく改善されると考えられますが、一方で、患者の個人情報保護についても十分に注意する必要があります。病気の症状や手術歴などのセンシティブ情報が流出しないよう、万全のセキュリティ体制を施しておくことが重要です。
DXが進んでいる業界とその理由
DX白書において、DXが進んでいるとされている業界は以下の通りです。
- ⑧IT業界
- ⑨金融・保険業界
- ⑩エネルギー業界
それぞれの業界において、DXが進んでいる理由について、わかりやすく解説していきます。
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⑧IT業界
IT業界は、当然ながらDXの取り組みが最も進んでいる業界の一つです。ソフトバンク、KDDI、NTTなどの大手企業をはじめとする多くのIT企業は、DXを推進するための下地となるITシステム環境が整っていることに加え、デジタル技術に関する知見や人材が社内に豊富にあるため、DXを取り組みやすい状況にあります。
IT業界におけるDXでのビジネス改革・業務プロセス変革の具体例としては、AIとビッグデータの活用によるパーソナライズされたオンラインサービスの提供、ソフトウェアのサブスクリプションモデルへの移行、メタバースやデジタルツインなどの新規産業への参入などが挙げられます。
例えば、ソフトバンクはメタバース上に仮想店舗を開設し、若年層をターゲットにしたPR・マーケティング施策を実施しています。海外では、Adobeが、従来は買い切り型で販売していたソフトウェアを、サブスクリプション形式で提供する形態に切り替えた事例が有名です。
また、多くのIT企業は、本業で培ったITの知見を活かして他社のDXを支援するソリューションの提供も行っています。例えば、KDDIは、「コーポレートDX」という枠組みで、ビデオ会議導入やセキュリティ対策、ネット環境構築など様々なDXの取り組みを支援しています。
⑨金融・保険業界
金融・保険業界もDXが比較的進んでいる業界に数えられます。その理由の一つとして、新興のIT企業がフィンテックに参入し、メガバンクなどの既存の金融大手に迫っていることから、業界全体でDXの必要性が高まっていることが考えられます。
金融業界では、三井住友銀行による統合型のモバイル金融アプリ「Olive」のリリース、りそな銀行による個人向けワンストップ金融サービス「りそなグループアプリ」の提供など、オンライン金融サービスの提供が開始されています。
また、近年では、生成AIやメタバースなどの最新技術を活用した取り組みも行われています。例えば、三菱UFJ銀行は、行員向けにChatGPTを導入し、稟議書や融資申込書などの文書作成に活用することで、大幅な業務時間削減に成功しています。また、みずほ銀行は、メタバースイベントに参加し、仮想空間上に店舗を開設するなど、新たなチャネルによるPR活動を行っています。
一方で、保険業界では、保険業務の効率化やサービスの質の向上のためにデジタル技術を活用する保険会社が増えています。特にAI活用の動きは顕著にみられ、AIによる保険審査の代替、パーソナライズされた保険商品の提案、不正請求の見地など、様々な場面でAIが活用されています。
例えば、三井住友海上火災保険では、AIによる自動車ローンのスコアリング自動化や、災害時の被害をAIが推定する防災ダッシュボードの提供など、AIを活用して保険サービスの質を高める様々な取り組みが行われています。
⑩エネルギー業界
電気、水道、ガスなどエネルギー業界もDXが進んでいる分野の一つです。その理由として、SDGsやカーボンニュートラルなど、世界的なエネルギー節約の潮流を受けて、デジタル技術を活用したエネルギー生産や消費の最適化・効率化の必要性が高まっていることが挙げられます。
また、ドローンやAI等の最新技術を駆使して、発電所の整備や点検業務を効率化する取組みも行われています。例えば、東京電力では、ドローンが発電所設備を巡回して設備の様子を撮影し、作業員が遠隔から稼働状況を把握できる体制を構築しています。これにより点検作業を効率化できるだけでなく、作業員の事故リスク防止にもつながります。
【業界別】DXの成功事例20選
業界別のDXの成功事例として、以下の20事例が挙げられます。
<IT業界>
- ①【ソフトバンク】「デジタルワーカー4000プロジェクト」により社内の生産性を向上
- ②【NTTデータ】生成AIとNTT DATA独自開発のクローラーを組み合わせて社内業務効率化を実現
<金融・保険業界>
- ③【三菱UFJ銀行】ChatGPT利用で月22万時間の労働時間削減へ
- ④【SMBCフィナンシャルグループ】契約件数200万件以上のモバイル総合金融サービス「Olive」を提供
- ⑤【三井住友海上火災保険】AIによるスコアリングなど様々な新規ソリューションを提供
<エネルギー業界>
- ⑥【東京電力】ドローンやAIの活用により発電所の保守・点検・管理業務を省力化
- ⑦【東京ガス】電力需要や市場価格の予測によりLNG輸送効率向上を実現
<製造業界>
- ⑧【ダイキン】空調機の効率的な稼働を実現するIoTシステムの構築
- ⑨【パナソニック】電気シェーバーのモーター設計に生成AIを活用
<建設業界>
- ⑩【コマツ】IoT・AIを搭載したスマート建機ソリューションの提供
- ⑪【清水建設】設備機器をAPIで連携させて運用・制御する建設OS「DX-Core」を展開
<小売業界>
- ⑫【アシックス】デジタル上の顧客接点を強化しEC/D2C売上比率を大幅に向上
- ⑬【ウォルマート】VRゴーグルを接客トレーニングに活用
<不動産業界>
- ⑭【三井不動産】ロボットが稼働しやすいオフィス環境を構築し、利便性向上を図る
- ⑮【東急リバブル】多様化する不動産顧客のニーズに応えるAIサービスを続々リリース
<教育業界>
- ⑯【長崎北高校】英作文の添削に生成AIを活用。活用ルール作りにも挑戦
- ⑰【愛媛大学教育学部附属中学校】教師と生成AIが協働し教育の質と効率を向上
<物流業界>
- ⑱【日本通運】AI-OCR(光学文字認識)や自動フォークリフトで業務効率化を実現
- ⑲【佐川グローバルロジスティクス】無線通信自動認識システムや仕分けシステムで倉庫内作業を効率化
<医療/ヘルスケア業界>
- ⑳【国立がん研究センター】内視鏡画像をAIに診断させてがんの早期発見へ
それぞれの事例についてわかりやすく解説していきます。
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<IT業界>
①【ソフトバンク】「デジタルワーカー4000プロジェクト」により社内の生産性を向上
大手通信・IT企業であるソフトバンクは、AIなどのテクノロジーの活用により業務のデジタル化・効率化を行い、働き方改革を一層推進することを目指して「デジタルワーカー4000プロジェクト」を実施しています。テクノロジーの活用により4000人相当の工数を創出することを目標としています。
【課題・背景】
- 社内の生産性向上を目指す
【具体的な取り組み】
- 電子押印の導入や各種事務作業におけるRPAの活用、新卒採用選考におけるAI動画面接など、業務効率化を実現する合計3,000以上の施策を実行
- 新卒採用選考において動画面接の評価にAIを活用
- AI基礎研修、RPAの開発者の育成支援などを通してデジタル人材を育成
【得られた成果】
- 電子契約の推進によりこれまで契約書の印刷や製本、郵送、保管作業にかかっていた時間と、契約書の郵送代や印紙代などのコストを、それぞれ年換算で2万5,000時間(13FTE)、5,000万円相当削減
- 動画面接の選考作業にかかる時間を約85%削減
②【NTTデータ】生成AIとNTT DATA独自開発のクローラーを組み合わせて社内業務効率化を実現
複数のITサービスを提供するNTTデータは、生成AIの導入に加え、NTT DATA独自開発のクローラー(LITRON® Generative Assistant)と組み合わせることで、より社員満足度の高いサービスを実現しています。
【課題・背景】
- 社員の日常業務の効率化を支援し、生産性を向上したい
- 複数の社内サイト上に存在する膨大な社内マニュアルや規程類、といったサイロ化された社内情報を検索するのに大きな工数がかかっていた
【具体的な取り組み】
- 日ごろのオフィス業務・事務作業に即したプロンプトを出力できる生成AIを用いたチャットサービスを構築
- 生成AI技術とNTT DATA独自開発のクローラーによって構築された社内情報を統合的に取得し自然言語で回答するナレッジ検索機能を社内で活用
【得られた成果】
- チャットサービスを介して技術調査などの汎用的な業務への負担軽減に貢献
- 生成AIを用いたチャットサービス導入から4カ月後、利用社員にアンケートを実施したところ、9割以上の社員から今後も継続して利用したいとの声を得られた
- 今後さらなる利用者数の拡大ならびに利用頻度の増加に向け、利用社員をセグメントした分析を実施予定
<金融・保険業界>
③【三菱UFJ銀行】ChatGPT利用で月22万時間の労働時間削減へ
三菱UFJ銀行は、AIを活用した様々な取り組みを実施し、DXを推進しています。近年では、対話型生成AI「ChatGPT」を自社専用にカスタマイズして導入し、稟議書などの文書作成業務の自動化・効率化を目指す取り組みが注目されています。
【課題・背景】
- 銀行業務では、稟議書や融資申込書など様々な文書の作成業務が発生し、多くの工数がかかっており、行員の負担となっていた
【具体的な取り組み】
- 4万人の行員を対象にChatGPTの利用を開放。自社独自にカスタマイズし、セキュリティ対策を施した安全な利用環境を構築
- AIを搭載したチャットボットを導入し、顧客からの問い合わせに対応
【得られた成果】
- ChatGPTを稟議書作成や社内文書ドラフトに活用することで、月22万時間以上の労働時間削減効果を試算
- チャットボットにより24時間365日の顧客対応が可能となり、行員の業務負担の軽減と顧客満足度の向上を実現
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④【SMBCフィナンシャルグループ】契約件数200万件以上のモバイル総合金融サービス「Olive」を提供
SMBCフィナンシャルグループはDXの進展によるビジネスモデルの転換や業界地図の塗り替えを機会・脅威と認識し、プロダクト・サービスの高度化、新たなビジネスモデルの創造に取り組んでいます。
同社は新規預金口座開設数はネット銀行が席巻する状況を受け、SMBC・SMCCが中心となり、同社と資本業務提携関係にもあるSBIグループとも連携し、モバイル総合金融サービス「Olive」を開発しました。
【課題・背景】
- 多くのIT企業が金融サービス事業に参入する中、競争力を保つべくオンラインサービスの提供に乗り出す必要性に迫られていた
【具体的な取り組み】
- モバイル総合金融サービス「Olive」を開発・提供。1つのスマホアプリ・1つのIDで、銀行口座、カード決済、証券、保険という複数のサービスを利用可能に
- 振込業務がネットで完結する法人向けネットバンキング「Web21ライト」を提供
【得られた成果】
- Oliveは、2023年3月のリリース後、2024年2月までの間で契約件数200万件を突破
- 店舗網のない地域のお客さまや高齢のお客さまとの取引が拡大し、個人顧客の新規口座開設数は銀行業界トップクラスにまで増加
- Web21ライトは、低コストで銀行取引を簡単に行えることから、多くの企業の支持を集め、9万社以上が利用
⑤【三井住友海上火災保険】AIによるスコアリングなど様々な新規ソリューションを提供
大手損害保険会社の三井住友海上火災保険は、AIをさまざまな業務に活用し、サービスの質の向上・顧客満足度向上といった成果をあげています。
【課題・背景】
- よりパーソナライズされた体験を提供するために、AIによりデータを科学的に分析・理解・活用し、効率的かつ正確なサービスを提供したい
【具体的な取り組み】
- AIによる自動車ローンスコアリングサービスを実装
- AIが災害時の被害推定を可視化する防災ダッシュボードを提供
- 損保業界で初めてAIチャットボットによる顧客対応を実施
【得られた成果】
- 公正かつ迅速な保険審査が可能となり、保険審査の質の向上や保険収益の増加を実現
- 災害発生時の被害推定をダッシュボード上にわかりやすく可視化することで、地域社会の防災対策を支援
- AIチャットボットが24時間265日、顧客からの問い合わせに即時に応答可能となり、顧客満足度が向上
<エネルギー業界>
⑥【東京電力】ドローンやAIの活用により発電所の保守・点検・管理業務を省力化
東京電力は、発電所の管理業務の省力化、安全性向上のためにドローンやAIを活用しています。
【課題・背景】
- 発電所の保守・点検には多くの工数がかかり、人身事故のリスクを伴うものであり、安全かつ効率的な管理方法が求められていた
【具体的な取り組み】
- 水力・風力発電所の保全作業にドローンを活用。各種設備の点検や周辺環境の状況の把握を省人化
- 原子力発電所を3Dモデル化し、設備全体の効率的な管理や関係者間の情報共有を実施
【得られた成果】
- 発電所トラブル発生時から調査開始までの所要時間を2日以上から2時間以内に短縮。点検作業における人身事故リスクを排除
- 原子力発電所の設計・施工を可視化することで、正確さが向上。会社間での意思疎通の漏れを防止し、施工ミスのリスク低減
⑦【東京ガス】電力需要や市場価格の予測によりLNG輸送効率向上を実現
東京ガスはデータ分析・AI活用により将来のガス・電力需要や市場価格を予測し、それに基づいて取引やオペレーションを効率化することで、コスト削減を実現しています。
【課題・背景】
- LNG取扱量を需要に合わせて適切に拡大し、LNG輸送効率向上によるコスト削減を実現したかった
【具体的な取り組み】
- 気象情報や燃料価格、市場価格などの需要や価格変動に影響を与えうる要素の社外データ、過去の需要実績等の社内データを収集した上でデジタル基盤に蓄積
- データ分析・AI活用によりアセットを適切にコントロールすることで将来のガス・電力需要や市場価格を高い精度で想定
【得られた成果】
- デジタル基盤に蓄積されたデータを基に、対象となる顧客や市場価格の特徴を考慮しながらモデルを構築し、予測・シミュレーションの実施が可能に
- 将来需要や市場価格の予測をもとに、LGNの取引量の最適化、安定的かつ低廉な価格でのガスや電気の提供を実現
<製造業界>
⑧【ダイキン】空調機の効率的な稼働を実現するIoTシステムの構築
ダイキン工業は、空調機や化学製品の製造を手掛ける大阪に本拠を置く世界的なメーカーです。同社は、2021年より「オールコネクテッド戦略」というプロジェクトを開始し、IoTにより空調機をクラウド環境に接続して一括管理を可能にし、業務やエネルギー消費の効率化を実現しています。
【課題・背景】
- オフィス空調設備のエネルギー消費量を最適化し、コスト削減と環境負荷の低減を目指す顧客企業のニーズが増加していた
- 多くの顧客企業が、設備管理者の人手不足に伴い、オフィス空調設備の運用・制御を効率化する必要性に迫られていた
【具体的な取り組み】
- 空調設備をインターネットでつなぐ「オールコネクテッド戦略」というプロジェクトを開始
- 各拠点の空調設備をつなぐクラウド型の空調コントロールシステム「DK-CONNECT」の構築
【得られた成果】
- 100万台以上のエアコンの接続と分単位のデータ取集・リアルタイム制御を実現
- スマホやタブレットから空調設備の監視・運用が可能となり、オフィスを巡回する手間をカット、業務時間の短縮を実現
- 部屋単位で空調を制御したり、人数に応じて自動で設定温度を調整するなど、空調設備の運用最適化によるエネルギー消費量の削減
⑨【パナソニック】電気シェーバーのモーター設計に生成AIを活用
パナソニックは、日本を代表する大手家電メーカーです。同社は、DXを核とするグループ横断の取り組みを「Panasonic Transformation(PX)」と称し、AIなどの最先端技術を取り入れながら、事業戦略の基礎となる業務・プロセス・カルチャーそのものの変革を2021年5月から進めています。
【課題・背景】
- 同社の電動シェーバー「LAMDASH(ラムダッシュ)」は20年以上にわたり改良を続けてきた製品であり、伸びしろが限界に来ていた
- モーターの高出力化が大きな課題となっていたが、人間の経験と知見では、これ以上の進化の余地はない状態だった
【具体的な取り組み】
- LAMDASHシリーズ次期商品のモーター設計に生成AIを活用
- AIがモーターの中核部品であるムーバーの構造をゼロベースで設計し、シミュレーション結果を基に改善するプロセスを自動で繰り返すシステムを構築
【得られた成果・今後の展望】
- 生成AIが設計したモーターは、熟練技術者による最適設計と比較して出力が15%UPし、品質向上を実現
- 人間では改善に数か月も要していたが、AIであれば数日でPDCAを回し、同等の改善が可能に
- 今後は電動工具や車載用モーター、シーリングファンなど、他の製品開発にもAIによる設計を採用する方針
<建設業界>
⑩【コマツ】IoT・AIを搭載したスマート建機ソリューションの提供
コマツは、ショベルやブルドーザーなどの建設機械や鉱山機械の製造を手掛ける日本の大手建設メーカーです。同社は、IoTやAIなどのデジタル技術を建設機械や産業機械に搭載した新たなソリューションを開発・提供し、製造業界や建設業界におけるモノづくりの現場のDXを支援しています。
【課題・背景】
- 建設業界の人手不足に伴う、現場作業の効率化・省人化のためのソリューションを求める顧客企業がますます増えていた
【具体的な取り組み】
- 建設・製造業界の企業に対して、遠隔地から機械の稼働状況を確認できるIoTを活用した管理システム「Komtrax」の開発・提供
- 建設・製造業界の企業に対して、AIが部品の劣化状態を把握し、故障前に交換時期を予測する予知保全システムの提供
- 建設業界の企業に対して、センサーを搭載し、自動制御を可能にしたICT建機の製造・販売
【解決した課題・成果】
- 機械の稼働状況の一元管理が可能となり、稼働率の向上、メンテナンス時期の把握、生産量集計の自動化などによる顧客の現場作業の効率化・生産性向上を実現
- ある企業は、Komtraxにより、設備の稼働率が向上し、生産性が140%も増加するなど大幅な改善を実現
- 遠隔地から顧客の機械の稼働状況や部品の劣化状態の把握が可能となり、効率的かつ適切な修理・保全サービスの提案が可能に
⑪【清水建設】設備機器をAPIで連携させて運用・制御する建設OS「DX-Core」を展開
清水建設は、国内外における土木事業、建築事業などで事業展開している日本を代表するスーパーゼネコンです。同社は建設OS「DX-Core」を展開しており、設備連携時にかかる手間を解消しています。
【課題・背景】
- 従来型のシステム連携では設備間、システム間をそれぞれ接続連携する必要があり、コストや時間がかかっていた
【具体的な取り組み】
- 施工中に作成したBIMデータ等を、建物に備わるIoT情報を取り込める建物OS「DX-Core」へ展開
- 清水建設のエンジニアリング事業本部が関連設備API適用や個別システムのベンダーとの調整、全体動作確認を行う
- 複数の施設にあるDX-Coreから取得した情報をクラウド上で統合し、都市や建物のデジタルツインに活用することでスマートシティを実現
【解決した課題・成果】
- 関連設備は手間を考慮せず複数メーカーから選定可能となり、竣工後の更新コストを抑えることが可能
- 「DX-Core」は、空調、照明、エレベーター、自動ドアなどの設備機器をメーカー問わずAPIで連携させて運用・制御することで利便性や業務効率性の向上を実現
<小売業界>
⑫【アシックス】デジタル上の顧客接点を強化しEC/D2C売上比率を大幅に向上
アシックスは、スポーツ用のシューズやウェアなどを製造・販売する日本を代表するスポーツ用品メーカーです。同社は、ランナー向けのスマホアプリなどを通じてデジタル上での顧客との直接の繋がり強化を進めることで、販売に占めるEC/D2C比率を高め、収益率の向上を実現しています。
【課題・背景】
- コロナをきっかけとする買い物のオンラインシフトに伴い、ECやD2Cでの販売比率を向上させ、売上げ拡大を図る必要に迫られていた
- アシックスの売上のうちECでの比率はわずか数%であり、EC比率拡大に向けた施策が喫緊の課題となっていた
【具体的な取り組み】
- ECサイトと連動し、限定クーポン等が貰えるロイヤリティプログラム「OneASICS」を展開し顧客接点を強化
- ランニングの記録と仲間とのシェアができるスマホアプリ「アシックスランキーパー」を提供し購入後の顧客との接点も獲得
- 購入後を含めた顧客データを活用し、各顧客の身体にフィットした商品を提案
【得られた成果】
- 卸売中心で顧客接点が限定的だったが、デジタル顧客基盤が1,000万人超へ
- 購入後も含めた多様な顧客接点の獲得により、ファン化を促進しLTVも向上
- 課題としていたEC売上比率が5%から18%へ、D2C比率が17%から33%へ向上
⑬【ウォルマート】VRゴーグルを接客トレーニングに活用
アメリカの大手スーパーマーケットチェーンであるウォルマートは、様々なDXに関する取り組みで成功している海外企業として有名です。ネットスーパーの当日配送サービス「ウォルマートプラス」、オンラインとオフラインのオムニチャネルを持つ診療所事業「Walmart Health」など、オンラインビジネスに積極的に乗り出しています。
ウォルマートは、2018年から、Metaが提供するVRヘッドセット「Meta Quest」を用いて、仮想空間上に店舗を再現し、従業員が接客トレーニングを行えるプログラムを提供しています。
【課題・背景】
- 接客については、講義形式での研修がメインであり、実際の接客のシチュエーションをイメージした実践的な練習をすることは難しかった
【具体的な取り組み】
- ウォルマートの店舗を仮想空間上に再現。従業員にVRゴーグルを装着させて、仮想の客に対する接客のトレーニングを実施
- 合計1万7,000台のVRヘッドセットを約4,700店舗に準備するなど、大規模な投資を行う
【得られた成果】
- 従業員は本番に近い環境で接客の練習をすることが可能に
- 従業員の7割は、VRを使わなかった従業員と比べて高いパフォーマンスを発揮したたという結果も
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<不動産業界>
⑭【三井不動産】ロボットが稼働しやすいオフィス環境を構築し、利便性向上を図る
三井不動産は、ロボットフレンドリーなオフィスビルを構築することで、利便性向上を図っています。
【課題・背景】
- ロボットがスムーズに動けるオフィス環境を構築することで、オフィス管理にかかる労働力の不足解消や利便性向上を図りたい
【具体的な取り組み】
- 東京ミッドタウン八重洲をDX化。デリバリー/清掃/運搬の3つのロボットが稼働しやすい環境を整備
- 顔認証による入退館システムや全フロア5Gの導入などの改革も実施
【得られた成果】
- フードデリバリーロボットが部屋まで食事を運べるようになり利便性が圧倒的に向上
- 清掃ロボットにより清掃作業が自動化され、人件費等の削減に
- 5G導入による通信速度の向上
⑮【東急リバブル】多様化する不動産顧客のニーズに応えるAIサービスを続々リリース
東急リバブルは、多様な不動産顧客のニーズに合わせて複数のAIサービスを提供しています。
【課題・背景】
- 「急な転勤等に備えて売却価格を知りたい」「自分に合った物件をすぐに見つけ出したい」といった顧客の様々なニーズに応えたい
【具体的な取り組み】
- AIにより所有不動産の価格を簡単査定する「スピードAI査定」のリリース
- AIを活用することで相性ぴったりの物件を探すことができる「AI相性診断」のリリース
【得られた成果】
- スピードAI査定は、所有する不動産を登録するだけでAIが瞬時に価格を査定する利便性が評価され、登録者が1万人を突破
- AI相性診断は、パーソナライズされた物件情報をスピーディに提供、マッチ度95%を達成
<教育業界>
⑯【長崎北高校】英作文の添削に生成AIを活用。活用ルール作りにも挑戦
長崎北高校では、英語学習の一環として対話型AI「CHATGPT」の活用が進められています。生徒たちは、英作文の添削や長文読解のサポートとしてAIを活用し、自分の弱点を把握し、学力向上に役立てています。
【課題・背景】
- 生徒の学力向上だけでなく、ChatGPTなどのAIをどのように活用していくか教育する必要があった
【具体的な取り組み】
- 英作文の添削や長文読解のサポートとしてAIを活用
- AIを使った授業で生徒たちが自ら活用法を実験・検討し、ガイドライン作成に挑戦
【得られた成果】
- AIの活用により、生徒たちは文法や表現方法など、自分では気づけなかった点を瞬時に指摘され、学習効率の向上を実現
⑰【愛媛大学教育学部附属中学校】教師と生成AIが協働し教育の質と効率を向上
愛媛大学教育学部附属中学校では、授業の「振り返り」を効率化するために、対話型AI「ChatGPT」の導入を試験的に行っています。
【課題・背景】
- 教員の業務負担を軽減したかった
【具体的な取り組み】
- 生徒たちはタブレット端末を使用して、授業で学んだ内容や疑問点を入力し、AIが即座にフィードバックを提供
- 教師がChatGPTのコメントをダブルチェックし、学習内容や生徒の理解度に応じた適切なフィードバックを提供
【得られた成果】
- 従来は教師が行っていた時間を要するコメント作成作業が効率化され、教師の負担が軽減
- 生徒の質問へのハードルが下がった
<物流業界>
⑱【日本通運】AI-OCR(光学文字認識)や自動フォークリフトで業務効率化を実現
物流業界最大手の日本通運は、AIが手書きの文字などを読み取ってデータ化することができるAI-OCR(光学文字認識)や自動フォークリフトで業務時間や担当者の負担軽減を実現しています。
【課題・背景】
- 慢性的な人手不足や長時間労働が問題となっている物流業界において、従業員の労働時間を削減する施策の遂行が課題となっていた
【具体的な取り組み】
- AIを用いた光学文字認識技術であるAI-OCRを導入し、ドライバーの運転日報やアルバイト勤務日報の入力業務を自動化
- 物流倉庫に自動フォークリフトを導入し、出荷準備作業や荷受け作業を自動化
【解決した課題・成果】
- 毎月平均450件の帳票を手入力で行っていたが、AI-OCRで入力を自動化したことで、年間6万時間弱の事務作業を削減
- 深夜の搬送作業自動化により、1人当たりの残業時間を約1~2時間/日削減。入出庫作業の自動化による安全性の向上
⑲【佐川グローバルロジスティクス】無線通信自動認識システムや仕分けシステムで倉庫内作業を効率化
SGホールディングスグループの中でロジスティクス事業を展開する佐川グローバルロジスティクスは、無線通信自動認識システム(RFID)を導入することで入出荷検品作業を効率化したり、仕分けシステム「t-Sort」を導入することで仕分け作業の生産性を向上させています。
【課題・背景】
- 倉庫内作業を効率化し、作業員の負担軽減や生産性向上を図りたい
【具体的な取り組み】
- 商品につけた無線通信自動認識システム「RFID(Radio Frequency Identification)」を認識させて検品を行う
- 仕分けシステム「t-Sort」で従来作業員が移動して行っていた仕分け作業をロボットが代わりに行う
【解決した課題・成果】
- t-SortとRFIDシステムの組み合わせで、作業スキル修得時間は約7割削減を達成するなど、新規就労者の早期戦力化を実現
- 作業生産性の大幅な向上に加え、作業品質も向上。仕分けミスは、ほぼゼロに
<医療/ヘルスケア業界>
⑳【国立がん研究センター】内視鏡画像をAIに診断させてがんの早期発見へ
国立がん研究センターでは、内視鏡検査においてAIを活用し、がんの早期発見を目指しています。
【課題・背景】
- 従来、内視鏡検査は医師が肉眼で行っていたが、医師によって診断内容にばらつきがあったり、がん兆候の見逃しがあるなどの課題があった
【具体的な取り組み】
- NECと共同で、AIが早期大腸がんや前がん病変を内視鏡検査時にリアルタイムに発見するソフトウェアを開発
- AIに約 5,000 例の大腸癌と前癌病変の内視鏡画像を学習させて、診断能力を強化
【解決した課題・成果】
- 医療偽陽性率を1%に抑えたまま、98%の病変発見率を達成するなど、正確性が向上
- 解析時間もわずか0.1秒以内に短縮
DXの進め方|具体的な6つのステップ
DXの進め方は大きく6つのステップに分けられます。
それぞれのステップについてわかりやすく解説していきます。
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ステップ1:DXの目的・ビジョンを明確化する
DX推進の最初のステップとして、DXの目的・ビジョンを明確化しましょう。
「DX推進後の理想の自社の姿」を明確に設定することで、その後の取り組み内容や優先度、進め方などを決定する軸とすることができ、ブレることなくプロジェクトを推進できます。
本ステップの検討には経済産業省の「DXレポート2.1」のフレームワークが役に立ちます。
自社の業務、製品/サービス、ビジネスモデルのそれぞれが、どの程度までデジタル化された状態を理想とするかを、市場環境や自社の特性を踏まえ、検討しましょう。
例えば、業務のデジタル化すら進んでいない企業であれば、3年後までにまずは業務のデジタライゼーションを目指す。一方で、業務のデジタル化が進んでいる企業であれば、3年後までに製品/サービスやビジネスモデルのデジタルトランスフォーメーションを目指す。といったビジョンの設定が考えられます。
ステップ2:自社の現状と課題を把握する
続いて、自社が現状どの程度DXを推進できているのか、ビジョンの実現に向け何が課題なのかを把握しましょう。
本ステップの検討には、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「DX推進指標」を活用することで、企業文化、推進体制、人材育成など、多角的な観点から評価を行うことができます。
それぞれの観点における自社の成熟度のレベルを把握することで、特にDX推進が遅れているポイントを明確にすることができ、その後の戦略や計画の策定に活かすことが可能です。
ステップ3:DXに関する戦略と計画を策定する
前ステップで策定したビジョンと自社の現状・課題に基づき、DXに関する戦略・計画を策定しましょう。
検討すべき項目は上記画像のように多岐に渡りますが、特に重要なのは、「戦略=デジタル化の優先度付け」です。
デジタル化の対象や取り組み内容の候補は極めて幅広いため、バラバラと取り組みを進めてしまうことでリソースが分散し、思うような成果が上がらないというケースは少なくありません。
そのため、取り組みの候補を幅出し・整理した上で、DXを推進しやすくインパクトも期待できる取り組みから着手し、その後難易度が高くよりインパクトの期待できる取り組みにシフトしていくといった進め方が有効となります。
例えば、受発注のやりとりに関する膨大な作業の効率化を重点課題とした企業であれば、まずは資料のペーパーレス化や判子の電子印化を進めた上で、その後一連の受発注プロセスをデジタル活用により自動化するといった進め方が考えられます。
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ステップ4:DX推進チームを構築する
DXを推進するには、ビジョンや戦略を社員に周知し、現場からの課題を吸い上げながら、各部門と連携・調整し、実行支援も行う、DX推進専門のチームが必要になります。
そのため、DX推進チームのメンバーには特に、デジタルへの知見、コミュニケーション能力、業務の知見などのスキルが求められます。
また、DX人材の具体的な職種の例は以下の通りです。
- プロジェクトマネージャー:DXやデジタルビジネス構築を主導するリーダー
- テックリード:システム設計や要件定義を担当し、開発を主導
- UI/UXデザイナー:DXやデジタルビジネスのユーザー向けのデザインを担当
- エンジニア:デジタルシステムの実装・インフラ構築を担当
- データサイエンティスト:事業・業務に精通しデータの収集・分析を担当
これらのDX人材の確保には、外部ベンダー等の人材を活用する方法と、社員に対するDX人材育成を実施する方法があります。
DX推進のスケジュールや、社員のDXスキルの有無、既存業務を含めたリソースの有無などを考慮し、自社に最適な方法を選択しましょう。
ステップ5:デジタル化により業務効率を向上させる
これまでに策定したビジョン・戦略・計画に基づき、実際に業務効率化に向けたデジタル化を推進していきましょう。
ここで、いきなり全社単位や部門横断の大規模なDXに着手してしまうと、デジタル化の難易度が高く、成果が出るまで長期間を要し、コストも膨大になってしまいます。
そこで、デジタイゼーション(書類で管理していたデータをクラウド上で一元管理する等)やデジタライゼーション(RPAの導入によりデスクワークの一部を自動化する等)など着実に成果の上がる取り組みを、特定の事業部や部門単位から進めるのがおすすめです。
前のステップまでは比較的トップダウン的な取り組みですが、本ステップからはいかに現場の各社員と深く対話し、小さな成功を積み重ねるというボトムアップ的な取り組みが重要です。
これにより、多くの人材から共感と信頼を勝ち取り、DX推進に巻き込んでいくことで、より大規模なDXの推進が可能になります。
ステップ6:PDCAを回し、ビジネスモデル変革まで繋げる
業務のデジタル化を進めることで、企業は今まで見えていなかった業務や顧客に関する様々なデータを収集・蓄積・可視化できるようになります。
これらのデータを分析し、新たな業務の課題やビジネスチャンスを発見し、取り組みを改善するというPDCAサイクルを、数ヶ月単位で何度も回すことで、大きな成果を上げることが可能です。
さらに、PDCAサイクルを回し続けることで、自社独自の詳細な顧客データやより効率的なオペレーション、先端技術活用のノウハウなどの強みが蓄積されていきます。この強みの蓄積こそが、他社には真似できない、ユニークな新サービスやビジネスモデルの創出の源泉となります。
DX推進を成功させるための5つのポイント
DX推進を成功させるためのポイントとして、以下の5つが挙げられます。
- ①リーダーのコミットメントにより社内を巻き込む
- ②自社ならではのDX戦略を策定する
- ③十分なDX人材を確保する
- ④スモールスタートクイックウィンを実現する
- ⑤ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する
それぞれのポイントについて分かりやすく紹介していきます。
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①リーダーのコミットメントにより社内を巻き込む
DXは、個別業務のデジタル化だけでなく、全社規模の業務やビジネスモデル、組織文化の変革など、会社のコアとなる部分を大きく変えていく取り組みです。
そのため、経営陣や事業部のリーダーが起点となり、DXのビジョン・方針を明確に示し、社内全体を強力に動かしていく必要があります。
具体的には、「どのような中長期的なDXのビジョンを描くのか」、「業務や顧客体験、ビジネスモデルをどのように変えていくのか」、そのために「どの程度人材や予算を割り当てていくのか」などに対して、大きな権限を持って意思決定をしていくことが求められます。
一方で、経営陣やリーダー陣がDXに対する危機意識が低い場合などは、DX推進部門や経営企画部門などが主導し、リーダー陣を含め、DXに関する社内向けの勉強会/ワークショップを実施することも有効です。
②自社ならではのDX戦略を策定する
あらゆる人・モノ・コトがインターネットと繋がる現代で、人々の生活や業務、ビジネスの主戦場は、リアルの世界からデジタルの世界に加速度的にシフトし続けています。
その変化を踏まえ、いかにデジタルを活用し競争優位性を築いていくかは、全ての企業の経営戦略を考える上で必須のテーマとなっており、DX戦略を考えること=経営戦略を考えること、と言っても過言ではありません。
そのため、DX戦略を策定する際は、特定の事業部/部門×個別の業務×デジタル化という範囲で考えたり、同業他社が進めている取り組みをベースにして考えるといった、個別具体的なアプローチではなく、より中長期や全体のアプローチから、全社のビジョンや経営戦略、テクノロジートレンドや業界への影響などと連動させて考える必要があります。
③十分なDX人材を確保する
DXの成功に向けては、テクノロジーと経営戦略に対して深い知見を持つプロジェクトマネージャーや、専門的なスキルを有するエンジニア、デザイナーなどのDX人材を十分に確保することが必須となります。
本来であれば、既にDX人材が社内にいればよいのですが、ほとんどの日本企業で人材が不足しているという現状があります。
また、市場全体として人手不足で、DX人材の争奪戦となっており、採用も思うようには進められないというケースも多く見られます。
そのため、足元のDX推進にむけては、経営課題とデジタルの両方に精通した外部のエキスパートを活用しながら、中長期目線では実践や研修を通じた人材育成をしていくといったアプローチが有効です。
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④スモールスタートクイックウィンを実現する
DXがなかなか進まない理由として、業務や組織を大胆に変えていくことが必要な一方で、全社規模の大きな成果が上がるまでには5年程度を有するという点があります。
そのため、取り組みの方向性が正しくても、短期間では成果が見えにくいことから、部門間の軋轢や現場からの反発が生まれ、変革のスピードが落ちてしまうケースが少なくありません。
そこで、全社単位でのインパクトは小さくとも、比較的短期で成果が出る取り組みを進め、その成果を社内外に発信し巻き込んでいくことは非常に有効です。
取り組みの例としては、アナログデータのデジタル化や各種データの一元管理化、業務自動化ツールの導入などが挙げられます。
これらの取り組みにより小さな成功を積み重ね、他部門のリーダー陣や現場の社員のマインドが徐々に変わっていくことで、連鎖的に大規模なDXを推進しやすい状況を実現できます。
⑤ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する
業務の現状や課題を踏まえて設定したゴールに向けて、最適かつ低コストなアプローチ設計をすることは、DXの投資対効果を飛躍的に高めます。
そもそものDXの目的は、業務を効率化することや顧客により良い製品/サービスを届けることです。
一方で、「DXプロジェクトをやるぞ!」となると、本来目的であるはずのデジタル化自体が目的になってしまい、競合が取り組んでいるからといった理由で、自社にマッチしない大掛かりなデジタル化をすすめてしまうケースが少なくありません。
もし大規模なシステム開発をせずに効率化を実現できるのならそれがベストであり、そもそも業務は必要か、効率化のインパクトは大きいか、SaaSの導入で解決できないか、アジャイルな進め方で小規模なPoCで仮説を検証する余地はないか、などより幅広い視点で検討をするようにしましょう。
DXの実行フェーズになっても、デジタルへの知見はもちろんですが、全社単位での経営の視点や戦略思考が必要になります。
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