経産省の4つのDXレポートとは?最新版の2.2を含め要点を解説
DXレポートとは、日本企業のDXを促進するための指針や行動計画をまとめた資料です。経済産業省が2018年から複数回にわたり公表しています。
特に、最新版のDXレポート 2.2は、デジタル産業の変革に向けて、企業が取るべき具体的な行動指針を提示している実践的な内容として、多くの企業に参考にされています。
本記事では、経済産業省がこれまでに発表した4つのDXレポートの要点、最新版のDXレポート2.2に示された3つのアクションプランなどをわかりやすく解説していきます。
またDX総研では、DXを検討・推進する上で必ず押さえておきたい、DX成功事例50選の取り組みや成果をまとめたレポートを無料で配布しています。ご興味のある方は、以下リンクからダウンロードしてご活用ください。
目次
経済産業省のDXレポートとは?
DXレポートとは、経済産業省が2018年から複数回にわたり公表している、日本企業のDXを促進するための指針や行動計画をまとめた資料です。
日本国内におけるDX推進の現状を踏まえた、日本企業によるDXの課題、競争力向上のために意識すべきこと、具体的なアクションプラン等が示されており、DX推進を検討する企業の担当者にとって参考になる内容となっています。
DXレポートは、2018年9月に初めて発表されて以降、3回にわたりアップデートされ、合計4つのレポートがあります。
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これだけは押さえたい4つのDXレポートの要点
経済産業省が今までに発表してきたDXレポートの一覧は以下の通りです。
レポート名 | 公開時期 | 概要 |
---|---|---|
①DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~ | 2018年9月 | DXを実現していく上でのITシステム(特にレガシーシステム)に関する現状の課題やその対応策について検討したもの |
②DXレポート2(中間取りまとめ) | 2020年12月 | DXの現状認識とコロナ禍によって表出したDXの本質、それを踏まえた今後の経営・戦略変革の方向性が示されている |
③DXレポート2.1(DXレポート2追補版) | 2021年8月 | デジタル変革後の産業の姿、その中での企業の姿、そして企業の変革を加速させるための課題や政策の方向性を提示 |
④DXレポート 2.2 (概要) | 2022年7月 | デジタル産業への変革に向けた具体的な方向性やアクションを提示 |
それぞれのレポートの要点についてわかりやすく解説していきます。
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①DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~
2018年9月に公開された初のDXレポートは、「ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開」というサブタイトルが付けられています。
「2025年の崖」とは、老朽化した既存システムにより全社横断的なデータ活用が妨げられることにより、DXが実現できないだけでなく、2025年以降に国内全体で最大年間12兆円の経済損失が生じる可能性があるという問題のことです。
DXレポートは、「2025年の崖」の問題を初めて指摘し、この課題を乗り越えてDXを実現するためのシナリオ・対策について指針を示しています。
【制定の背景】
- 日本企業の約8割が、レガシーシステムと呼ばれる老朽化したITシステムを利用
- レガシーシステムによってDXが妨げられてしまう事態が続くと、2025年以降に国内全体で最大年間12兆円の経済損失が生じる可能性がある
- こうした事態を防ぐために、企業がレガシーシステムから脱却し、DXを実現するための対策を示す必要がある
【概要】
- DXを実現していく上でのITシステム(特にレガシーシステム)に関する現状の課題やその対応策について検討したもの
【特徴/見るべきポイント】
- レガシーシステムが存在することのリスク、解消のための具体的な対応策を示している
- レガシーシステムを解消した上で、DXを実現するためのロードマップを展開している
- ユーザー企業・ベンダー企業の双方がDXを通じて目指すべき姿を描いている
②DXレポート2(中間取りまとめ)
2020年12月に公開された「DXレポート2」は、DXの現状とコロナ禍によって表出したDXの本質について指摘し、DX推進が喫緊の課題であることを主張しています。
その上で本レポートでは、企業のDXを加速するための課題やその対応策を中心に議論を進めています。
【制定の背景】
- DX推進指標の自己診断結果によると、2020年10月時点で全体の9割以上の企業がDXに全く取り組めていない、あるいは散発的な実施に止まっている状況であることが明らかになった
- 先般のDXレポートによるメッセージは正しく伝わっておらず、「DX=レガシーシステム刷新」など本質ではない解釈を生んでしまっていた
- コロナ禍での事業存続の危機に対して、積極的に事業や業態を変革して環境変化に対応できたか否かでデジタル競争における勝者と敗者が明確化した
【概要】
- DXの現状認識とコロナ禍によって表出したDXの本質、それを踏まえた今後の経営・戦略変革の方向性が示されている
【特徴/見るべきポイント】
- レガシー企業文化から脱却し、デジタル企業に変革するためのプロセスが示されている
- 企業が直ちに取り組むべきアクションが業務環境や業務プロセスなどのカテゴリごとに記載されている
③DXレポート2.1(DXレポート2追補版)
2021年8月に公開された「DXレポート2.1」は、「DXレポート2」の中で議論を進めることができなかった「デジタル産業」と表現したデジタル変革後の新たな産業の姿や、その中での企業の姿について示しています。
【制定の背景】
- 経済産業省が2020年12月に公開した「DXレポート2」において、政策の方向性として「レガシー企業文化からの脱却」「ユーザー企業とベンダー企業の共創の推進」の必要性を示した
- 他方、「DXレポート2」の中でも、「デジタル産業」と表現したデジタル変革後の新たな産業の姿やその中での企業の姿がどういったものであるかという点までは議論を進められていなかった
【概要】
- デジタル変革後の産業の姿、その中での企業の姿、そして企業の変革を加速させるための課題や政策の方向性を提示
【特徴/見るべきポイント】
- 既存産業の企業がデジタル産業の企業へと変革していく上で、ユーザー企業とベンター企業双方に存在するジレンマを示している
- デジタル社会の実現に必要となるデジタル産業の構造を4つの企業類型に分けて解説
④DXレポート 2.2 (概要)
2022年7月に公開された「DXレポート2.2」では、デジタル産業への変革に向けた具体的な方向性やアクションを提示しています。
DXレポート2.1で具体的に述べられたデジタル産業について、DX推進の現状を踏まえた上で、実現のための方向性やアプローチ方法を述べています。
【制定の背景】
- DXレポート2.1で示した通り、ユーザー企業とベンダー企業はともに「低位安定」の関係に固定されてしまっているため、個社単独でのDXが困難な状況にある
【概要】
- デジタル産業への変革に向けた具体的な方向性やアクションを提示
【特徴/見るべきポイント】
- 企業がとるべきアクション・行動指針として、以下の3点を提示
- デジタルを省力化・効率化ではなく、収益向上にこそ活用すべきであること
- DX推進にあたって、経営者はビジョンや戦略だけではなく「行動指針」を示すこと
- 個社単独ではDXは困難であるため、経営者自らの「価値観」を外部へ発信し、同じ価値観をもつ同志を集めて、互いに変革を推進する新たな関係を構築すること
- 上述を実現するための仕掛けとして、「デジタル産業宣言」を策定
DXレポート2.2からわかる企業が取るべき3つの行動

DXレポート2.2には、企業が取るべき3つの行動が示されています。
- ①デジタルを、省力化・効率化ではなく、収益向上にこそ活用する
- ②DX推進にあたって、経営者はビジョンや戦略だけではなく、「行動指針」を示す
- ③経営者自らの「価値観」を外部へ発信し、同じ価値観をもつ同志を集めて、互いに変革を推進する新たな関係を構築する
それぞれについてわかりやすく解説していきます。
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①デジタルを、省力化・効率化ではなく、収益向上にこそ活用する
経済産業省は、DX推進に取り組むことの重要性は広まっているとしつつも、デジタル投資の内訳はDXレポート発出後も変化がなく、既存ビジネスの維持・運営や効率化に約8割が占められている状況が継続していると指摘しています。
DX推進に対して投入される経営資源が企業成長に反映されていないことを問題視し、新規ビジネス創出による収益向上などのバリューアップこそDXを成功させるための方向性であるとしています。
②DX推進にあたって、経営者はビジョンや戦略だけではなく、「行動指針」を示す
経済産業省は、デジタル技術の活用による収益向上のためには、経営者層がビジョンや戦略だけでなく具体的な行動指針を示すことが重要であると提案しています。
ビジョンや戦略のような抽象的な概念だけでは、社員は具体的にどのように行動すればよいかわからず、変革にはつながりません。
社員全員が新しい仕事のやり方や働き方に順応できるように具体的なアクションを示すことで、変革へとつながり、エンゲージメントも高まると考えられています。
③経営者自らの「価値観」を外部へ発信し、同じ価値観をもつ同志を集めて、互いに変革を推進する新たな関係を構築する
経済産業省は、DXは個社単独だけの問題ではなく、ユーザー企業とベンダー企業など、同じ価値観をもつ企業同士が相互に高め合っていくことで実現されるものであると主張しています。
そのためにも、自らの価値観を外部に発信し、同じ価値観をもつ同士を集め、互いに変革を推進する新たな関係を構築する必要があるとしています。
DXレポート2.2で掲げられた「デジタル産業宣言」とは?
経済産業省は、DXレポート2.2において、「デジタル産業宣言」という宣言を掲げています。経済産業省は、デジタル産業宣言策定の目的として、以下の2つを挙げています。
- デジタルで収益向上を達成するような特徴を「行動指針」として全社へ浸透させること
- 経営者自らの価値観を外部へ発信させること
宣言の項目は、DX推進の模範として採用された企業から得られた調査結果をもとに、以下の表のような5項目に集約されています。
項目 | 詳細 |
---|---|
ビジョン駆動 | 過去の成功体験やしがらみを捨てて、自分が持つビジョンを目指す |
価値重視 | コストではなく創出される価値に目を向ける |
オープンマインド | より大きな価値を得るために、自社の外のあらゆるプレイヤーとつながる |
継続的な挑戦 | 失敗してすぐ撤退ではなく、試行錯誤を繰り返して挑戦を続ける |
経営者中心 | DXは経営者が牽引することで達成し得るという理解のもと、その実現に向かって積極的に貢献する |
デジタル産業宣言は、各企業の経営者が自社の業務や業態に合わせて、改善・ブラッシュアップすることを前提に策定されています。
DXレポートからわかるDXを成功させる5つのポイント

DXレポートからわかるDXを成功させるためのポイントとして、以下の5つが挙げられます。
- ①リーダーのコミットメントにより社内を巻き込む
- ②自社ならではのDX戦略を策定する
- ③十分なDX人材を確保する
- ④スモールスタートクイックウィンを実現する
- ⑤ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する
それぞれのポイントについて分かりやすく紹介していきます。
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①リーダーのコミットメントにより社内を巻き込む
DXは、個別業務のデジタル化だけでなく、全社規模の業務やビジネスモデル、組織文化の変革など、会社のコアとなる部分を大きく変えていく取り組みです。
そのため、経営陣や事業部のリーダーが起点となり、DXのビジョン・方針を明確に示し、社内全体を強力に動かしていく必要があります。
具体的には、「どのような中長期的なDXのビジョンを描くのか」、「業務や顧客体験、ビジネスモデルをどのように変えていくのか」、そのために「どの程度人材や予算を割り当てていくのか」などに対して、大きな権限を持って意思決定をしていくことが求められます。
一方で、経営陣やリーダー陣がDXに対する危機意識が低い場合などは、DX推進部門や経営企画部門などが主導し、リーダー陣を含め、DXに関する社内向けの勉強会/ワークショップを実施することも有効です。
②自社ならではのDX戦略を策定する

あらゆる人・モノ・コトがインターネットと繋がる現代で、人々の生活や業務、ビジネスの主戦場は、リアルの世界からデジタルの世界に加速度的にシフトし続けています。
その変化を踏まえ、いかにデジタルを活用し競争優位性を築いていくかは、全ての企業の経営戦略を考える上で必須のテーマとなっており、DX戦略を考えること=経営戦略を考えること、と言っても過言ではありません。
そのため、DX戦略を策定する際は、特定の事業部/部門×個別の業務×デジタル化という範囲で考えたり、同業他社が進めている取り組みをベースにして考えるといった、個別具体的なアプローチではなく、より中長期や全体のアプローチから、全社のビジョンや経営戦略、テクノロジートレンドや業界への影響などと連動させて考える必要があります。
③十分なDX人材を確保する
DXの成功に向けては、テクノロジーと経営戦略に対して深い知見を持つプロジェクトマネージャーや、専門的なスキルを有するエンジニア、デザイナーなどのDX人材を十分に確保することが必須となります。
本来であれば、既にDX人材が社内にいればよいのですが、ほとんどの日本企業で人材が不足しているという現状があります。
また、市場全体として人手不足で、DX人材の争奪戦となっており、採用も思うようには進められないというケースも多く見られます。
そのため、足元のDX推進にむけては、経営課題とデジタルの両方に精通した外部のエキスパートを活用しながら、中長期目線では実践や研修を通じた人材育成をしていくといったアプローチが有効です。
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④スモールスタートクイックウィンを実現する

DXがなかなか進まない理由として、業務や組織を大胆に変えていくことが必要な一方で、全社規模の大きな成果が上がるまでには5年程度を有するという点があります。
そのため、取り組みの方向性が正しくても、短期間では成果が見えにくいことから、部門間の軋轢や現場からの反発が生まれ、変革のスピードが落ちてしまうケースが少なくありません。
そこで、全社単位でのインパクトは小さくとも、比較的短期で成果が出る取り組みを進め、その成果を社内外に発信し巻き込んでいくことは非常に有効です。
取り組みの例としては、アナログデータのデジタル化や各種データの一元管理化、業務自動化ツールの導入などが挙げられます。
これらの取り組みにより小さな成功を積み重ね、他部門のリーダー陣や現場の社員のマインドが徐々に変わっていくことで、連鎖的に大規模なDXを推進しやすい状況を実現できます。
⑤ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する

業務の現状や課題を踏まえて設定したゴールに向けて、最適かつ低コストなアプローチ設計をすることは、DXの投資対効果を飛躍的に高めます。
そもそものDXの目的は、業務を効率化することや顧客により良い製品/サービスを届けることです。
一方で、「DXプロジェクトをやるぞ!」となると、本来目的であるはずのデジタル化自体が目的になってしまい、競合が取り組んでいるからといった理由で、自社にマッチしない大掛かりなデジタル化をすすめてしまうケースが少なくありません。
もし大規模なシステム開発をせずに効率化を実現できるのならそれがベストであり、そもそも業務は必要か、効率化のインパクトは大きいか、SaaSの導入で解決できないか、アジャイルな進め方で小規模なPoCで仮説を検証する余地はないか、などより幅広い視点で検討をするようにしましょう。
DXの実行フェーズになっても、デジタルへの知見はもちろんですが、全社単位での経営の視点や戦略思考が必要になります。
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